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魔王に囚われて異世界から英雄(ヒーロー)を召喚した王女様。間違えてゲームのキャラを召喚してしまった。  作者: 宮森 英二
異世界と現実

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第113話 人だっ!! 人の集落があるぞっ!! やっほいっ!!

 

 「人の背に乗りながらだと、意外と平気でゴワスな」

 「星が綺麗だね――。お姉ちゃん」


 一通り作業を終え、俺達はフロートユニットで飛びながら山を移動する。

 高度は雲に届く程の高高度。一度アニエスさん達はこの高度を移動して大層狼狽していたが。

 だけどVR機器を使い命の危険から解放されたからだろうか。

 あの頃とは打って変わってその景色を楽しんでいる。

 

 下にはうっそうとした森が広がり、近くなった空からは満点の星空が見えている。

 人の手で無理やり再生されたものとは違う天然の木々。そして満点の星空。

 う――ん。素晴らしい。


 「星が綺麗ね……。こっちは誰かさんが星を消し飛ばしたから夜は真っ暗よ」


 あら誰のせいざんしょ。ふんふ~ん。ま、まぁともかく星が綺麗って事でっ!!


 「それにしても闇雲に進んで大丈夫でゴワスかな」


 「大丈夫でしょ。何も見つからなかったら焚火に戻れば良いのよ」

 「あの場所が起点になる。人里が見つからないならあそこに戻ってやり直せば良いわ」


 なるほど。流石博士、頭が冴える。

 身内に頭の良い子が居るとこんなに助けになるなんて。いやぁ良き良き。


 「なんでも知っていて。春美様は賢者のようでゴワスねぇ」

 「私と同じくらいの年の子なのに、凄いニャン」


 「ふふん。そうでしょ? もっと褒めて良いのよっ!!」

 「あらあら。博士は偉いですね――。よしよし」


 「あんただけはなんか主婦目線なのよね。その感じなんとかならないの」


 あらま。すいません根っからの性格なもので。

 昔から男らしくないとは言われてたもんだ。そう教育されてきたってのもあるけど。


 「ニート様は育ちの良さが出ているのでゴワス。えっと」

 「こ、皇帝の血筋というのは――。本当なんでゴワス?」


 あ。それ聞く? いやぁ。あはは。


 「私の事は全部嘘だけど、こいつが皇帝の血筋ってのは本当よ」

 「現在に残る皇帝の血筋。まぁあまり重視はされてないけどね」


 「それは本当なんでゴワスか……」

 「ニート様を中心に帝国を再建。なんて動きは出なかったでゴワスか?」


 「何度かあったみたいだけど、それよりも社会の復興の優先した感じかしら」

 「そうなのですねゴワスか。せっかく皇帝が居るのなら、帝国の再建を目指せば」


 「国を名乗っても、名乗る相手が居ないしね」

 「あっ」


 「…………………………」

 


 あら、場が静まっちゃった。

 確かに国なんて名乗ってもそれを認識する相手が居ないから。

 まぁ逆に考えれば他人を気にしないで良くなったとも言える。


 うんうん。世の中良い方に考えないと。あはは。



 「私達が……」

 「私達が帝国を認識すれ、ば」


 「ニート様は皇帝陛下に。ニャン?」

 「この話は止めましょう。あまり楽しい話じゃない」


 「あ、失礼しましたニャン……」

 「ウチはもう王国や帝国なんかは卒業したのよ」


 「民主主義で、ちまちまやれたら良い」

 「それで良いの。変な事言わないでね」


 「は、はい……。ですニャン」


 皇帝の血か。あまり意識した事ないけど。

 そういえば、そうなんだよなぁ。


 王国や帝国みたいな意識の中に居る彼女達には大きな事なのかもしれないけど。

 俺はそんな事を気にしないでいられる今の生活が気に入っている。


 今後。


 変な事態にならないと良いけどなぁ。



 ◇ ◇ ◇


 

 「あっ!!」

 

 「あそこっ!!」


 2時間程ユニットで移動したろうか。

 アニエスさん達が何かを見つけたようだ。見ればなにやら光が。

 

 「あれは、人家じゃないかしら」


 人家。博士の発言通り、見てみればそこには小さな家が。

 家……。


 つまりはそこに人が居るって事で。

 

 「第一村人発見って感じ? 家があるわよ家がっ!!」


 博士の声が上擦る。ようやく見つけた人家だ。

 博士も楽しみなのだろう。


 「ご挨拶してみますか?」

 「一晩の宿くらい借りれないかしら」


 「よく見れば小さな集落のようでゴワスね。明りはあそこだけに着いている」


 「家がやや大きい。明りがあるという事はロウソクが」

 「それなりに裕福な家かもしれんでゴワスな」


 あら鋭いご意見ありがとう。小さな集落。確かによく見れば家がちらほらと。

 へ――。つまり村って事か。


 良いね良いね。ご交流をしてみたいところ。


 「行ってみるでゴワス? 宿賃さえ払えば一晩くらい泊めてくれるかもでゴワス」

 「宿賃、か。お金持ってないけど……」


 「そういえば無一文でしたね。う――ん。とりあえず聞いてみるだけ聞いてみるニャン」

 「旅の情報目当てに、宿だけでも提供してくれるかもしれないニャンよ」


 へぇ。なんだか面白そうっ!! 別に断られてもデメリットは無いし、話だけでも聞いてみたいっ!!

 

 「行ってみましょ。異世界人との初遭遇って訳っ!!」

 「そうですねっ!!」

 

 って訳で決定だっ!! 俺はフロートユニットを下ろすと、そのまま地面に降り立った。


 「あっ!! でも、あのニート様」

 

 うん?


 「その、恰好が……。その」


 恰好。あ、そうだ俺パンツ一丁だったっ!!

 あらら。これは……。流石に怪しいよねぇ。


 「ふふふふふふ」


 うん? なんだ博士。


 「こんな事もあろうかとっ!! 街のショップで旅人っぽい装いの衣服を買っておいたわっ!!」


 なんとっ!! 流石博士、準備が良い。


 「アイテム欄に袋を入れておいた筈よ。その袋を出してちょうだい」


 袋、そういえば入れたような。

 俺はアイテム欄を選択し、そこから手提げバック程の麻袋を取り出した。

 麻袋、とは。

 なんとも世界観にマッチしている。意外とこういうの好きなのかな博士は。


 「その袋の裏地には小型プロジェクターとスクリーンが縫い付けられてるわ」


 「ボタンを押して、スクリーンを起動なさい」

 「アイテム欄と連動して、中からアイテムを取り出せる筈よ」


 なんと。そんな改造を。ふむふむ。取り出せるかな。

 

 「ごそごそと動かしてカーソルを移動させなさい」


 俺は言われた通り、袋の中で手を動かす。

 するとアイテム欄の項目が動き、色々選択できるようになった。


 「よしっ!! 成功ねっ!! これで袋の中から自然にアイテムを取り出せるわっ!!」

 

 ウォーカーなどの大きい物を取り出す時はそのままで良いだろうが。

 小物を入れる時は確かにこれは便利だ。自然に取り出せて外聞も良い。

 今や禁忌のスクリーンを持ちだす事にもなるが、袋程度の大きさなら小型種も出てこないだろう。

 

 「いざって時には焼く為に機能もある。いざって時は頼むわよ」

 

 そっち方面も考えてたか。良いね袋っ!! これは便利かもっ!!


 「色々と魔法のように……。春美様は魔装具使いみたいでゴワスな」


 まそうぐ? そういうのがあるのか。

 なんだか世界観が広がってきたぞっ!! 「まそうぐ」ってなんだろうなぁ。

 まぁ今は目の前の交流に集中しようっ!!


 初めてのこちらからの交流。上手く行くと良いなぁ。

 そんな訳で。

 俺は明りが点いている家の前に立ち、ドアをノックした。


 しばらくして、家のご婦人だろうか。

 やや疲れた印象の中年の女性が出てきた。目にくまが出来てるように思う。

 どうかしたのだろうか。


 「あのぉ、すいません。一晩泊めて頂きたく」

 「ごめんなさいね。今立て込んでて……」


 一声上げた瞬間に断られる。

 あらら、でも異世界の人と話せて嬉しいっ!!

 断われたのはしょうがないけど、不躾はこちらの方だししょうがないかな。


 「フィーネっ!! 大丈夫かい、フィーネっ!!」


 奥からなにやら声がする。フィーネ。女性の名前か?

 どうしたのだろう。


 「ああ、弓なり病だ……。うう、しっかりしろフィーネっ!! フィーネっ!!」


 弓なり病……? なんだろう。


 「あの、お病気ですか?」

 「え、ええ……。娘が。でも、もう長くはないでしょう」


 「長くない……。あの、治療は」

 「弓なり病に治療法はありません……。だから、もう」


 弓なり病……。聞いた事のない病気だ。異世界特有の病気なのだろうか。


 なんだか。

 困ってるみたいだなぁ。


 「あの……」

 「よろしければ、診てみますけど」

 

 「ええ?」


 自然と声が出た。医療の知識は。まぁ多少くらいならある。

 取り合えず見てみれば何か分かるかもしれない。


 「ちょっと、大丈夫なの? 異世界の病気なんて」

 「うわっ!! 妖精っ!!」


 ご婦人がマントの中から出てきた博士に驚く。

 妖精は一般的なものだが、そう頻繁に居る訳ではないようだ。


 「ともかく見てみればどんな病気か判明するかもですし」

 「それはそうかもしれないけどねぇ」


 「あ、あの……。貴方は、お医者なのですか?」

 

 ご婦人がおずおずと尋ねる。

 本当は医者、ではないのだが……。


 「はい。心得があります」


 心得がある。嘘は言っていない。もしかしたら出来る事があるかもしれない。


 「あ、ああっ!! ど、どうかお願いしますっ!! 娘を救ってくださいっ!!」

 「まったく安請け合いして。知らない病気だったらどうするのよ」


 それでも、精一杯手を尽くそう。

 

 「では連れて行ってください」

 「は、はいっ!!」


 そうして連れられた先には1人の少女が居た。

 金髪でそばかすがある少女。年は博士くらいだろう。

 彼女が、弓なり病。そう言われた通りまるで反った弓のように体を痙攣させている。

 顔は笑っているように見えながら引きつっている。


 これは……。


 「明らかに破傷風の末期症状だわ。生でこんなの見るのは初めて」


 破傷風。名前くらいは聞いた事がある。

 しかしなんとも悲惨な姿だ。弓なり病。と言われるのも分かる。


 「博士、これは……」

 「未知の病気じゃないなら再生剤の投薬でなんとかなるかも」


 再生剤の投薬、か。アレを、使うのか。

 いや。

 使うべきだろう。


 「今から薬を打ちます。それで元気になる筈です」

 「薬? そんなものが本当に……?」


 俺は袋の中に入れておいた再生剤を取り出した。

 小さな注射器のような形。コンビニでも買えるその薬はどんな病気でも直す万能薬だ。

 民間用という事で効果は薄められているが、それでもかなり効果は高い。

 彼女に向かってそれを打った。


 彼女の両親だろう夫婦がそれを見守っている。

 効果はすぐさま現れた。再生剤の「肉体を元の状態に戻す」

 っという効能はすぐさま効果を表し。

 薬に入れられているナノマシンが病気の元を絶ち体を元に戻す。


 元はマリスのゾンビ攻撃から人々を戻す為に作られた薬。

 こちらの血と努力で作られたその薬が。


 異世界の少女の治療を完了させた。

 どうやら、この世界に人々にも効果があるらしい。

 弓なりに反転していた彼女の体は地に落ち着き、こわばった顔が元に戻る。


 「あ、ああ……」

 「フィーネっ!! フィーネっ!!」


 「良かったっ!! ああ、ありがとうありがとうっ!!」

 「フィーネっ!!」


 治療が成功した少女に夫婦が抱き着いている。

 当の彼女はキョトンとした顔をしていたが、次第に自分の状況を把握したのか。

 その目に、うっすらと涙をためていた。


 俺はその様子を見て。

 なんだか、目頭が少し熱くなったのを感じた。



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