第119話 異世界。ではあるけど病気はこっちと同じのが多いなーー。
「ふむぅ……」
「ど、どうですか先生。何か分かりました?」
「なんか真っ暗なお穴だね――」
あれから松明を手に取って、ザントマン達の穴に入っていく。
入っていったのだが。
「穴、もう終わり?」
入って、そこから長い坑道が広がっている。なんて思っていたのだが。
しかし掘られた穴は硬い岩盤の前で止まっていた。
入って5mも進んでいない。かなり短い距離で穴は止まってしまった。
「岩は掘らないのか……」
「まぁここには鉱脈がありませんから、掘るのは砂と土だけですよ」
ザントマン。彼らが掘った穴。それがなぜ複数あったのか原因が分かった。
鉱石ではなく土や砂を採取する。だから岩盤が出たらやめて他の穴を掘る。
そういう事だったのか。なんか、もっとこう。
迷路のような道が広がっていると思っていたのだが……。
気のせい。だったのだろうか。
穴の奥の岩盤を触る。しかし、特に変わった様子はない。
硬い硬い岩盤。そこはどう考えても行き止まりだった。
「あの、先生」
エディンくんが横で心配そうに見ていた。
彼の手には一本のツルハシ。武器を、っと要求したらこれが出てきた。
剣のような物は無かったのだろう。
俺も彼から貰ったツルハシを片手にあちこち調べていた。
年の為、っと思い目の前の壁をツルハシで強く叩く。
強く。
っと思ったがやはりその力は一定だった。
どうやらゲーム的な要因が働き、想定以上の力は出せないようだ。
「お、結構良い動きですね。先生」
「ふふふ、ありがとうエディンくん」
「先生、もう出よう。ここ何にもないよー」
フィーネちゃんが退屈したような声を出す。
いつまにか彼女にも先生と呼ばれるようになった。
しかし。
本当にこのまま立ち去って良いのだろうか。
この穴は、本当にただの穴か?
「ねぇ、せんせーい」
まぁ、でも見た感じ何もないし……。
「そうだね。外に出ようか」
完全に「やる気」だった為拍子抜けだ。ここだと思ったんだが。
う――ん。
ここじゃないというなら犯人はどこに居るのだろうか。
俺達はそのまま穴を出て外へ向かった。
ザントマンの土取り穴。しかし土砂を取る為の職業があるとは。
なんだかちょっと面白い。まぁ健康には良くなさそうだが。
「付きました先生。あっ」
穴を出た瞬間、恐らくその集落の人々だろう。
ちょっと、まぁあまり身なりの良くない人々に囲まれた。
その様子に怖気づき、フィーネちゃんが俺の背に隠れる。
「な、なんだあんた等。どうした?」
エディンくん達が前に出て彼らに尋ねる。
俺に何か用なのかな。
「あ、あんた。アイリスさん達の病気を治したってのは本当かい?」
「あ、はい。他にも病人さんがいらっしゃいますなら治療しますが」
「ほ、本当かいっ!? 本当にっ!!」
「ええ、せっかくですし」
「ま、お……。お願いします先生っ!! う、ウチの娘がっ!!」
「俺の母ちゃんがっ!! 先生、こちらにっ!!」
「先生っ!! 先生っ!!」
どうやら集まってきた人達は病人が居る家庭の親族らしい。
たぶん俺が治療出来る人物だという噂を集まってきたらしい。
せっかくだし、異世界の病気って奴を色々見て回る事にした。
そこから何か新しい情報も手に入るかもしれない。
◇ ◇ ◇
「と、父ちゃんが元気になったっ!! あ、ああ……。ありがとうございますっ!!」
「いえいえ、ああ。もう桃缶がないや。まぁミカンならあるか」
まずは父親が臥せっているという男性の家へ。
彼は咳が激しく、明らかに肺が悪そうだった。
やはり粉塵とかそういうのを吸い込んで悪くなったのだろうか。
「母さんっ!! ああ、良かった……。先生っ!! ありがとうございますっ!!」
次は母親が病気だという家へ。
なんというか、全身真っ黒だ。これは煤、なのだろうか。
「なんか随分真っ黒だけど、一体どうしたんだい?」
「ウチの家は炭焼きをしてるから……。それで顔が」
ああ、炭焼き小屋を運営してるのか。炭焼きってこんな黒くなるものなのか。
彼女も先ほどの人と同じく肺が悪そうだった。
ともかく彼女にも再生剤を投与し治療する。ついでにミカン缶とポカリも。
次に行く。
次の人は同じく咳を。
どうやら軽い病気の枠で肺に問題を抱える人が多いらしい。
ザントマン。その他森で火を焚いて何かをしたりなど。
そんな仕事に従事している事が多いからだろう。
肺に関連した。なんとも「一般的」な病気が目立つ。
こう、魔法に関連した病気とかは無いのかな?
ともかく色々と回ってみよう。しかし病気の人結構居るな。
お医者にかかれない人がこんなに多いなんて。
魔法で治療をする医者も居ると話は聞いたが。
彼らはここに居ないのだろうか。
「ああ、娘が元気に……。ありがとうございます先生っ!!」
「はい。お大事にね――。あ。飴ちゃんあげる、美味しいよー」
甘い缶詰のストックが無くなってしまった為、飴玉で対処する。
病気の後はやっぱり甘い物が一番っ!!
しかし桃缶。もっと買っておくんだったなぁ。
「甘いっ!! 美味しい……。先生ありがとうっ!!」
「良いのよ――。元気になって良かったねぇ」
この子も肺関連の病気。本当に多いな。
肺関連。リウマチなどの腰関連。まともな人があまり居ない。
それでもやはりまだ歩けるからだろう。
彼らの家の家畜が狙われた。という話は聞かない。
そんな訳でまだ無事な彼らの家畜小屋を見てみると。
「あ、居た居たっ!!」
そこには健康な成体のギガントモウラが。うん……。
可愛いなっ!!
牛程の大きさの巨大モグラが家畜小屋の中で数匹飼われていた。
体色は茶色。毛はかなりモフモフしてる。モグラなのにおめめクリクリで可愛らしい。
性格はかなり大人しく、近づいても警戒する様子はない。
「可愛いモウラちゃんですねー。触っても良いですか?」
「ええ、どうぞ先生っ!! いくらでも触ってくださいっ!!」
許可を得たので触ってみる。きめ細やかな短い毛が手に吸い付き心地良い。
鳴く事はないらしく、聞けば鼻もそんなに利かないようだ。
家畜化の際に色々退化していった。そんな所だろう。
モグラを家畜にするなど……。どういった経緯なんだろう。
「モウラは便利なんですよ。主食はミミズで。それを食わせてたら大きくなりますから」
なるほど。耕作地が限られている山中の村落だからこそ。
土が主食のミミズで育つモグラは貴重なたんぱく源なのか。
「乳もかなり美味しいんですよ。チーズなんか作って食べたりします」
モグラのチーズかっ!! ふふふ。なんだか興味あるなぁ。
肉にお乳に、っと来れば。
「毛皮も冬を越す為の良い衣服になります。肉に毛皮に、モウラは本当に良い家畜なんです」
やっぱり皮も利用しているかっ!! そりゃあ。かなり良い毛皮だしねぇ。
肌ざわりとしてはミンクに近いだろう。ずっと触っていたい感触……。
うーん合成繊維とは違うこの天然の手触り。これはこっちで売ったら、結構な値段で売れそうだ。
あははっ!! 異世界とこっちの交易っ!!
…………意外とアリだったり?
「新しく来た移民の連中にモウラを分けて、なんとか生活させてます」
「だから、そのモウラが襲われてこれ以上数が減ったら……」
「大変、だねぇ」
ザントマンの仕事と家畜の世話。この辺りの人はそれで生活している。
だからこそ、家畜を失うという事は……。
う――ん。思った以上に深刻な問題だぞ。
モウラ襲撃犯、いったい何者なんだろうか。
それを考える事も大事だ。だが今はそれと一緒に。
「じゃあ、次の病人の所に行こうか」
皆の病気も直すのも大事だよねっ!!
◇ ◇ ◇
「先生っ!! 今日は、本当にありがとうございますっ!!」
「先生の事を疑っていましたっ!! 先生は本当に名医の中の名医ですっ!!」
「良いのよ――。今日はもう遅いから、明日。また改めて調べようね――」
「はい先生っ!! 俺、付いて行きますっ!! ニート先生っ!!」
「本当に、ありがとうございましたっ!!」
「おい」
「ちょっと、これどういう事か教えてもらおうかしらね」
帰ってきたら博士達がなんか解放されていた。
良かったっ!!
さぁそういう訳で博士。
明日から、色々大忙しですよっ!!




