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魔王に囚われて異世界から英雄(ヒーロー)を召喚した王女様。間違えてゲームのキャラを召喚してしまった。  作者: 宮森 英二
異世界と現実

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第109話 異世界と現実と。ついでに猫さんこんにちわ。

 うん。


 うん。

 うん……。


 う――――ん。


 うん。


 居る。


 「……………………」

 「えっとぉ」


 そこに、普通に居た。

 それは異世界に居た筈の。


 「ゴワスゥ……」

 「ニャーン」


 アニエスさんとコリーヌちゃん。

 2人の女の子がその場に居た。それはゲームでしか会えないと思っていた2人。

 それが目の前に居て……。

 

 現実に「転生」していた。クローンという技術を用いて、2人を現実社会に「召喚」したのだ。

 なんか。なんか。


 なんか、凄い……。


「私も驚いたけど、普通に複製出来たわ。ゲームのキャラだと思ってたんだけどね」

 

 現代服に身を包んだ2人。そしてそこに現代の技術で作り出されたミクスレイの彼女が加わる。

 異世界から召喚されそうになっていたのに今は異世界から人物を召喚している。

 そんな「妙」な状況を改めて考える。目の前に2人は確実にそこに居て……。


 「ともかく」

 「改めて情報交換と行きましょう」




 ◇ ◇ ◇



 「ど、どうも……。改めてまして。私はアニエスで申すでゴワス。騎士、でゴワス」

 「わ、私はその妹のコリーヌ。ま、魔術師。だニャン」


 「俺はニート。ニートだよ」

 「私は三日月春美。こいつの雇い主で博士よ」


 「は。はぁ……」

 「ははは……」


 改めて互いに自己紹介をする。こうして面と向かって話したのは初めてだ。

 これからずっとゲーム画面の中に居ると思っていた彼女達。

 それが眼前、しかも自分の家の中で会う事が出来るなんて。


 これが現代技術の奇跡。異世界人を現代社会に招いてしまった。

 

 1人はアニエスさん。キツめない印象を受けるキリリとした金髪の美人さん。

 髪型はショートボブと言ったところか。彼女が現代服を着こみ、その場に溶け込んでいる。

 その姿はかつての西洋諸国の女性を思わせる。


 現代の社会にそういった面影の女性は居ない。なぜなら滅んでしまったから。

 かつて地球脱出を決意しその為にノアという宇宙船を多数作ったが、それは全てマリスに撃墜された。


 今ある人類はその宇宙船の生き残り。内部に日本人の科学者などを乗せた脱出船。

 その元乗組員しか人類は残っていないのだ。


 だから。彼女みたいな人は現代社会には存在しなくて……。

 

 「滅んだ筈のコーカソイド(白人)よ。まさかこんな形で複製できるなんてね」

 

 博士がその場に座っているアニエスさんの肩を叩く。そこに居る事を確認するかのように。

 何度も何度も。


 「あ、あの春美様。い、痛いでゴワス」

 「痛覚も通ってるのね。、まぁ当然っちゃ当然だけど」


 「ニャーン。まさか異世界に召喚されるなんて……。思ってなかったでニャン」

 

 姉であるアニエスさんの横でチョコンと座っているのがコリンヌちゃん。改めコリーヌちゃん。

 彼女はアニエスさんと違い青髪で、その髪色だけ見れば春美博士と同じ人種かと思われるが。

 やはり日本人を元にした博士と彼女では作りが違う。


 しかし青髪とは。異世界人には普通なのだろうか。

 そこの猫も青いし……。異世界では青色の生物はわりと普通なのかも?


 「ここが異世界、ニャンか……」

 

 彼女が興味深げに俺の家を見渡す。はいごめんなさいボロ家で。

 とほほ――。あちらの世界で皇帝の息子なんて名乗ってたから。この現状はとても恥ずかしい。

 なんかみすぼらしくてごめんね――。


 「ここはこんなんだけど元は御所っていう宮殿があった場所よ。元は一等地だったんだから」

 「そ、そうなのでゴワスか?」


 博士も同じ事を思っていたらしくフォローを入れてくれた。

 彼女もあの会談には責任を感じていたらしい。かなり大きい事言っていたしね。


 「20年前はここにも大きなみやこがあって沢山の人が住んでたわ」

 「今は新興住宅地になって、人もまばらだけど」


 「林と空き地しかないみたいですけど……。ニャン」


 「戦争でね。踏み潰されたから。(たいら)なのよ。どこも」

 「たいら、でゴワスか?」


 「そう、昔は山とかいっぱいあったんだけどね。でも今は人工的な山しかない」

 「それはなぜなのですニャン?」


 「怪獣に踏み潰されたから。あんた達のところで言う魔獣よ」

 「魔獣に……。でゴワスか」


 あ。あらあら。辛気臭い話を始めた。いや、でも必要な事か。

 本当はもっと楽しい話を展開したかったけど、現状お互いの世界は立て込んでいる。


 ならばそんな事を言っている暇はないだろう。


 「私達の世界にはマリスという敵が居た。その敵は既にここでは倒されていないけど」

 「恐らくあんた達の世界に逃れ、勢力を拡大してる」

 「魔獣」の存在といい「闇の勢力」にマリスが関係していると思うわ」


 「マリス……。それが闇の勢力の正体、でゴワスか?」

 「私達はそう考えるわ。あんた達の世界の魔獣。アレがいつ頃から現れたの?」


 「ここ20年ぐらいでゴワスか。魔族に使役され徐々に数を増やしたのでゴワス」

 「20年……。こっちの世界でマリスが消えて20年だから、ぴったり合うわね……」


 「つまりそちらの敵がこちらに逃れ、魔族と結託し勢力拡大を図っている」

 「そういう事なのでゴワスか?」


 「まだまだ仮定だけどね。現在の状況を考えればあり得る話だわ」

 「こちらの世界でまた敵が攻めてきたという話ニャンけど。それは」


 「マリスね。まぁ、なんとか退治出来たわ」

 「英雄が」


 「倒してくれたの」


 「英雄?」


 英雄。その言葉を聞いて2人がこちらを向く。俺は思わずその視線を避けそっぽを向いた。

 む……。こ、これは悪手か? で、でも俺関係ないし……。ふんふんふ~ん。


 「えっとぉ……。ニャンニャン」

 「ゴ、ゴワゴワ。ゴワス」


 それが気まずかったのか。彼女達は与えられた口調で誤魔化した。

 

 「アンノウン・ゼロ。かつて銀河に勢力を誇るマリスを」

 「たった1人で討ち果たしたこの宇宙に住む生命全ての英雄よ」


 「う、宇宙。でゴワスか?」

 「そう。マリスは宇宙規模の敵だった。宇宙を探索し、知的生命体を探し」


 「そうして蹂躙し、痛めつけて拷問して」

 「彼らはそれを「相互理解」と呼んでいたわ」


 「痛めつける事が相互理解ニャンか?」


 「そう。彼らは圧倒的優位性の上で相手を痛めつけ殺す事が相互理解だと思っている」

 「狂気的な存在だった」


 「痛めつける事が相互理解……でゴワスか」


 「そうして宇宙の生命を壊して楽しんできた」

 「いや、彼らからすればそれは「救い」だったのでしょうけど」


 「殺す事が、救いなのニャンか?」

 「どういう理屈かは分からないけどね。ともかく私達はそのマリスと接触した」


 「最初は、小さな怪獣が数体。それからどんどん数が増えて行って……」

 「奴等はね。戦力を小出しにするの」

 「そうして相手に態勢を整えさせながらじわりじわりとマリス本体を上陸させる」

 「最初はクラスの低い弱いマリス。それが徐々に大きくなって」


 「最終的にマリスの本当の規模を理解した頃には人類は圧倒的不利に立たされていたわ」


 「沢山居た人類は残酷なやり方で殺され続け……」

 「人々の希望を奪い、人が嫌がるあらゆる事を試しながらマリスは私達を蹂躙した」

 「人口は減り続け最後の希望として故郷を脱出した人々もマリスは皆殺しにした」


 「私達は絶望の帰路に立たされた……」


 「でも、今生きているでゴワス」

 「それを救ったのが英雄」


 

 「アンノウン・ゼロ」

 

 

 「アンノウン・ゼロ……。それはどういった存在なんでゴワスか?」

 「宇宙最強の戦士よ。たった1人で銀河規模に軍団を展開するマリスを打ち滅ぼした」


 「ど、どのくらいの数を……」


 「兆。京。垓。天文学的な数の怪獣。マリスの尖兵を次々と撃破し、私達人類を救った」

 「彼がマリスを撃破した事で知的生命体は今後奴等に襲われる事はなくなったわ」


 「私達は救われた。80億居た人口は30万人にまで減ってしまったけど。人類は人間は」

 「かろうじて生き残ったのよ」


 「そこまでの、英雄……。で、ゴワス、か」


 「英雄を超え「神」の域にまで達していたとも言えるわ。ともかく私達は英雄に救われた」

 「それから、その英雄はどこに行ったのでゴワス?」


 「さぁ。英雄はどこかへ行ってしまった」

 「探そうとはしなかったニャンか?」


 「探そうとはしなかったわ」

 「それはなぜでゴワスか?」


 「強すぎるからよ」

 「強すぎる?」


 「考えてもみなさい。空を覆いつくすほどの敵を倒すような存在よ」

 「そんな存在を」



 「国家の手中に置けると思う?」


 「それは……」


 「だから英雄に関して人々は口を瞑んだ。管理できない英雄」

 「それをわざわざ引っ張り出して表に出す事はない。英雄も出てこなかった」


 「でも、その英雄が再び現れ、マリスを倒したニャンよね?」

 「そう、20年経って。英雄は。アンノウン・ゼロは私達の近くに居た」


 「20年。その強大な力を隠し秘めたまま、何事もなく社会の中に溶け込んでいたの」

 「まさに真の英雄」

 

 「英雄の中の英雄だわ。代わりになれる存在なんて何処にもいない」

 「居なくちゃ困る。居なくなったら私達が滅んでしまうわ」


 「かつて生き残った人類30万人の中にその英雄が居た。そしてあんた達がニートと呼ぶこいつは」

 「その「かつて」の中の1人だった。ならこいつがそうだった可能性も捨てきれない」


 「持って行けない……。英雄、だった」

 「そう。持って行かれたら困る。持ち出し不要の大英雄」


 「それがアンノウン・ゼロ。私達の救世主だわ」


 博士が説明を言い終えてそれから皆が俺の方を向く。

 俺はそっぽを向く。


 そっぽを……。


 いやだから。

 

 そっぽ向いちゃ駄目だってっ!! 怪しまれるからっ!!


 沈黙が流れる。なんか、気まずい沈黙が。

 前もこんな事あったよなぁ。そうだ最初彼女達を合わせた時もこんな感じで気まずかった。


 たはは。えっとぉ、ここは。

 アレだ。


 「ともかくお腹空いたよね」

 「一緒に」


 「ご飯でも食べよっかっ!!」


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