第123話 新たな出会いの始まりかっ!? ワクワク坑道探索だっ!!
「道が光って……。先生、それも魔道具なんですか?」
「ああ、うん、まぁ」
一般的な懐中電灯を前方に向け、俺達は坑道を進む。
道の先は硬い岩石で覆われた広い横穴だった。
ザントマン達が開けた土の穴じゃない。一般的な鉱山の道。
つまりは岩石の道。硬い岩肌の道を進み続ける。
一見普通の坑道のように見えるが。なんだろう、少し粘ついている印象を受ける。
近づいてみると……。
やっぱり。
坑道は粘性のある粘液で固められている。この粘液は何だろう。
先ほどの行き止まりの道も粘液で固められていた。
この粘液。どういったものなのだろうか。
「ご主人」
ご主人? え、この声は博士? 俺の事をご主人と? あらまぁ。
いや、今はそんな事を思っている暇はないか。
「ご主人、何か不味くない?」
マズい……。そうだろう。
状況は。あまり良いように思えない。
この先に「何か」が居る。
恐らく何らかの生物。その生物が穴の先に道を作り。
そこから村の家畜を襲っていたのだろう。
二本足の怪物が……。
「ねぇ、みんな」
「あ、はい。先生なんですか?」
「ここは、一旦引き返すべきだと思うんだけど」
「はい?」
このまま進むのは危険。そう判断した。
時間はすっかり夜中、住人達も寝入っているだろう。
この先に「何か」居るとして、もしそれと交戦。
なんて流れになったとしたら。
色々と、マズイ事になるかもしれない。
ここは一旦引き上げて明日の朝、出直すのが良いだろう。
「引き上げる? 引き返すって事ですかっ!?」
「ここまでに来たのにっ!! このまま進みましょうよ先生っ!!」
「いや、でももう夜だしね」
「夜でも先生の魔法があればなんとかなりますってっ!!」
「う――ん。あまり攻撃魔法みたいなのは、無いんだよね」
「それでもっ!! このまま帰るなんて出来ませんよっ!!」
「ここに、村を荒らした化け物が居るんでしょうっ!?」
「なら、ここで退治しとかないとっ!!」
「下手に逃げられでもしたらまた被害が出ますっ!!」
「だからいまっ!!」
「いま、退治をしとかないとっ!!」
「そうですよ先生っ!! 今やっとかないとっ!!」
「ここは村の結界が効いてる。なら所詮は動物だっ!!」
「なら、俺達でも出来るっ!! 俺達の家畜を殺すケダモノを殺しちまいましょうっ!!」
「先生っ!!」
「先生っ!!
「先生っ!!」
「今やらなきゃっ!! 逃げられたらマズイっすよっ!!」
ああ、これは……。
「ちょっとあんた等っ!! だから危ないって言ってるでしょっ!!」
「ここは態勢を立て直して」
「そうでゴワス。まずは戦力を整えてから」
「私もそう思いますニャン」
「だが逃げられたらどうすんだっ!! ここで一気に叩くべきだっ!!」
「そうだっ!! ここには男手が5人も居るんだっ!! 妖精は黙ってろっ!!」
「はぁっ!!? そういう発言はコンプラ違反だと思うんですけどっ!?」
「何言ってるか分かんねぇよっ!! ともかくこのまま進んだ方が良いっ!!」
「ここで叩けば決着が付くっ!! 奇襲攻撃ってやつよっ!!」
「そうだそうだっ!! 今叩いちまおうっ!!」
「だから、ここは一旦引き返した方が良いって言ってるでしょっ!!」
「あんたたちわたしのいう事をっ!!」
「そうだね」
「このまま進もうか。一気に片付けちゃおうっ!!」
「はぁ?」
「ちょっとっ!! あんた何を言ってるのよっ!!」
「ここは引き返して体勢を立て直した方がっ!!」
それは、分かっている。
だけど。
恐らくこのまま引き下がる選択をしても、彼らは後で勝手に向かっていくだろう。
なんとなく。その感じがある。
そもそも俺達と彼らで別に主従関係がある訳ではない。
ならば止めろと言われて、それに従うメリットがないなら。
彼らは独自意思で動くだろう。
約束を守って守らなくても彼らには何のデメリットもない。
それなら。
「俺が付いてるから、臆せず前に進もうっ!!」
俺の目が届く範囲で活動させるのが良いだろう。
「おおっ!! 流石先生っ!!」
「よっしゃっ!! 行きましょう先生っ!!」
「ケダモノめ。目に物見せてやるっ!!」
「ここで決めるっ!! 俺達が村を救うんだっ!!」
エディンくん達がツルハシを手にしながら闘気に燃えている。
若い子を押さえつけるなんて部外者の俺には無理なのだ。
ならば共に進んで上げるのが良い。
幸い彼らの言葉を信じるならこの先の存在は「動物」なのだろう。
それなら。
まぁ。なんとか。なると良いなぁ。
「…………………………」
「俺が付いてる、か」
「分かったわご主人」
「あんたの言葉、信じる」
うん、ありがとう。
「フィーネちゃん」
「あ、はい先生」
「君は村長さんの所に行って状況を説明してきて」
「え―――。私も先に進みたいよう先生」
「ごめんね。あとで色々見せてあげるから」
「ちぇ。は―――い」
なんとかフィーネちゃんだけは家に帰らせ、俺達は先を進む。
「コリーヌちゃん」
「はい、ご主人様」
「魔法、使えるね」
「はい、バッチリニャンっ!!」
「うんうん、とびっきりの炎魔法を頼むよっ!」
「任せて欲しいニャンっ!!」
あれ? でもよく考えたら機器で繋がれてるだけの彼女が魔法を使えるのって……。
まぁ今そこは良いか。ともかく先に進もう。
「うう、私も何か役に立ちたいでゴワス。剣が使えれば」
気持ちは嬉しいけど無理は禁物ね。
でも確かに魔法使いはVR上でもサポートとして有用だが剣士は、っとなると。
う――ん。脳波コントロール。もっとなんとかならないもんかなぁ。
そんな事を考えている間にも俺達は道を進み続ける。
先は、結構長い。
こんな長い坑道、道具を使わずに作れるのだろうか。
それともこの穴はかつての鉱夫が作った試掘の穴、とか?
坑道の壁を見てみる。
壁は……。なんだろうその穴はまるで爪でひっかいたような……。
爪で岩を削って……。なんて?
う――ん。よく分からない。そもこの世界の動植物に対しての知識もない。
爪で土。ならともかく岩なんて。
そんな生物が居るのか? だとしたらどんな生物なのだろう。
疑問は残るが、俺達は進み続ける。
手には例のマップが映し出された懐中時計。道はまっすぐを示している。
まっすぐ、まっすぐ。
「ん?」
「どうかしたの?」
懐中時計から見えるマップの先が。急に広くなる。
広くなって、急にアリの巣穴のような縦穴だらけになる。
これは……。
「なんか、急に道が複雑になってるわね」
博士が俺の肩に乗って共にマップを眺める。
まっすぐの道の先は大きな空間があり、そこから複数の穴が連なる迷路状になっていた。
「えっと、これはこの先の道ですかい先生」
「ああ、そうなんだけど。なんだか迷路みたいになってるんだ」
「ああ――。これは」
これは。
「もしかして……。ドワーフが住み着いた……。か?」
ドワーフ? ドワーフってもしかしてあの……。
「ド、ドワーフって?」
「えっと、前に本で見たんすけど、亜人の中には地面に穴を掘って暮らすのが居るって話で」
ドワーフっ!! おお、聞いた事があるぞっ!!
ずんぐりむっくりした体型で髭が生えてて――。
「ドワーフってこんな穴を作るのかいっ!?」
「ああ、はい。そうらしいっす。もしかしてドワーフの連中が俺達の家畜を?」
ドワーフっ!! なるほどそういうのもあるのかっ!!
なるほどなるほど。つまりアレだ。
これはお腹を空かせたドワーフが夜な夜な人間の集落に入り込んで。
ギガントモウラを襲撃していたと。そういう訳だなっ!!
ドワーフ。なんてファンタジーな響きっ!!
例の二本足の怪物はぁ――。怪物の仕業に見せる為、そう演じていた。
ってところか?
魔物を避ける結界ってのを透過した事を考えれば。
なるほど、色々と説明が付く。
「ドワーフの連中も住み着いてたのか」
「奴等も住処は追われたのか?」
ああ――。なるほど、彼らも住処を追われて。ってパターン。
ふむぅ。
「もしそうだとしたら、まず武器を下げて交渉。出来る……。かな?」
「その」可能性を考えて、エディンくん達に尋ねる。
亜人だ殺すっ!! なんて事にはならないよね?
「う――ん。人殺しはちょっと……」
「ケダモノだと思ってたんだけど」
おおっ!! どうやらその心配は無さそうだぞっ!!
いやぁ、良かった良かった。
「ドワーフでゴワスか。なるほど結界が作動しなかった筈でゴワス」
「同じ人間種ニャンし。もしかしたら難民なのかも」
「あ、わ、私ドワーフ語少し分かりますニャンっ!!」
「ドワーフ語なんてあるのね。へぇ、あとで教えてくれる?」
「はいっ!! 喜んでニャンっ!!」
おお、なんだか話がまとまりそうだぞっ!! やったっ!!
しかしドワーフか。なんだか色々と事情がありそうだ。
だけど「異世界」っぽいイベントにちょっとテンション上がってきたっ!!
ともかく進んでみよう。
同じ人間種。という感覚があるなら話も聞いてくれるだろう。
しかしドワーフか。どんな形をしているんだろうなぁ。
◇ ◇ ◇
「ギギィ――」
「は?」
「え?」
「うん?」
「あれ……」
坑道を進んだ先。そこには。
全身緑色。体は毛に覆われ目は赤く。大きな2本の牙が生え爪は4本。
体長は2、3m.と言ったところだろう。背中になんか棘とか生えていて……。
ともかく。
そんなのが、居た。
うん。うん。
これは……。
「チュパカブラよっ!! マリスの尖兵だわっ!!」
「マリスが出した小型種……。スペック通りなら勝てる相手じゃないっ!!」
「逃げろっ!! 逃げろっ!!」
「全力で逃げるのよぉおおおおおおおお――――っ!!」
くそ……。
ドワーフなんて……。
ドワーフなんて何処にも居なかったじゃないかっ!! くそぉおおおおおお――っ!!




