第112話 ダンジョン、そんなものがあるのかぁ。
「おお、フロートユニットっ!! そう言えば入れてましたねーっ!!」
「これを使ってどこかで街を探すわ。そこで色々動物を探しましょうっ!!」
「動物ですかー。色々見つかると良いですね――っ!!」
「ねぇ――っ!! あははははっ!!」
異世界のサンプル採取の旅、か。なんだか楽しそうな事が始まったっ!!
心なしか博士も楽しそうだ。妖精姿のままくるんと回転したりして、ノリノリじゃないかっ!!
俺も。まぁ楽しみになってきたかもっ!!
「ふぅ、血液の採取、完了したでゴワス」
「死体の血が凝固してないニャン。ここでは死体の保存状態は保たれる」
「そう思って良いニャンかな」
一緒に転がっている死体のサンプルを採取していた2人も居る。
先ほどまで転がっている死体から血液サンプルを取っていた。
サンプルを取った死体からアンデールの外の地面に埋めていく。
流石にそのままにしておく訳にはいかないだろう。
幸いな事にこの体は一切疲れる事がない。こういう作業はお手の物なのだ。
「作業は一通り完了ね、その数約600。これだけの人数に注射針刺すのは骨が折れたわ」
「あー。頭いたい。まったくまったく」
頭が痛い。そうかな? 俺は別に何も感じないけど。
「確かに。なんだか頭がクラクラするでゴワス。どういう事でゴワスか?」
どうやらアニエスさんもそう感じていたらしい。
そういえば彼女達も脳波コントロールを使っているようだし。
もしやそれに何らかの副作用でもあるのだろうか。
「今私達が動かしてる操作方法は頭で直接動かすものだけど」
「これを行うにはある程度の才能が居るの」
「才能、ニャンか?」
「そう。その才能がない人物は「妖精」に固定させて貰ってる」
「五体全てを満遍なく動かす事が出来ないから「飛んで」移動を補助するのよ」
なんとっ!! 彼女達の妖精姿はそういった要素もあったのか。
博士の趣味だと思ってた。
なるほど、そういえばウォーカーを操作した時同じような事言ってたような。
頭が爆発するとか……。
え、彼女達が使って大丈夫なのそれ。
「そういった訳で私達は戦闘に参加出来ないし自由にも動けないわ」
「ちょっと体を動かすだけでこの有様だしね」
「むぅ……。体が妖精な訳。そういう事だったのでゴワスか」
「私はてっきり春美様の趣味だと……」
あはは、俺もそれを思ってた。
「ファンタジー世界であるという事を尊重して妖精にしたの」
「なんか悪い?」
いえいえ何も。ふふふ、三人とも可愛いよ。
しかし妖精かぁ。アザゼル君も別に不思議に思っていなかったし。
やっぱりこの世界そういうのが居るの普通なのかな。
なら妖精からもサンプルが取れたり?
現代に蘇る妖精……。う――んなんだかインモラルな香りがするぞぉ。
「ともかく作業はひと段落した。外に出ましょう。他にしなきゃいけない事がある」
しなきゃいけない事……。なんだろうか。ともかく焚火に座ってアンデールの外に出た。
外は真っ暗だ。っと言う事は実際の外も夜なのだろう。日はすっかり暮れたようだ。
こちらとあちらの時差が一緒。
そういう意味で日本からの召喚者が多かったのだろうか。とも感じてしまう。
異世界と現実世界の時差ボケ。そんな事があるのだろうか。そう考えると面白いな。
時差が合う国から召喚者を選んでいる? うーん、謎っ!!
「よし、外に出たわね。じゃあ焚火にホログラムを付けるわ」
「ホログラム、でゴワスか?」
ホログラム。確かウォーカーにも採用されているという映像投射技術の事。
それで一体何をしようって言うんだ?
博士は焚火に飛んで移動すると、そこに何かの装置を置いてスイッチを押した。
するとその場から焚火の姿が消え、何も見えなくなる。
「焚火が消えたニャン」
「別に消えた訳じゃないわ。隠したといった方が良いかしら」
「隠した……。なるほど。見えなくして敵の進入を防ぐでゴワスね」
「そういう事、焚火は便利だけど敵味方識別無しに入り込む事が出来る」
「だからこうやって工夫しないとね」
なるほど。だからこそのホログラム。
確かに焚火は敵も入り込めるしこういう防御策、必要かも。
流石博士、色々考えてるなぁ。
「異世界の技術……。本当に驚異的でゴザルな……」
異世界? ああ、こっちの事か。
しかしどっちも相手の事を異世界だと思ってるから、あっちだのこっちだの。
なんだかちょっと呼びにくいなぁ。何か互いの良い呼び方ってないかな。
「しかしどっちも相手の事、異世界だと思ってるからなんか紛らわしいわね」
あら博士。同じ事考えてた。名前問題、いつかなんとかしないと駄目かもなぁ。
「まぁ、今はそんな事考えてる暇はないか。ともかく先を」
「あ、待ってくださいニャン」
「うん、どうしたの?」
これから先に進もう。という時にコリーヌちゃんが呼び止める。
「この辺り、魔力の流れが大きいですニャンね」
魔力の流れ、なんだそれ。
「流れが大きいってどういう事?」
「あれ? 皆さんには見えないニャンか?」
何も見えないけど……。彼女は何を感じられるのだろうか。
「確かに揺らぎがあるな。こっちでゴワス」
アニエスさんが飛びながらどこぞへと向かう。
何かを見つけたのだろうか。
「やっぱり……」
「ダンジョンが形成されてるニャンね」
着いて行った先に大きな穴があった。
穴は人間が通れる程の大きさでその先が見えない。どうやら細長い道になっているらしい。
「ダンジョンでゴワス。魔力が堆積して出来る事があるのでゴワス」
「魔力の堆積?」
「はい……。廃墟に発生したという事は、ここで死んだ人々の魔力から発生した」
「と思いますニャン」
「なにそれ、人の死体からダンジョンが出来るって事?」
「いえ。その体から出てきた魔力から。でゴワスかね」
「人の思念をたっぷり含んだ魔力が世界を歪ませダンジョンが出来る」
「そういった事がたまにあるのでゴワス。こちらでは」
「ダンジョンねぇ。人からそんなのが発生するなんてね」
「人じゃなくても、死んだ竜のねぐらや精霊などからも発生するニャン」
「たぶん、ここで沢山人が死んだから……。発生したと思うニャン」
ああ、なるほど。つまりこの廃墟はかつてしっかり人が住んでて……。
「諸行無常ってやつね。それでダンジョンだっけ? 何か利点でもあるの?」
「ああ、はいっ!! 中には魔力で作られたアイテムが出てきたりするでゴワスっ!!」
魔力で作られたアイテム、か。なんだかRPGみたいだなぁ。
ふ――ん。ダンジョン。どうしようか。
「興味はあるけど……。長丁場になりそうね。悪いけど先に進みたいわ」
「私達の目的はあくまでもサンプルの確保。こういう調査は求めてない」
あら。まぁ確かに目的外ではあるか。異世界のアイテム、興味あったんだけど。
「そうでゴワスか。ならば反対はしないでゴワス」
「冒険者ギルドに報告するニャン? 見つけただけでもかなりの額の報奨金が貰えるニャンよ」
冒険者ギルド? そんなのがあるのか。
おお、ファンタジーだ。
「冒険者ギルド、か。大きな街にはそんなのがあるの?」
「はい、あるでゴワスよ」
「ふふふ、そう。なんだか廃墟しか見てないから。そろそろしっかりとした人里が見たいわ」
「ねぇ」
「英雄様」
あら、英雄様。うんうん。
「そうだね、じゃあ」
先、急ごうか。
でもダンジョン……。
何かに、使えないかなぁ。




