第110話 異世界ってもしかして生物多様性の宝庫では?
「へぇ――。そっちの世界にも似たような穀物があるんだ」
「は、はい。異世界の英雄を迎える為に似たような穀物を探し出して栽培して。でゴワス」
「でもやっぱり味が違いますニャンね。こっちのはもっと細長い形ですニャン」
「タイ米かなにかかしら。まぁともかく米は米って事で」
あれからご飯を炊いて魚を焼いて、卵焼きと味噌汁なんか作ったりして。
ちょっとした和食を作って彼女達に振る舞った。
長い独身生活。本気を出せば料理くらいは出来るのだっ!!
「どれも美味しいでゴワスっ!! ニート様ご馳走ありがとうでゴワスっ!!」
「この卵焼きって言うの。ほんのり甘くて美味しいニャンね――」
「まぁ20年っ!! もぉ無職だったらぁ? 多少は出来るようになるわよねぇ」
「20年もっ!! 20年もねぇ~」
作った料理はそれなりに好評だっ!! 博士だけちょっと辺りが強いけどそこはご愛嬌って事で。
よし、俺も食べるか。って事で博士が居ない間に買ってきたちゃぶ台に4人で食事を取る。
狭い和室に4人で食事。なんだか昭和くらいのご家庭の光景だ。
ちゃぶ台の真ん中には買っておいたお醤油。
博士なんかは醤油を卵焼きにドバドバ入れて食べている。
しょっぱい物好きなのかな? でもあんまりかけ過ぎたら駄目よ。
「あ、あの。この黒いのってもしかしてショーユですかニャンか?」
「あら、醤油の事知ってるの?」
「は、はい。かつて異世界の勇者が作られたショーユという調味料ですニャン」
「ショーユ。ふふふ、なんか伸びて伝わってるだね」
「確かに、ショーユとしょうゆ。微妙に違いますニャンね」
「他にも色々伝わってる言葉とかあるのかい?」
「はい。ケータイとかアニュメーとか。後はコミュケとか」
「オーリーンピークとかヒュコーキとか」
「色々伝わっているでニャンっ!!」
なんか微妙にちょっと違うけど、意味は伝わる言葉。
ケータイ。携帯電話の事だろうか。コミケやオリンピック。
あとは飛行機。ふむ。
携帯がどうこうの話がされているという事は、今から100年以上前。
平成から昭和の辺り。スマホが出てくる以前の話なのだろう。
「ケータイね。幸せな時代だわ。そんな絶頂期から異世界に、なんて」
「誘拐も良いとこじゃない。異世界召喚とは都合の良い事ねぇ」
博士がちくりと刺してくる。
まぁ本人の承諾なしに勝手に連れてきていた訳だから、それも一理ある事なのだけど。
「うう……。でゴワス」
「それは、申しわけありませんニャン……」
2人がばつ悪そうにうな垂れる。まぁまぁ、ここは抑えて抑えて。
「まぁあんた達に言ってもしょうがない事だけどね。ともかく召喚、ね」
「妙な風習があったもんだわ。っていうか」
「そんな「召喚」をしなければならない程、あんた達って弱いの?」
「うっ」
「あうあう……」
なんともクリティカルな事を……。そうだ。
そもそもなんで召喚なんてしてまでこちらの人間を呼び寄せるのか。
それが良く分からない。世界に危機が訪れたのなら。まぁ。
自分達でなんとかするべきではないのかな。
やっぱりそう思っちゃうな。
「実は、私達は過去魔族の奴隷種族だったのでゴザル」
「魔族の奴隷?」
「はい、しかしその危機を異世界の英雄に救われたのでゴワス」
「英雄は我らに戦う力と「社会」を築くために力を授けてくださったのでゴザル」
「社会。ね。それまで社会構造すらなかったのね」
「はい。およそ3000年前の事でゴワス」
「3000年。日本はまだ縄文時代だわね。っとすると大陸からの召喚だったのかしら」
「ローマ帝国とかその辺り? ふーん。中々興味深いわね」
3000年前から召喚を続けてきたのか。そんな昔からそんな事を続けていたら。
まぁ「召喚」という事に違和感を感じないのもしょうがない。
「それから我々は危機ある毎に召喚を……。それからこちらの世界の事情を知りながら」
「我々と「異世界」との交流は続いていたのでゴワス」
「勝手に召喚しといて交流もへったくれも無いわね」
「そ、そんな事始めて言われたでゴワス……。伝承では英雄様は喜んで協力してくれたと……」
「………………………………」
「都合の良い奴だけを選ぶ審美眼だけはあるみたいね。その召喚ってのは」
なんで俺の方を見るんです? ともかく彼らの事情はなんとなく分かった。
彼らは生まれた時から「召喚と英雄」という概念を持って生きていた。
その概念のなか歴史を紡ぎ、今まで暮らしてきたという事か。
異世界の事情。なんとなく分かった気がする。
「それで異世界召喚してなんとかしようって文化が生まれたと。まったく自分でなんとかなさいな」
「は、はぁ……。それは……。まったくでゴワスが」
「今回は闇の勢力が強大で、人間としての危機も重なり……」
「召喚に手を出した。っと。それで」
「英雄、をね。召喚出来なかった英雄」
「ふ――ん。まったくねぇ。なんで召喚出来なかったのかしらねぇ」
「あはははは。なんででしょうね――。あははは」
まったく。なんで召喚出来なかったのか。なんか原因あるのかなぁ。
まぁ。
なんとなく、分かるような気もするけど。
「それで」
「魔王を倒せって話だけど、その魔王ってのはどこに居るの?」
ああ、そうだ。そもそも魔王とは?
「それが、分からないのでゴザル」
分からない?
「分からないってどういう事?」
「はい、尋問した魔族がそう言っていただけで」
「ただ、魔王が魔族を率い、人類を滅ぼそうと反旗を翻したと。そう伝わっているのニャン」
「魔王城とか、そんなのがあるんじゃないのかい?」
「いえ。その魔王がどこに居るのかまったく謎なのニャン」
「そもそも拠点らしき拠点もなく。世界に魔物を放ち、魔獣を解き放ったうえで」
「拠点を設けて支配するとか、そんな事がないのですニャン」
「つまりゲリラ的に攻撃をし、相手の戦力を削っている……」
「ゲリラ。えっとぉ」
「奇襲という意味よ。ともかく魔族の戦法が分かったわ」
「う――ん。占領地を設けないと言う事は、魔族はそんなに数が多くないんですかね」
そういえば魔王軍幹部だと言って出てきた子達。どれも単独で子供だった。
つまりそんな子達を幹部として迎えなければいけないほど。
魔族という存在は強い勢力ではなかったという事なのだろうか。
アザゼル君が言っていた言葉。闇の勢力だけが自分達の手を握ったと。
つまりそれだけ勢力が減退していて……。
結果、同じく勢力が落ちていたマリスと結びついた……。
しかしそもそもマリスはどうやって異世界に。
なんだか色々と考えなければいけない事が多い。
ともかく異世界と俺達の世界。複雑な事情が絡んでいるという事か。
「今まで「英雄」という特定の個人との付き合いだった「異世界」との関係」
「それが表立ち、召喚失敗という状況の中重なり合う……」
「なんともはや」
「でもこちらの世界がこんな状況な以上、今後召喚なんて安易な事は使えないでしょうね」
「はい、ですニャン……」
「もう一方的に助けるだけの関係は終わった」
「互いの事情がこれほどまで重なる以上」
「同盟。としての役割」
「しっかり果たしてもらうわよ」
同盟、か。
「助け合うだけの関係は終わり……。分かりました」
「でも」
「それなら私達は何をしてこちらの世界に報いれば良いのでゴザルか?」
「それは」
「色々」
「色々あると、あるわ」
色々と。そう。
たぶん。
色々と、あるだろう。
ニャ――ン。
うん、もう。アレだ。
猫。可愛いなぁ。
もしかしたら……。
犬とかも、居る?




