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魔王に囚われて異世界から英雄(ヒーロー)を召喚した王女様。間違えてゲームのキャラを召喚してしまった。  作者: 宮森 英二
異世界と現実

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第114話 一宿のお宿っ!! 実際寝るのは自宅のお布団


 「ふぅ――――」


 「ふぅ」


 「うん、なんか」


 「あんまり眠くないですね。博士」

 「そりゃあそうでしょ。脳波弄ってる状態なんだから眠くなんないわよ」


 あれからこの辺りの村長だという家主にしこたま礼を言われ家に泊めさせてもらった。

 泊めさせて貰ったのが。


 「目がぱっちり冴えてますね。これなんとかなりません?」

 「無理ね。脳波コントロール中は脳が自動的に覚醒状態になる。この間に寝るのは無理よ」


 「んな殺生な」

 「あんたが宿に泊まりたいとか言い出したんでしょ」


 「ですけどまさかこんな副作用があるなんて思いませんでしたよぉ」

 「元々長期間使うものじゃないからね」


 「これなんとかなりません?」

 「対策は簡単よ」


 「おおっ!! どうすれば良いんですかっ!?」

 「それは」


 「機器の電源つけたまま装置を取れば良いのよ」


 「電源はどうやって切るんです?」

 「一度頭をポンポンと叩きなさい。そうすれば電源が落ちるわ」


 なるほど。俺は言われた通りに頭を叩き。

 

 「あ、なんか感じが違う。現実で体が動かせますね」

 

 俺は現実に戻ってきた。頭を叩いた瞬間内部に入り込んでいた視界がスッと闇に変化した。

 それから自分の体を動かす事が出来た。


 俺は頭に着いていた機器を頭から取り外すと、そのまま床に置いた。


 「うわ。真っ暗」

 

 戻ってきた先の自宅は真っ暗だった。電灯をつけていなかったからだろう。

 

 「うお、暗っ」

 「真っ暗でゴワス。ロウソクはないでゴワスか?」

 「こっちでも夜なんですね。やっぱり繋がってるんだニャン」


 彼女達も戻ってきたようだ。俺は電灯の紐を探して、そのまま電気を付ける。


 「うわっ!! ひ、光がっ!! ま、魔法でゴワスかっ!?」

 「あ、あっという間に明るく……。こ、これは何なんですかっ!?」


 異世界出身の2人が驚いている。どうやらあちらの世界には電灯が無いようだ。


 「なにって、電気でしょ。こんな事で驚かないでよ」

 

 あらあら、仕方ないですよ博士。なんかあっち、あまり文明は進んで無さそうだし。

 異世界から来た英雄様は色々教えてくれなかったのかなぁ。

 っと思ったけど……。


 でも実際に異世界になんか技術を教えろとか言われても。

 俺、なんも教えられないしなぁ。


 っとすれば身一つで異世界に行った英雄たちもそういうのは専門外だったのだろう。

 英雄としての力は欲しいが、余計な事は必要ない。そういう事だったのかもなぁ。


 ともかく現実世界に戻ってきた。異世界から現実へ。

 俺はそのまま外に出て俺達の世界の空を見る。大きな月がそこにはある。

 ただ、それだけ。


 それだけでどこにも星らしい星はなかった。

 街の明かりで星が見えない。なんて事はない。ただ単純に。


 星が無いのだ。

 全部壊してしまったから。


 「あっちに比べて殺風景な空だわねぇ」


 博士も同じ感想を抱いたらしい。縁側で俺の横に。

 いや膝に。あら博士、お膝が好きですか?


 「星、ないですもんねぇ」

 「そんなものがあったらマリスに吸収されるしね。妥当な判断だったわよ」


 マリス。奴等は物質を吸収し自らの糧にする事が出来る。

 物質。星もつまりはそれだ。故に供給を絶つ上でしっかり壊した。

 奴等が最初地球に来たのも星々を巡ってだ。

 目印を絶つ。っという意味でも星は邪魔だった。


 結果、こんな寂しい星空になってしまったが。


 「あっちの世界から星は……。流石に無理よねぇ」

 「いつか人口星でも打ち上げてもうちょっと明るくしたいですねぇ」


 「そんならもっと加減して欲しかったわ。月も火星も無いんじゃあ宇宙開拓も出来ないわさ」


 あらぁ。まったく迷惑な話ですねぇ。あはははは。


 「まぁ地球の資源で出来ない事もないだろうけど、幸い地球は無事だしね。資源だってある」

 「人口星……。実は計画されてたのよ。でも今は……。そんな余裕ないでしょうし」


 「世知辛い話ですねぇ」

 「生きているだけ丸儲け。でも、あれから欲だって少しずつ出てきたのに」


 「それも、ちょっときな臭くなってくるかも」

 「ですねぇ」


 宇宙の中にポツンと佇む月を見ながら状況に思いを馳せる。

 きっと今もあれこれと上層部の話が進んでいるのだろう。

 しかしそんな事関係なく、今はとても静かで……


 「あ、あのぉ」


 あら。


 「えっと、それで。これからどうするでゴワス?」


 あらアニエスさん。


 真新しい洋服に身を包んだアニエスさんがそこに居た。

 髪は付けていた機器の影響かちょっとボサボサ。

 

 そこにコリーヌちゃんが続く。よくみれば顔が似てる。

 なるほど、2人は姉妹なのだ。


 「今日はもう寝るわ。流石に深夜だしね」

 「実際に寝る時はこちらで、とは。なんだか変な感じですニャン」


 彼女達にとっては異世界のこちら。

 クローン化しこちらの世界に降りたった彼女達にはさぞかし不思議な状況だろう。


 でもかつて異世界に降り立った英雄たちも同じように感じていただろう。

 俺だって、もし状況が合えばずっとあちらだった。


 もしそうだったら、俺はどんな事を思うんだろうなぁ。


 「ともかく明日の朝から本格的に異世界探索を行うわ」

 「しかし弓なり病。破傷風。それも末期とは」

 「あっちの世界には魔法みたいなのがあるんでしょう? それで治療出来なかったの?」


 弓なり病。あちらの世界で出会った病気。確かに。

 あそこまで酷い状態になるまで、魔法でなんとかしなかったのだろうか。


 「魔法は万能という訳ではないですニャン。千切れた腕とかは治せるニャンけど」

 「体の病気は……。よっぽど高度な回復じゃないと。そういうのは教会が秘匿してるのニャン」


 教会。何らかの宗教施設か。つまり教会が既得権益を握っている。

 そういう事になるのかな。


 「教会が秘匿、ね。まぁ古い時代みたいだし、そういうのは飯の種か」

 「魔王が出て困ってるって話だけど、そういう権益は手放したりしないのね」


 「いやぁ」


 「実に人間らしい、良い話じゃない」

 「あうう……」


 あら、博士。駄目ですよそういう皮肉は。ほら、2人のなんか微妙な顔してるし。

 しかし教会か。宗教。どんな神様を信仰しているんだろうか。


 既得権益がどうこうとか黒い話はあるけど、そんなのどこにだってある話だ。

 でも権益を独占出来る程の力を持つ団体。なんだか興味あるなぁ。


 「これからはもっと薬品を持ち合わせた方が良いかもね。再生剤はあまりにも万能すぎるし」

 「あら、やっぱりマズかったですかね。治療したの」


 「マズかった。かもしれないでゴワス。明日になったらきっとウチもウチもと大変でゴワスよ」

 「無医村とかだった余計に……。回復魔法が使える人が来ただけで大騒ぎニャンですし」


 そうなのか。でも。


 「でも困ってるなら助けてあげても良いかもね。薬なら別にあるし」

 「ねぇ博士」


 「そうねぇ。流石世界に選ばれた英雄様、お優しい事で」


 あら。ふふふ。そうですねぇ。たぶんこういう性格見透かされたのかも。

 でもまぁ良いじゃない。それで色々と話聞きやすくなるなんて事もあるだろうし。

 人を助けて、別に損になるなんて事は無い訳だし。


 「じゃあ今日も遅いですし、そろそろ寝ましょうか」

 「そうね。ああ、あいつ等の布団も出しとかないとね」


 博士が居間に移動して床に敷き物を置いた。

 そこにペタペタと細分化されたスクリーンのような物を張って形を整える。

 それから敷き物に付けられていた電源ボタンを押し。


 即席の「アイテムボックス」の出来上がりだ。

 そこから。


 「ほら布団、取り出して」


 中に入れた欲しい物を取り出す。布団はいざって時の為に複数入れて置いた。

 それを4つ、部屋に敷く。


 一番端が自分、それから博士。コリーヌちゃん。アニエスさんと続く。

 川より一本多い4本線。


 「狭いところでごめんね――」


 年頃の女の子をこんな所で眠らせるのは気が進まないが。

 しかし上等な家などないのだから、まぁしょうがない。

 引っ越しとか……。もしかしたら必要、かも。


 「いえ、屋根があって安全な場所なら歓迎でゴワスっ!! 少なくともここなら死なないでしょうし」

 「アンデールの中も危険だったし、見張りを立てないと眠る気が起きなかったニャン」


 「でもここなら」

 「安心して、眠れそうですニャン」


 あら。


 「それなら」



 「歯を磨いて顔を洗ってから、寝ようか」

 「あ、はい……」


 それから彼女達に身支度させて、就寝の準備をする。


 「あら博士。可愛らしい寝間着ですね」

 「うるさいわね。ついでに買ったの」


 博士がいつのまにか寝間着に着替えている。

 どうやら2人も同じような寝間着を買ったらしい。ピンクのハートだらけの可愛い寝間着。

 実に女の子らしい。ファンシーでよろしいっ!!

 やっぱり博士、妖精とかそういうの可愛いの好きなのかも。


 「はい、あんたにも」


 博士が俺に紙袋を寄こしてきた。これは……。


 「あんたにも、買ってきたわよ……」


 あら。


 「ありがとうございます博士。えっと、これはぁ」


 青色のハートが書かれた同じような寝間着。あら。


 「可愛らしいですね。ありがとうございます」


 ちょっと恥ずかしいが、それでも嬉しい。

 居間の扉を閉め外に出て寝間着に着替える。

 うんうん、ぴったりだ。

 ふふふ、寝間着なんて着たのは子供の頃以来だなぁ。


 「どうですか博士。似合ってます?」

 「はん、中年の寝間着姿とか、見てて楽しいものじゃないわね」


 「あはは、そうですねぇ」

 「とってもお似合いニャン。ニート様」


 ふふふ、そうかい? ありがとう。


 よしじゃあ。


 「今日は寝ようか。明日も早いよ」


 それから皆で寝た。不思議と寝つきは良かった。

 いつもはずっと1人で寝ていたから、誰かと一緒に寝るのは。

 やっぱり、新鮮だ。


 「うん?」


 電気を消して、夜中。こっそり博士がこちらの布団に入ってくる。

 そういえば昨日もこんな感じで入ってきていたな。


 誰かに甘えたい。まだ、そんな思いが彼女にはあるのかもしれない。

 俺だって11歳の時は……。


 あはは。


 俺はそのまま博士を布団に入れて、彼女を抱きかかえる。

 そうして髪を撫でて、彼女に眠りを促した。


 博士は特に何も反応はしなかった。ただ自分で買った俺の寝間着の裾をギュッと掴みながら。

 彼女も、俺も。


 ゆっくりと、眠りに落ちて行った。

 


 ◇ ◇ ◇



 「旅人さんっ!! おはようございますっ!!」

 

 「あら、君は。ふふふ。元気になったかい?」

 「はい、昨日はありがとうございましたっ!!」

 

 「おかげで、おかげで……」

 「助かりましたっ!! ありがとう。ありがとうございますっ!!」


 朝、元気になった昨日の彼女に迎えられ。

 俺達は、再び異世界に降り立った。朝日が眩しい。


 ああ、異世界での朝。ここに来る時はずっと夜だったから。

 なんだか、初めてまともな朝を迎えたような気がする


 「朝ごはん一緒に食べよう旅人さんっ!! こっちこっちっ!!」

 「ほらこっちに来てっ!!」


 「一緒に」

 「一緒にご飯、食べようねっ!!」


 ああ。そうだね。


 「ありがとう、じゃあ一緒に」

 「一緒にご飯、食べようかっ!!」


 

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