第111話 対等という名の関係。お互いの利益。大事だよね。
「これを付ければ良いですニャンか?」
「これで、私達の世界に戻れるでゴワス?」
「戻れる。とは違うわね。感覚として「体験する」に近いわ」
「体験。でゴワスか?」
「そう、ゲーム体験。頭の中で動かしてその世界を見て回る、感覚」
「頭の中で動かす。ニャンか……」
「こっちの事情から今はこのVR機器を使ってしか異世界に行けない」
「前はテレビってのがあったんだけど、それはマリスが敵を呼び出す装置になってる」
「だからもう使えない。代わりに作り出したのがあんた達が付けてる装置」
「この装置を。まぁ難しい事は省いて。ともかくこれを使って感覚を共有し」
「私達も異世界を体験する事が出来る」
「ふむぅ……。よく分からんでゴザルが」
「なるべく分かりやすいよう伝えたつもりだけど。ともかく」
「異世界に行くわよ。あんた達も行けるかテストしてあげる」
そういう訳で、同盟状態の彼女達と再び異世界に行く事とした。
異世界に行く。と言ってもVR機器を起動し、操作するだけだけど。
そんな訳で機械のスイッチを入れ、あちらの世界に赴く。
「ちょっと待って。こいつらの脳波を……。ああ、まぁうん。そうよね」
行く前に少しの間が。なにやら博士が2人から何かのデータを取ったようだ。
「じゃああんた達も「妖精」ね。それじゃあ行くわよ」
博士の声と共に「異世界」への門が開かれた。
門が開かれた。だって。
ふふふ。
かっこつけちゃって。まぁ。
◇ ◇ ◇
っという訳で再び異世界にやってきた。
見える景色はアンデールの中。良かった。敵は誰も居ない。
あっ。
「灯火女さんも居る……」
灯火女さん。俺のレベルアップを担当してくれる女性「NPC」
恐らく本来のゲームと同じように、アザゼル君に殺された彼女は戻ってきたのだろう。
現状唯一の本物のNPC。たぶん俺と同じ不死属性を持っている。
だから俺が来たと同時に戻ってきた。
そういう事なのだろう。ともかく戻ってきてくれて良かった。
内心ちょっと不安だったのだ。戻ってこなかったらどうしようって。
「うわ……」
「これは……」
ふと横を見ると3人が居た。みんな、えっと。妖精の姿をしている。
妖精の姿のまま、転がっている死体を見て驚愕している。
まぁそれはそうだろう。だってそこには。
死んだ自分の死体も転がっているんだから。
4頭身の小さな妖精たちとなった2人が、倒れている自分達を見ている。
「私達、ほんとに……。死んだんだ」
「死んでる……。これ、私だ」
恐らく死の間際の記憶は継承しなかったのだろう。
そこは良かった。とは思うが。
やはりそこに自分が死んでいるというのは見ていて楽しいものだろう。
「英雄様に感謝する事ね。私はあんた達を見捨てるつもりで居たんだから」
「え」
そこ言っちゃうんだ。博士は正直だ。別に隠してそのまま進んでも良い筈だけど。
「あんた達は本来居ても居なくても良い存在。弱くて、頼りにならない」
「数だけ居て、たった一匹の「魔族」に敵わない。結局ここに居た敵を倒したのも」
「英雄の力。他力本願で役立たず。貴方達に価値なんて」
「博士」
恐らく彼女らに恩を着せるつもりなんだろうが。
そういうのは、あまり好まない。
止めて欲しいなぁ。
「………………………………」
「………………………………」
「申し訳ないでゴザル……。力不足で」
「まさかこんな事に……。ごめんなさいニャン」
ほら、暗い感じになっちゃった。駄目ですよ博士。
俺達は同盟なんだから。
「そこのあんた。同盟国との関係を悪化させるな」
「なんて思ってるんでしょうけど」
ん……。はい思ってますよ。
「でもね、同盟ってのは互いに利益があって初めて成り立つ関係なのよ」
「弱い存在を一方的に守るのとは違う」
「英雄の貴方には」
「分からない事かもしれないけどね」
一方的な関係になるな。そう。
そうか……。
「なら彼女達が俺達の同盟に相応しい手段が」
「あるって事ですよね。博士」
どうにも「大人」になりきれない自分が居る。
でも、俺はそれで正解なのだと思っている。
そう思っていた。
子供っぽく。大人になれなくて。
だからこそ。
だからこそ守れるものがあると思っている。
でも、今はそんな状況じゃない。
「対等」が必要なんだ。
たぶん博士が言っているのはそういう事で……。
対等、か。
「ともかく私達はあんた達と同盟。つまり互いに利益を共有する間柄って訳」
「そして現在、私達はあんた達に与えっぱなし」
「ウチの英雄様に至ってはここで死んだ他の連中も生き返らせてなんて言ってるわ」
「そ、そんな事が出来るでゴワスかっ!?」
「そりゃあ、ね。ここに機械を持ち込めば」
「機械。私達を生き返らせた装置ニャンか」
「そう。本当ならウチの世界で生き返らせてこっちの世界に返せれば良いんだけど」
「でも、それは出来ない。異世界間の行き来は出来ない」
「私達はただ「動かせる」だけ。ゲームのキャラをね」
「えっと、つまり私達2人は、そちらに……」
「帰れないわ。現状はね」
「現状は、でゴザルか……」
「いつかそれが出来るかもしれない。研究すれば」
「研究……。春美さまはお偉い学者様と聞いていますニャンが」
「ええ、でも」
「それをタダでやって貰おう、なんて思ってないわよね?」
「うう……」
別にやってあげても良いのに……。とは思うけど。
それだと「対等」にはならないんだろうなぁ。
「だからこそ、あんた達には役に立ってもらう」
「役に立つ、とは。何なのでゴワスか?」
「実は私はある取引をしたの」
「取引、ニャンか?」
「そう、実はあんた達を複製させた装置の管理をしている学者と私知り合いでね」
「その彼女と取引した。異世界の事を説明した上でね」
あら。
「そ、それでなんと?」
「もし私が異世界から生物サンプルを100体持ってこれる事が出来るなら」
「複製する為に機械を1機。融通してあげるってね」
異世界からサンプル。やっぱり。
「サンプル、でゴワスか?」
「そう。生物と言っても大型の哺乳類。それも利用価値がありそうな生物」
「そして私達の世界にないような多様性溢れる生物のサンプルを100体用意出来るなら」
「貴方達を複製させたその技術、この世界に提供してくれるそうよ」
「人を蘇らせる装置を……」
こちらの技術を提供する。その代わりに……。
「私達の世界はいま生命の多様性がない状態」
「かつて船に乗せていた情報以外の生命は既に死に絶えてしまった」
「昔はもっと沢山居た。数え切れない動物が、生命に溢れていた」
「100万種以上の生命で溢れていた。でも今は100種類にも満たない」
「家畜化出来る。人類に有用な生命しか生き残る事が出来なかった」
「それが私達の世界。人類と、それに付随する生命しか生き残れなかった」
「だから」
「だから、我々の世界から生命を輸入したい」
「そういう事。ですニャンか?」
「そうよ」
「それが貴方達の世界と交流する上で私達の最大の利点」
「生命の多様性を取り戻す」
「私達は貴方達の世界の多様性が欲しい」
「貴方達は私達の英雄と、技術の提供を受けられる」
「私達は協力しあえるわ。お互い欲しい物を持っている」
「だから」
「だから……。何なのでゴワス?」
「冒険」
「冒険?」
「一緒に異世界を冒険するわよっ!!」
「まずは人が居る場所を探しましょうっ!! そっから家畜のサンプル」
「つまり血液が欲しいっ!!」
「だから色々案内してちょうだいな。異世界っ!!」
「街や村。そして「国」なんかっ!!」
「わたし」
「私、凄く興味あるわっ!!」
あら。
あらぁっ!!
「そうだねぇ」
「そういう訳だから」
「もっと君達の事」
「教えて、くれないかい?」
俺は、彼女達に問うた。
彼女達は。
「はいっ!!」
「今度とも、よろしくお願いしますっ!!」
ああ、良かった。受け入れてくれた。
ああ。なんだか。
なんだか……。
楽しく、なりそうじゃないかっ!!
異世界探索だっ!! さぁてさて。
これから、どんなものが発見出来るかなーっ!!




