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魔王に囚われて異世界から英雄(ヒーロー)を召喚した王女様。間違えてゲームのキャラを召喚してしまった。  作者: 宮森 英二
異世界と現実

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第122話 探検探検っ!! 何かお宝でもないかしらぁ。


 「先生、お湯気持ち良かったですよ。ありがとうございます」

 「本当に色々してもらって、先生はキリスト様みたいですぅ」


 「よくじょー。とっても楽しかったよっ!! ありがとう先生っ!!」

 「じゃあね、フィーネちゃん、また明日っ!!」

 「う、うんまたねみんな――っ!!」


 「先生も、また明日ね――っ!!」

 「は――い。また明日ね――」


 「………………ちっ」


 あれから浴場での入浴を終え、村人達がそれぞれ家に帰っていく。

 太陽もだいぶ傾き、そろそろ日が暮れるだろう。


 今日は本当に色々したなぁ。病気の治療に入浴の補助。

 いやぁ、本当色々仕事したなぁっ!!


 「ちょっと。英雄様……」

 「あ、うん? なんだい春美ちゃん」

 

 「春美ちゃんっ!! くそっ!! なんか腹立つっ!!」

 

 あはは。ひと段落済んだけど、でも帰ってきた博士は何か言いたげだ。

 まぁ、言わんとしようしている事はなんとなく分かるようけど。


 「あんた、周りの連中に良い顔し過ぎでしょっ!! 何よ先生ってっ!!」

 「また1日しか経ってないんだけどっ!! なんでそんな馴染むのよっ!!」

 

 「ふぇ。な、なんだかこの妖精だけ怖いねぇ」


 「あらあら。大丈夫だよぉ。ちょっと口は悪いけど、優しい子なんだよぉ」

 「ね、春美ちゃん」


 「こ、このっ!!」


 人前という事で俺がタメ口だったのも気に入らないらしい。

 まぁお供の妖精に敬語なんて変だし、ここは許して許して。


 「ともかく皆行っちゃったね」

 「まぁ、ね」


 「それじゃあ捜査、開始する? 春美ちゃん」

 「ああ、ったく……。ああ、そうね」


 よしっ!! なら本題開始って訳でっ!!


 「あ、あの先生。これから、何かするんです?」

 

 皆行ってしまったけどフィーネちゃんとエディンくん。

 そして彼のお供が残っている。

 博士はそれもあまり気に入らなかったのか。


 「ちょっと。こいつ等はいらないわよ。さっさとどっかにやって」


 だそうだ。

 しかし彼らは当事者であり、俺達は部外者。

 当事者を追い出して部外者だけで行動する訳にはいかない。

 そんな訳で、結局そのまま強硬する事にした。


 「ちっ、なんで赤の他人の為にこんな事を……」


 ブツブツと呟きながら、博士はウィードに戻るよう指示した。

 どうやらそこに博士が持ってきた機器があるらしい。

 俺はVRを抜ける動作を行い、一度ウィードへと帰還した。


 「あ、夕方だぁ」


 帰ってきたその世界は、いつものと変わらない狭い和室。

 それでも、俺の大事な世界だ。


 う――ん。夕日が落ちて。綺麗な空じゃないか。

 おお、故郷の空よ太陽よ。ふふふ、孤独にさせてごめんね。


 でも君には地球くんが着いてるから今度は地球と太陽。

 2人で頑張ろうっ!! なんて、あははっ!!


 「貴方が鷹司京介さま、ですか?」


 うん?


 声の先を見ると。そこには1人の少女が居た。

 年は春美博士と同じくらい。髪は白髪。顔もどことなく博士に似る。

 っとすればミクスレイの……。


 どうしてこんな所に?


 「お初にお目にかかります」

 「はい、どうも。君は?」


 俺の名を言ったという事は名乗らなくて良いだろう。

 ならばこの可愛らしい侵入者さんの事を聞くとするか。


 「私の名前は三日月冬美。春美の姉妹ですわ」

 「あら、春美博士の。そりゃあお世話になって」


 「ええ。今日は彼女に言われて「機器」の搬入を手伝っていたんです」

 「機器、か」


 見れば床にはなるほど、何らかの機器がいくつか転がっていた。

 これが「捜査」の為の機材なのだろう。


 いったい何に使うものなのだろうか。

 ともかくその機材と共に彼女が居るという事は。


 「君が博士の協力者、なのかな?」

 「ええ……。姉妹の頼み。ですからね」


 「そっか」


 「ありがとう冬美さん」

 「ちゃん付けで良いですわ」


 「英雄」


 「英雄。様」


 あら。


 「ふふふ、博士から事情を聞いた?」

 「ええ。あの子に生物データの提供を頼んだのも私」


 「そうか。ならクローン製造の為に協力をしてくれたのも」

 「ええ。「ロード」に関連する技術を確立させたのは私」


 「春美はウォーカーなどの機械化外骨格の研究。私はクローン技術の研究」

 「それぞれ社会の存続の為に、切磋琢磨しています」


 「あらぁ、偉いんですね。流石博士の姉妹さんだ」

 「えっと、どっちが姉でどっちが妹?」


 「同時、ですから。どっちがなどとそんな物はありませんわ」

 「対等な姉妹って訳か。そういうのも良いかもね」


 「ええ」


 博士と比べて落ち着いた印象。三日月冬美ちゃんか。

 新しい仲間。って考えて良いのかな?


 「アンノウン・ゼロ」


 ん。


 「貴方が?」


 ………………………………。



 「さぁ」


 「何のことかな?」



 「………………………………」


 「貴方は「彼」の事はご存じで?」


 「まぁ、世代だからね。多少は」

 「どう思われますか?」


 「哀れ。だと思っているよ」

 「哀れ?」


 「ああ、強いけど」

 「でも、それだけ」


 「可哀想にねぇ。マリスは。もう居ないと思ってたのにまた出てきたんだから」

 「あのまま何事もなく、のんびりさせてあげれば良かったんだよ」


 「なのにまた仕事なんて」

 「だから」


 「哀れ、だよね」

 「助かるのは事実なんだけどね」


 「…………………………」


 「そう、ですね」

 「妙な事を聞きました。すいません」


 「良いんだよ。色々と協力してくれてありがとう」

 「ずっとその態度を続けるつもりですか?」


 「死ぬまで。当たり前だろう?」

 「そ」


 「そう、ですか……」


 「えっと。博士が待ってるし、そろそろ良いかな?」

 「そうですね。あの子は色々とせっかちですから」


 「君は、違うのかい?」

 「私はおっとりとしてる言われています。あの子とは正反対ですわ」

 

 「そっか」

 「でも」

 

 「春美博士は良い子だよ」

 「そうですね」


 でも、この子の方が大人びてる印象かな。三日月春美。そして三日月冬美、か。

 三日月。彼女達の苗字。一体どんな繋がりがあるんだろうか。

 ウォーカー。VR機器。色々と便利な道具を作り出せる博士の頭脳の秘密。

 それが三日月……。か。


 「では鷹司さま、私はこれで」

 「ああ、うん」

 

 あ、どうやら冬美ちゃんは行ってしまうようだ。

 外を見れば車が。誰かと来ている? いやアレは自動運転の車だ。

 必要以上に秘密は洩らさない。そういう事で良いのかな。


 「では鷹司さま。100体のサンプル」

 「楽しみに、待っていますわ」


 ああ、それを言いだしのは彼女か。ふふふ、100体。

 そうだね。頑張って集めないと。


 「いつか、話し合いの場を設けましょう」

 「私達は分かり会える」


 「そうですよね?」

 「ああ、そうだね」


 「じゃあ、またね」

 「はい、それでは」



 そうして、彼女は車に乗って行ってしまった。

 よし。




 ◇ ◇ ◇

 


 

 「って訳で戻ってきました――。博士っ!!」

 「ああ、うん」


 村長宅。そこの自室で目覚める。

 アニエスさんとコリーヌちゃんも一緒だ。


 「あ、ニート様、おかえりなさいでゴワス」

 「お帰りですニャン。ニート様。道具は手に入りました?」


 「うん、しっかり袋に入れておいたよ」

 「そう」


 「冬美は、何か言ってた?」

 「博士によろしくって」


 「そう……」


 「じゃあ、行こうか」


 そうして部屋を抜け、外に出る。


 「あ、先生。お道具はあったーー?」

 「うん、あったよ。待っててくれてありがとう」


 「ありましたか。それなら」

 「行きましょうか。先生」


 外にはエディンくんとフィーネちゃんが居た。

 村で仲良くなった2人。


 彼女達を連れて、犯行現場近くに行く。今日は幸いな事に襲撃は起きなかった。

 やはり病人の治療をし、隙を作らせなかったのが良かったのだろう。

 家畜が襲われる事は無かった。

 

 しかし、今日それが起きないなんて保障はない。

 だから早く解決しないとなっ!!

 博士が持ってきてくれた道具で犯人が見つかれば良いけど。


 「虫の声……」


 うん?


 「凄い、虫の声ね……」


 あら。


 「そうですね、虫の声が賑やかです」

 「森ってこんなに賑やかだったのね。興味深いわ……」


 博士の言う通り、近くの森からは夜行性の虫なのだろう。

 様々な虫の大合唱が聞こえ、賑やかしてくれていた。


 「あれ? 妖精さん、妖精さんは森に住んでたんじゃないの?」

 

 フィーネちゃんが博士の言葉を訝しむ。

 そうか。この世界の妖精は森に住んでいるのか。

 まぁそんな感じするよね。


 森。多種多様な生き物を育む楽園。

 でも、ウチの森は……。


 「私達の森は人工林だから。あんまり虫とか、居なかったのよ」

 「人工林? 妖精が森を育てるの?」

 

 「そうよ。だから虫があまり居ないの」

 「虫なんて勝手に湧いてくるものなんじゃないの?」


 「湧いてこない森もあるのよ」

 「へ――、そうなんだぁ」


 「あははっ! 変なの――っ!」

 「そうね、変かもしれないわね……」


 夕暮れ。皆で虫の声を聞きながら目的地へと向かう。

 虫の声。セミでも、ヒグラシでもない。

 その聞き覚えの無い虫の合唱が、俺が今「異世界」に居る事を教えてくれる。


 「良いね、虫の音って」

 「虫の声なんて、そんな良いもんですかねぇ。こんなのうるさいだけだし」


 「低能には風情ってものが分からないのよ。ったく田舎もんが」

 「この青髪の妖精だけ妙に生意気じゃないっすか?」


 「あはは」


 そこに目をつけるとは。エディンくんも中々やりおるなぁ。ふふふ。

 ああ、しかし。

 夕暮れ時。虫の声を聞きながら子供達と散歩をする。


 良いじゃん。こういうのもさ……。




 「着いた」

 

 「ここが現場近くの山道ね」


 村の中を歩き、ザントマン達の集落へとたどり着いた。

 中央の道は土を固めただけの未舗装路であり、様々な人の足跡がこびりついている。


 「足音がいっぱい、よし。ここに「魔法」をかけるわ」

 「魔法かい。春美ちゃん」


 「…………はいはいっ!! 春美ちゃんですよっ!!」

 

 あらあら。ままま、これも慣れって事でっ!

 春美ちゃん呼びも可愛いですよ。


 「それじゃあ機材を。黒い箱みたいなやつよ」

 「はいは――い」


 言われて中を探す。そうして見つけた物を床に置いた。

 ちょうど「箱に入る」と思われるサイズ。

 これは、一体何なのだろうか。


 「先生、これは何なんです? 黒い箱みたいっすけど」


 さぁ、そこは博士に聞いてもらわないと。

 これは一体なんじゃろなっと。


 「まぁ見てなさい。スイッチオンっと」


 装置を弄り、博士が起動する。するとカチカチと音を立てながら装置が変形する。

 なんとも男の子心をくすぐる装置だ。

 変形した装置は避雷針のような槍状に伸びていき、そこから緑色の放射した。


 「う、うわなにこれっ!? 先生、これは何の魔法なのーっ!?」

 「な、なんか光りましたけどっ!!、な、なんなんすかっ!?」


 いやぁ、そんな事俺に聞かれてもね。

 光って、それで?


 「よく見なさい」

 

 博士が地面を指差した。差された先の地面が……。

 これは、足跡が光っているのか?

 なるほど、これが「捜査用機材」か。足跡を選別する訳だな。


 緑色に光る足跡が重なる地面の中で、1つだけ青。

 これは俺が見た例の「何か」の足音だ。


 「1つだけ人間の物とは違う。恐らくこれが「犯人」の足音でしょう」


 「な、なんか光ってるけど……。こ、こんな魔法があるのか?」

 「なんか光って綺麗だねぇ」


 「痕跡発見用の機材……。じゃなかった魔道具よ」

 「これを辿っていけば犯人に辿り着ける筈だわ」


 犯人。青色の足跡はまっすぐ道を進んでいる。

 歩幅は人間に似る。ならば二本足か。


 二本足で大きな牙を持ち、爪が4つ。

 うん。うん……。


 ともかく、俺達は足音を辿って先に進む事とした。

 進んだ先は。


 「ザントマンの穴」


 そこは、ザントマン達が開けた坑道だった。土と砂だけを採集するその穴。

 ここは一度見て確認した筈だが。

 

 足音はまっすぐ、穴の方へ向かっていく。しかしよく見れば前に移動した穴とは違う。

 そういえば1つの穴しか見ていなかったと思う。


 それなら。


 俺達はそのまま足音が繋がる穴の中へと向っていった。

 その穴は短く、やはり。穴の奥は硬い岩盤で塞がっていて……。


 「道具を。コンパスみたいなやつ」

 「あ、うん」


 博士に言われ、袋から道具を出す。

 小さい懐中時計に似る金色の装置。それを起動する。

 するとピンク色の光が放射状に広がっていく。


 それから。


 「マッピングの為の魔道具よ。どうやら」

 「この先に、まだ道があるようね」


 装置の画面を確認すれば、確かにマップのような物が生成されていた。

 目の前の道は行き止まり。のように表示されているが、しかしその前方にはまだ道がある。


 つまり、岩によって塞がれている。そう表示されている訳で。


 「エディンくん、ツルハシは持ってきてるよね?」

 「ああ、はい。ここを突いてみれば良いんですよね」


 「うん、一緒にやろうか」


 男衆が一緒になって、目の前の岩をツルハシで突いた。

 すると、目の前の壁に少し穴が開いた。

 砕いた岩からは、なんだろう。これは粘液か?


 突いた岩盤から粘液で固められたような岩が出てくる。

 追加でツルハシをぶつけ続け、岩盤を掘る。


 そこで気づいた。

 目の前の道は粘ついた粘液によって固められた岩で接着されていたのだ。

 それを片付け、その先に。


 「道が、あるね」


 俺達は。


 その道を、ゆっくりと進み始めた。


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