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魔王に囚われて異世界から英雄(ヒーロー)を召喚した王女様。間違えてゲームのキャラを召喚してしまった。  作者: 宮森 英二
異世界と現実

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第118話 鬼さんこちら。それとも蛇さんかな。


 「え……。あんた、アイリスさんの病気を……。治したのかい?」

 「ええ、まぁ。それで例の襲われた獣はどこに?」


 「あ、いや……。その」

 「そこ、だけど……」


 そこ。っと案内された場所に向かう。そこには確かに獣が居た。

 獣……。これは。


 「モグラ?」


 そこに居たのは大きなモグラのような生き物。大きい。牛くらいの大きさだ。

 そのモグラが3頭。床に倒れている。

 なんというか、カラカラだ。まるで全身の生気を吸われたような形で。

 3頭のモグラのカピカピになって横たわっている。


 周囲には少々の血痕が。

 モグラをよく見ると噛みつかれた痕があり、恐らくそこから血を吸われたのだろう。


 モグラ。うんモグラだ。あ、でも爪がない。削ってるのかな?

 茶色い体毛の大きなモグラ。あ、モグラなのに目がある。


 モグラ……。モグラだ。家畜ってモグラの事だったのか。

 なんとも。こんな大きなモグラが居るなんて……。

 健康なモグラはどんな形なんだろう。可愛いと良いなぁ。


 なんて言ってられないか。ともかくモグラは何かに噛みつかれている。

 これは……。


 「妖精に噛みつかれた。っというよりは何かもっと違う何かのような……」


 明らかに妖精が付けるような傷じゃない。

 傷跡を見れば引っかかれたような痕が。その形跡から爪は4つ。


 血を吸われた痕には2つの大穴が。つまり大きな牙が2つ。

 これは妖精の仕業なんかじゃない。もっと何か大きな獣のようなものが……。


 「魔物……、とか?」


 そういうのが居るのは確認済み。ならば魔物に襲われて、とか。


 「いや、ここは……。魔物除けの結界を張ってる。魔物なんて、来られないさ」


 そうなのか。結界なんてあるのか。ふむむ。

 魔物の生体もよく分からない。魔物と普通の生き物の違いってなに?


 魔物が入って来られないなら、つまりこれは他の獣が?

 う――ん。爪が4本で牙2つの獣……。なんだろう。しかし血を吸う獣なんて。


 あ、よく見れば足跡がある。これを辿っていけば。

 俺は家の外に出てその足跡を辿るが、しかし駄目だ。


 足跡は外の他の足跡に消され、すっかり消え去っていた。

 つまり犯人は人が寝静まった頃にやってきて、血を吸いに来た。

 そういう事なのだろう。


 「何か、入り込んでいる……?」


 「あ、えっと。その」

 「ニート。さん……。その」


 うん? ああ、彼は俺の事を邪精使いと疑っている。


 「はい、なんですかえっと」


 名前はぁ。ああ、知らないのだ。ならなんと呼べば良いだろうか。


 「あ、お。俺は。その……。エディンだ」


 あらエディンくん。彼はエディンくんと言うのか。

 なんだか知らんが名乗ってくれたっ!!

 おお、よろしくよろしくエディンくんっ!!

 

 「ありがとうエディンくん、それでなにかな?」

 「いや、その……」


 「その……」


 先ほどと打って変わって歯切れが悪い。どういう事だろうか。


 「ともかく状況は確認した。他にも被害はない?」

 「あ、その……」


 「こ、こちら。です」

 

 うん? なんかしおらしい。まぁ良いや。

 ともかく、そこに行ってみよう。


 

 ◇ ◇ ◇


 

 「うううううう……。あ。う……」


 案内された家には1人の男性が苦しそうに唸っていた。どうやら何かの病気で臥せっているらしい。


 「あ、あの。先生……。彼が、その」


 エディンくんが男性に掛けられていた敷き物を取る。


 「うわ、わ……。ああ」


 するとフィーネちゃんがギョッとした顔でその様子を見る。

 男性の足は10倍以上に腫れあがっていた。患部は灰色に変色しなんとも痛々しい。

 これは恐らく象皮病だろう。昔テレビで見た事がある。


 「あらまぁ、まぁともかく薬を打っておきますね」


 俺は再生剤を取り出し男性に注入した。

 しばらくして患部は石膏のように固まり、剥がせるようになった。


 エディンくんから小づちのような物を借りてその患部を叩く。

 すると中から健康になった足が出てきた。再生剤の効果で元の状態へと戻ったのだ。

 その時に患部となった部分を壊死させる。

 壊死した部分はそれからボロボロと崩れていく。その患部を箒で外に掃き出した後。

 足を動かせるようになった男性にも同じくポカリスエットと桃缶を与え一息付けさせる。


 「すげぇ……」


 それからまた家畜の所に向かう。

 状況はさっきと同じ。何かの化け物に襲われて血を吸われている。

 外に出てみれば、やはりまた足跡がない。


 手がかりはなし、か。


 「エディンくん」

 「は、はい先生っ!!」


 うん? 先生? まぁ良いか。


 「じゃあ次の被害者の所に」

 「分かりました先生っ!!」



 「こっち……」

 「こちらです先生っ!!」


 

 エディン君に連れられ、俺達は次の家に向かう。


 先ほどの2例の共通点は……。病人の家。

 もしや犯人は弱っている人達の家畜を狙っている。とか?


 まぁそれは次の家で判断出来るだろう。

 家畜の血を吸う化け物……。実は、心当たりがある。


 でも、まさか……。


 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 「やっぱりここもか」


 連れられた先に、やはり体を動かせないような病人が居た。

 犯人は病人が居る場所を選ぶ、気付かれないように家畜の血を吸っている。

 そして爪が4つで、牙が2本。家畜の血を吸いつくす特性があって……。

 

 「ともかく薬を打っときますね」


 薬を打って、他の家に移動する。移動した先にまた病人が居た。

 どうやら例の症状はこの地区の病人を辿っているようだった。


 少しずつ、どこかに近づいている?


 「お、お父さんがっ!! あ、ああお医者様っ!! ありがとうございますっ!!」

 「す、すげぇ。先生は名医だっ!! なんでも治しちまいやがるっ!!」


 「せ、先生っ!!」

 「この先にもう人家は無い?」


 「は、はいそうですが……」

 「それなら」


 この先か。


 「案内してくれる?」

 「あ、は、はいっ!!」


 俺はエディンくん達につれられ、先に向かった。

 そこには。


 「穴?」


 そこには大きな崖があり、その先にはあちこち掘ったような大きな穴があった。

 ここは、鉱山なのだろうか? しかしこんな穴があちこちに……。

 鉱山と言えば入口は1つだと思っていたが。こんなボコボコ穴を開けるものなのか?


 「ザントマンが開けた穴ですね」

 「ザントマン?」


 「ええ、まぁ砂取りと言えば話は早いかと」

 「砂取り? 砂を取るのかい?」


 「え? ああ、はい。砂は色々と使えますから。屋敷の掃除などに使います」

 「外にも売れるし、それが彼らの収入源でして」


 「砂を、売る?」

 「まぁ砂以外にも土も取りますがね。これはこっちで使いますよ」


 「土? 土を何に使うんだい?」

 「まぁ、ギガントモウラに与える餌用の」


 「ミミズを繁殖される為に使いますね」


 ミミズ……。そうか、彼らの家畜はモグラだから。

 そのモグラの餌用にミミズが居るのか。

 あのモグラはギガントモウラって言うのか。なるほど。

 

 この地区の人々はモグラを家畜にしている。モグラはミミズを食べて。

 そのミミズを育てる為の土をこの集落の人達は集めている。

 そういう事か。


 「そうか。そのザントマンは儲かるのかい? 見た感じあまり裕福そうには見えないけど」

 「いやぁ……。あまり。食う為がやっとというか」


 「やっと……。なんで彼らみたいな人が?」

 「鉱山はその、しっかり身元がある奴の仕事で」


 「彼らは?」

 「他所から流れてきた流れ者でして。ほら、最近他所では魔王が出たってんで」

 「それで流れ者が沢山出てきて、最初は鉱山の人手として雇ってたんですが」


 「でもそれが抱えきれなくなって。だからまぁ」

 「こいつ等は他に仕事がないってんで。鉱脈が無いここでザントマンの仕事を」


 「なるほど」


 苦肉の策の公共事業。ってところか。魔王の侵攻による難民。

 その難民を独り立ちさせる為に、割は良くないけど食べられる程度の仕事を提供してる。

 そういう事なのか。


 「でも、この仕事は実入りも良くないし病気にもなりやすくて」

 「それでもっ!! 家畜があれば乳も取れるし肉だって手に入る」

 「ギガントモウラはこの辺りの希望でっ!!」


 「それが、最近はどうもリャナンシーが出てきて」

 「結果として、こいつ等の生活が……」


 なるほど、切羽詰まった理由があるのか。

 この地区に病人が多かったのはザントマン稼業による不衛生と貧困のせい。


 結果、色々と隙が出来てよく分からない怪物に襲われた。

 そんな事で良いのだと思う。


 「リャナンシー。エディンくんはそれをよく言ってたけど。そうだっていう何か確証はあるのかい?」

 「いや、あ……。えっと」


 「その……」


 どうやら確証はなかったらしい。恐らく何らかの民間伝承を持ちだして。

 そうにちがいない。っと思ってからの行動か。


 まぁ他に理由なんて思いつかないだろうし、そういった噂に引きずられるのも仕方ない事だろう。

 見た感じ、学校とかも無さそうだし……。


 「先生、あの、えっと……」

 「なんだいエディンくん」


 「皆を、助けてやってください。村の本家の連中は皆やる気がなくて」

 「俺と、こいつ等だけが……。ここに知り合いも居るから……」


 エディン君の言葉に着いてきた村人達も頷いた。

 どうやら彼らは数少ないこの地区の味方だったらしい。

 最初は粗暴だと思っていた彼らだが、それは現状を回復出来ない焦りと怒りからの行動だったのかも。


 「先生、お願いです。このままここの家畜を狙われたら、立ち行かなくなる」

 「ギガントモウラだって無限じゃない。家畜を分けるのも限界だ」


 「だからなんとか事態を解決して戻してください」

 「お願いします……」


 「お願いしますっ!! 先生っ!!」


 エディン君が頭を下げ、俺に懇願する。

 どうやら彼は優しい子だったようだ。この地区の人々の為、きっと一生懸命だったんだろう。


 地区を救え、か。よし。なんとかやってみよう。

 なんとか。と言っても現状分かる範囲の原因の発生源は。


 俺は目の前の穴ぼこだらけの洞窟に目をやる。

 恐らく、原因はこの先の……。


 「ねぇ、エディンくん」

 「は、はい先生っ!!」


 「君達」

 「なにか、武器みたいなの持ってないかい?」


 気のせいだったら良いんだけど、さて。

 この先、鬼が出るか蛇が出るか。


 見て、みようじゃないか。

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