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魔王に囚われて異世界から英雄(ヒーロー)を召喚した王女様。間違えてゲームのキャラを召喚してしまった。  作者: 宮森 英二
異世界と現実

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第107話 どんな事があっても朝は来る。さて、何食べますか?

 

 「っていうかあんたの家なんにもないわねーっ!! ここ本当に人が住む場所なのっ!?」

 「昔はかなりの好立地な場所だったんですけどねー」


 「昔今関係なくそもそもボロ屋なのよっ!!」

 「そうですか? こじんまりとして俺のお気に入りですよう?」


 「こんな所でよくもまぁ暮らせたもんねっ!!」

 「あはははは、あ、ご飯炊けましたよ」


 あれから一晩経って、今は朝。異世界から持ち出した布団に博士を寝かせ。

 「り」の字で博士と一夜を共にした。

 なんだかそんな風に言うとエッチな響きだが、ただ布団で寝ただけだ。

 

 「ゲームの中に入れてたアイテム……。見た感じ大丈夫そうですけどね」

 

 「これで腐らないとかだったら便利だけどね。期限切れてそうなのは寝かせておきなさい」

 「あとで成分分析するわ。それで決着する」


 ゲームの中から缶詰などの食べ物を取り出して一緒に食べる。

 味も匂いも変わらず美味しく頂けた。

 ゲームの中のアイテムボックスには避難民の人達に食べて貰おうと入れて置いた弁当などもある。

 だが色々あってそれを届けるまでには至れなかった。

 

 その中には賞味期限の短い弁当などもある。

 博士はそういった代物を「寝かせ」て様子を探ってみるそうだ。


 確かに腐ってない。ってなったら色々便利そうではある。

 あちらの世界の事情はまだ殆ど分かってない。

 こういった小さな実験で少しずつでもあちらの事が分かれば良いんだけど。


 「ご飯おかわり」

 「あらおかわりですか? あらー。朝から食欲があって良いですねぇ」

 

 「うるさいわね。色々と立て込んでたからろくに何も食べてなかったの」

 「だからしょうがないでしょ」


 「あら。確かにそうですか。まぁ色々大変そうですものね――。今」

 「何を呑気な……。ったく、大変も大変。だい大変でしょっ!!」


 大大変か。ふふふ、変な言葉。でも確かに。


 「大変、でしょうね――」


 事件からもう既に2日目に経ったという事だ。

 テレビ局は今どこも機能してないだろう。ラジオもしかり。

 新聞は……。取ってないから分からないが。


 徐々に「変だな」と人々が気付きだす頃だろう。

 昨日、宮田さんの家族が「帰ってきた」事を考えれば。

 政府は既にロードを済ませ人々を家に帰している。

 ならば混乱が人づてに広まっていくのは明白だ。


 記憶が一部欠けた人々が100万人規模で発生するという事。

 政府は、その状況をどう取り繕うのだろうか。


 「謎の記憶障害を起こすウイルス……」

 「はい?」


 「政府はそれで乗り切るつもりよ。あくまで「何も起こってない」そうするつもり」

 「何も起きてない。ですか」


 「勿論気付く人は気づくでしょう。でも表向きはそれで通す予定みたいね」

 「それで、大丈夫でしょか」


 「マリスの存在を公にする事は出来ない。アレは色んな人の精神的トラウマを増幅させるわ」

 「それでなくても今もPTSDで苦しむ人が居るんだから」


 「その原因たる存在がまた出戻ってきた。なんて伝えたら……」


 大混乱になる……。20年たってようやく社会が落ち着いて来たのに。

 情報の積極的開示が必ずしも良い方に働くとは言えない。

 それは今の状況になるまで散々経験し、分かった事だ。


 マリスがまた来た。その言葉だけで社会は大きく混乱する。

 処置を受け全てを忘れた人でも、その言葉で全てを思い出し精神錯乱を起こす可能性だってある。

 大きな暴動や市民の逃散なども発生するかもしれない。


 情報開示は劇薬だ。それも毒しかない方の。

 ならば「秘匿」する事もやぶさかではないだろう。

 

 今の俺達には情報開示を耐えうるだけの社会的体力がない。

 ならば「黙っている」事もしっかりとした手段なのだ。


 「しかし100万人規模のロードとは。マリス襲撃、これほどとは……」

 「かなり多いですけど、大丈夫なんですかね」


 「ロードの為の機械は各地区にある。それを総動員してなんとかね」

 「そうですか……」


 ロード。まぁ有体に言えば「クローン」である。

 今の社会を維持する為、今回の事のような事に限り人間を複製し社会復帰させる。

 総人口千万未満の人類に残された苦肉の復興策だ。


 勿論一般の人々には秘匿され一部の人間以外でそれを知る者は少ない。

 死んでもすぐ生き返れる。なんて知れたら……。

 まぁ、社会は混乱するだろう。


 マリスとの戦争の中で生み出された新技術。

 今の世はそういった技術を時に利用し、時に秘匿しながら回っている。

 未知の技術を人々に受け入れて、使ってもらう為の社会的余裕がない。


 それが今の俺達の世界だ。ピーク時80億。現在400万。

 そんな急降下を経験した俺達はそう簡単に前へ進めはしない。


 少しずつ。少しずつ進んでいくしかないのだ。

 

 「随分神妙な顔ね」

 「あら」


 「何も考えてなようで、結構色々考えてるわよねあんた」

 「ふふふ。まぁ、もう結構な年ですから」


 「その割に若い……。いや」

 「はい?」


 「なんでもない。ともかく」

 「これ、どうにかしなきゃね」


 これ。と言って彼女が見た方向には2つの注射器。

 アニエスさんとコリーヌちゃんから抽出した血液だ。


 「他の連中の血液も後で抜いとかないとね。腐ってしまう前に」

 「その分の注射器ありますか?」


 「用意するわよ。他人を見捨てる事は強さじゃない」

 「でしょ? アンデールに居た被害者全員分、用意してあげるわよ」


 「ありがとうございます。博士」

 「ふん、まぁ宿の礼もあるし……。しゃあなしって事でねっ!!」


 「はいっ!! しゃあなしで頑張ってください、博士っ!!」

 「改めて言われるとなんか嫌な言葉ね……」


 あははっ!! どこもかしこも問題ばかり。

 それでも、小さな希望が明日を繋いでくれる。


 まだまだきっと大変な事は多いだろうけど。

 でも今は。


 笑って、過ごしていたい。


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