第106話 ゲームと現実の狭間……。ともかく画像が荒いのがゲームだっ!!
「敵は居ない、か」
アンデールの外に出て、焚火の火を消した。
状況を考えて、もしかした待ち伏せでもあるかと思ってウォーカーに乗って外に出た。
しかし外には誰も居なかった。
要塞の跡のような物はあったが、しかし死体はない。
血痕はある……。そこが少しおかしいと思ったが。ともかく、待ち伏せはないようだった。
「砦なんて作って……。なんでこんな目立つ事したのかしら」
「街道のすぐ横ですからね。あのまま火の中に収まってくれていたら……」
どうやら敵の襲撃は表の要塞を拡充した事も要因がありそうだ。
俺が焚火を置いた場所は街道の端。
急いでいたからかなり目立つ場所での焚火となった。
それも要因だったろう。
だからこそ人々は焚火の周りを要塞化し、事態を乗り越えようとしたのか。
俺という同盟相手を得て、恐らくここを拠点にして攻勢に出ようと……。
「こんな平地の森の中で……。城ってのはもっと山とかに建てるもんじゃない?」
「焚火の中にいくらでも人を入れておける。その利便性を重視したのでは」
建設途中だった要塞が無惨に転がる。
「怪獣」の脅威もあるのにこんな所に要塞を創ろうとしたのは。
恐らく俺のウォーカーを当てにした面もあるだろう。
現実の世界にかまけ過ぎた。もうちょっとあちらの人々と話し合う事が出来ていたら。
「焚火の位置を変えるだけでもだいぶ変わりましたよね……」
「そうね。ここはあまりにも無防備だった。焚火。重要な要素だわ」
「他にも焚火を作った場所があるんでしょう? ともかくそれを潰しに行きましょう」
「敵も味方もどっちも平等に中に入る事が出来る。ウイルスガードがないパソコンみたいなもん」
「実に危険だわ。対策を考えとかないとね」
あら頼もしい。流石天才幼女博士だ。でも、聞いてなかったんだけど。
「博士」
「うん、なに英雄様」
あら英雄様。まぁここではそれで良いか。妖精だしね。
「博士は、なぜ俺の手伝いをしてくれるんです? お仕事は大丈夫なんですか?」
ともかく、聞いてみる。妙な装置を作ったりして俺に協力してくれる。
「合理性」を求める博士にしては、随分非合理的じゃないかな。
「貴方がそれを聞くなら、私も貴方に聞かなきゃならない事が出来る訳だけど?」
あ。はい……。
と、ともかく博士は協力してくれるっ!! それで良いなっ!!
うんうんっ!!
「さ、て」
「じゃあ行きましょうか。英雄さま」
ああ、うん。そうだね。
まずは、焚火を片付けないとな。
◇ ◇ ◇
「あれ、ここの焚火だけ消せない」
あれから点けた焚火を消していって、最後の焚火。それは最初の「ボス」を倒した場所にあった物。
剣を当て、あっさり倒したボスが居た場所の焚火。
そこにあった焚火だけはどうあっても消す事が出来なかった。
「どうやらここだけ「ゲーム的」な都合が働いているのかもしれないわね」
「ゲーム的な都合、ですか?」
「そう。しかしこりゃまたボロボロな場所にあるわね」
「そうですねぇ」
消さない焚火がある場所。そこは大規模な廃墟がある場所にあった。
かつて何かの集落……。いや、規模は街クラスの物だろう巨大廃墟群。
石造りのその廃墟はツタで覆われボロボロだ。
見た感じゲーム的質感は感じない。ならこの世界由来の場所と考えて良いだろう。
「ここは一体どういう所なの?」
「最初のボスを倒した所です。それから焚火が現れまして」
「なるほどね。つまりゲーム的に現れた焚火。だから消せなかったって事」
ああ、そうか。なるほど。この焚火だけは自分で点けていない。
この焚火だけはボス討伐後に勝手に現れた物だ。
そう考えみれば確かに画質が荒い。やはりゲーム的な意味で消す事が出来ないのか。
「あんたの現状は元のゲームに由来している。なるほどね。あんたが召喚出来なかったから」
「結果的にあんたがやっていたゲームキャラを召喚してしまった」
「そういう事なんでしょうね」
まぁ、それは俺も思ってる。そう言う状況になってしまったから。
「ぞっとする……」
うん?
「もし、そのまま召喚が成功したってなった時の事を考えると……」
「ゾッとするわ……」
「心底ね……」
うん。
うん……。
「ともかくあんたはこの世界に召喚されなかった。」
「この世界にとってそれは不本意な結果だろうけど、結果この焚火が出来た」
「ともかくこれを利用して「何をするか」が今後の行動の肝ね」
「そうですね」
「この無防備な焚火は……。まぁ明日なんとかするわ」
「明日。博士、明日のご予定は?」
そうだ。博士はウォーカーの開発者として忙しい立場になった筈。
なのになぜこんな俺の「ゲーム」に付き合ってくれるのだろう。
それが疑問だった。博士はなぜ。
「ウォーカーの技術情報は政府に全て譲渡したわ」
「え?」
技術を政府に譲渡。どういう事だろうか。
「つまりウォーカーは私の手から離れたって事。事があまりにも大きくなり過ぎた」
「誰かが変に大活躍なんてしたから、虚像だけが大きくなって色々大変なの」
「だから特許料だけ貰う形で、他権利を全て譲渡した」
権利を譲渡。しかし博士はウォーカーを完成させる為に全力で……。
「研究所も首になったから、今の私はあんたと同じ」
「ニートって訳」
あら。
あら……。
「博士もニートになっちゃいましたか」
「残念ながらね。ちなみに研究所が無いから住む家もないわ」
「あらま」
「だから」
「誰か住まわせてくれると嬉しいんだけど」
「あら」
あら。
「どこかに優しい英雄様でも居ないかしら」
そういえば、アイテム欄に布団があった筈だ。毛布も一緒に。
「ねぇ博士」
「はい、なにかしら?」
「アイテム欄を現実で確認する方法って」
「考えてるんですか?」
「あら」
「勿論」
「考えてるわよ?」
「家主さん」
俺はそんな意地悪気に笑う妖精さんと。
静かに、その場で笑いあった。




