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魔王に囚われて異世界から英雄(ヒーロー)を召喚した王女様。間違えてゲームのキャラを召喚してしまった。  作者: 宮森 英二
異世界と現実

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第121話 事件捜査っ!! の前の入浴はいかがですか?


 「じゃあ私は行ってくるから。夕方頃には帰ってくるわ」

 「あんまり下手な事するんじゃないわよ。常識の範囲内でね。分かった?」


 「はいはいっ!! 分かりました博士っ!!」

 「はいは1回でっ!!」


 あらま。怒られてしまった。

 

 朝、身支度を終えて博士は「協力者」の元へ向っていった。

 残された俺達は3人。共に部屋の中で「起動」する。

 

 起動。

 

 その言葉を示す通り、俺達はウィード。

 つまり「ウィーワールド」略称ウィード。我らの世界で本来の就寝を行い。

 そして「アザーワールド」略称アザド。異世界にVR機器を使って侵入する。


 機器を起動し、俺達はアザドの中で「目覚めた」事にする。

 まだ2日しか経ってないが、いずれこれが俺達のルーティンとなっていくだろう。


 「う――ん。小さな体。なんだかまだ慣れないでゴワスなぁ」

 「でもこれはこれで便利そうニャンよ。お姉ちゃん」


 博士が居ないので今日は3人だ。つまり初期メンバーって訳。

 博士は協力者から支援を得る為、ウィードの世界に旅立った。


 我らの世界。ウィーワールド。博士の言葉だ。

 正直ちょっと直訳すぎるかとは思うが、下手に難しくされても困る。

 ならばこのくらいで良いだろう。他に言い方思いつかないし。


 「先生っ!! 先生起きてますかーっ!?」

 「あら、フィーネちゃんかな。どうぞ――」


 「先生、朝ごはん出来ましたよっ!!」

 「うん、どうもありがとうね――」


 彼女はフィーネちゃん。いま滞在している村の村長さんの娘だ。

 かなり活発な少女で、現在俺の助手を志願し、村の事件解決の為に手伝ってくれている。


 「フィーネ殿、おはようでゴワス」

 「おはようニャン。フィーネちゃん」


 「あははっ!! うん、妖精さんもおはようっ!!」

 「でもなんでそんな話し方なの? おかし――っ!!」


 まぁそれは。色々と訳があると言うか……。

 ともかくアレだっ!!


 今日も一日、調査頑張るぞいっとっ!!



 ◇ ◇ ◇

 

 

 「あら――。これは。とりあえず薬打っときますねぇ」


 調査を。っと思ったのだが、朝食を終え玄関を開けた先に大勢の「病人」が居た。

 どうやら俺の噂を聞いて病気の人が集まってきたらしい。


 沢山の病人が村長の家を囲んで、俺も私も治療してくれっ!!

 っと乗り込んできた。


 まぁそう言う訳だから。


 「はい、これで良くなりましたよぅ。あ、気付けの桃をおひとつどうぞ」


 なんか、お医者のような事をしている。

 村長の部屋の一室を診察室として借り受け、そこで病人を見る。


 例の事件の調査は……。ま、まぁ博士待ちという事でっ!!

 

 「やっぱりこうなったってゴワスか。なんとなぁくこうなる気がしたでゴワス」

 「こんな山奥じゃあ治療師も居つかないだろうし、仕方ないニャンよね」


 2人もどことなく呆れ気味。ま、まままっ!! これも人助けという事でっ!!

 しかし医者が居ないなんて。なら普段彼らはどうやって病気を治してるんだろうか。


 魔法なんてのが使える世界とはいえ、それが末端まで届く事がない。

 そういう事なのかな? ああ、中世ヨーロッパ風世界。

 結構ワクワクするような舞台だけど、時に現実は残酷だなぁ。


 「先生、次の病人を連れてきましたっ!!」

 「ああ、うん。はい、何処が悪いんですかー?」


 エディンくんに連れられ、病人がやってくる。

 俺の事を邪精使いだと言っていた彼だが、一晩経って俺の助手となっていた。


 「おいお前らうるさいぞっ!! 先生は一人ずつ見てるんだっ!!

 「しっかり並べっ!! 殴るぞっ!!」

 

 エディンくんの仲間の屈強男子達も外で騒ぐ大人達に対応してくれている。

 いつのまにか因縁付けてきた彼らの方が俺に協力的だ。

 一緒になって、村の人達の治療に貢献してくれる。

 

 ギガントモウラ襲撃事件。それを解決する筈だったのに、なぜか今の自分はお医者さん。

 博士の言う通り、確かにちょっと趣旨が外れたような行動。

 もし最初の患者さんを無視して事を進めていれば今日は事件解決の為に奔走出来ていただろう。


 だけど。


 そうは、ならなかっただろう。だからこれで良いんだと思う。


 「は――い。じゃあ次の患者さ――ん」


 博士が帰って来るまで……。たぶん、それくらい続くだろうなぁ――。



 

 ◇ ◇ ◇

 


 

 「で?」


 「な・に・を。やってるの? 英雄様」

 

 あ。


 「あら博士。じゃなかった春美ちゃん」

 「ふふふ。見て分からないかい?」


 「水魔法を使って浴場を作ってるんだよっ!!」

 「水魔法……? ははぁ……」


 「うんうん、それで春美ちゃん」

 「協力、得られそうかい?」


 「…………………………」


 「はぁ……」

 「まぁ、協力、してくれるって」


 日が落ちてきた頃、博士が戻ってきた。

 うん、まぁ。

 博士は、ちょっと……。呆れたような感じだった。


 それはそうだろう。

 俺は「袋」からホースを取り出して、そこから開いた穴に水を入れているのだから。


 村の人達の汚れが気になって。

 「水魔法」と称してウィードからホースを使って水を引き、掘った穴の中に注ぎ込む。

 穴の中にはブルーシートが敷かれ、水が地面に吸収されないよう注意している。


 男と女。分けた穴に水を入れて、気分は野外浴場。

 浴場。という事で温度は気になる所だが、そこは。


 「ニャアン。こんな事に魔法を使う事になるなんて。お、お湯加減はどうですニャン?」


 コリーヌちゃんの魔法(本物)を使用し調整する。

 本物の魔法だっ!! おお、これぞ異世界。

 

 先ほどから水虫や虫歯。勃起不全に痔など。

 ふっつ――うの病気にばかり触れ合っていた為。

 こういった明らかに異世界っ!!って代物はテンションが上がるっ!!

 まぁ、らしいものといったらこれくらいなのだが。


 「すご――いっ!! 妖精さん魔法が使えるんだねっ!!」

 「凄いでしょっ!! ウチのお客さんなんだよっ!!」

 「フィーネ様のお客さん、凄いね――っ!!」

 「フィ、フィーネで良いよぅ」


 「これが魔法かぁ……。まさかメイジ様とは。それもお供の妖精まで」

 「きっと名のある方に違いない。どこかの貴族様か?」

 「ありがたやありがたや。こんな高等魔法を」

 「魔法だ……。すげぇ」


 村人も魔法を見た事がないらしく、興味津々だ。

 魔法。の概念は知っているが実際見た事はない。そんな話らしい。

 

 どうやらこの世界の魔法は誰でも使える代物ではないらしい。

 コリーヌちゃん曰く。


 「その、魔法の才能は限られてるニャンから。こんな小さな村では……。まぁ」

 

 っという事らしい。才能に依存する力って訳か。

 なんだかちょっと残念だ。本当の異世界を堪能するにはこの村は規模が小さすぎるらしい。


 村。この村はダブリン村と言うらしい。住人は350人程度。

 まぁ、小さい村だ。元は300人だったらしいが、難民として50人ほど来て350人。

 300人の村に50人の難民とは。色々苦労したんだなぁと思う。


 「おい、もっとそっちに行ってくれ。あんた等汚すぎる」

 「あ、す、すまん……。どうも」


 浴槽の会話を聞くに、新しく入ってきた難民と古参の住人とでは溝があるらしい。

 狭いコミュニティではあるが、だからこそ。っという事もあるのだろう。


 かかる病気の差でもその貧富が確認出来る。

 鉱山区域で働く村人の病気は虫歯や水虫などの簡単なものが多かった。

 それに比べてザントマン達は重篤な肺障害に感染症。命に係わる病気ばかり。

 土や砂を採取する坑道のザントマンと本職の鉱夫。

 同じ坑道を掘る者達の筈なのに、その差は何なのだろうか。


 異世界。まだまだ謎が沢山だ。


 「はぁ……。村人に風呂ってねぇ。そんなのほっとけば良いじゃない」

 「でも匂いがしますし……。でも博士が悪いんですよ」


 「な、なによ」

 

 「映像に臨場感を与える為、その場に適した匂いを散布する」

 「なんて妙な機能を追加したんですから」


 「おかげで色々と匂いが……。だからこうやってお風呂してるんですよう」

 「うっ……。色々と使えると思って搭載したんだけど」


 聞けば博士はVR機器に匂いを合成し発生させる機能を追加したらしい。

 結果的として、俺は死体の匂いと糞尿と匂いと腐敗した病巣の匂いを嗅ぎまくる事になった。

 だから精神衛生上と、住人に衛生を兼ねて。


 こうして浴場を展開している。

 エディンくん達と地面に穴を掘り、そこにブルーシートを置いて浴槽とする。


 女性用と男性用。2つの浴槽の間には天幕を置いてプライベートも完備。

 最初は何事かと警戒していた村人達だが。

 「村の恩人」となった俺の勧めという事もあり皆入ってくれた。


 それが入ってみて気持ち良かったのか結構繁盛してる。

 まぁお金なんて取っていないけども。


 村長さんですら入っているのだ。やっぱりお湯でのんびりするって気持ち良いよね。

 ああ、しかしお湯か。


 ここは山の中だし、温泉とか見つけられたなぁ。


 「はぁ……」


 あ、博士。ため息ですか?

 駄目ですよ――。ため息は幸せが逃げますよ。

 あははははっ!!

 よし、じゃあ博士も帰ってきた事だし。

 

 「春美ちゃん」

 「なによ」


 「春美ちゃんもお風呂入る?」

 「入らないわよ馬鹿っ!!」


 あらやっぱり。

 じゃあこれからの展開は。


 「はぁ……。なんとなくこんな事だろうと思ってたわ」

 「ともかく、私が戻ってきた訳だし」


 「ギガントモウラ襲撃事件」

 

 「解決、していくわよっ!!」


 やっと本題。そういう事だろう。

 なんか丸一日お医者の真似をしたり、浴場を作ったりと関係のない事ばかりしていた気がする。


 本当に関係のない事ばかり。


 「フィーネちゃん、お湯気持ち良いね――」

 「う、うんっ!! フィ、フィーネちゃん……。へへへ、そうだね――っ!!」


 「へぇ。あんた等そこから逃れてきたのか。今まで知らなかったよ」

 「新しい鉱脈が見つかればあんた等も使ってやるんだがなぁ」

 「ザントマンも楽っちゃ楽だし。そう心配しないでくれ」

 「色々あるが受け入れてくれて感謝するよ。ありがとうなぁ」


 「先生のおかげで体が楽だ……。先生はまさに英雄様だぁ」

 「ああ、ジェイン様らの再来だ。ありがたやありがたや」


 本当に関係のない事ばかりだったけれど。

 なんだか。


 楽しかったなっ!!


 「それじゃあ博士っ!!」

 「ちょっと遅いですが……」


 「調査」


 「開始しましょうかっ!!」


 さて、遊びは終わりだ。そういう訳でダブリン村の人達の為。

 事件解決、しちゃおうじゃないかっ!!


 

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