表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王に囚われて異世界から英雄(ヒーロー)を召喚した王女様。間違えてゲームのキャラを召喚してしまった。  作者: 宮森 英二
悲哀っ!! 正社員激闘編っ!!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
107/143

第104話 このお菓子美味しいよっ!! いつかレビューを聞かせてね


 「さぁ、相互理解を始めようか」

 「く、そ……」


 彼はもはや動かない。動けないのではない。

 動けないのだ。


 この場で他に逃げる場所などない。

 俺の空間。


 完全なる袋小路。


 彼はこちらを狩る為にやってきたのだろうが。

 だが今状況は完全に逆転。


 刈られるのは。


 「話を聞かせてもらうよ」


 彼だ。


 「誰が、きさま、なんかに……」


 既に俺の手中に収まった。名前は。


 「アザゼルくん」


 そう、彼の名前はアザゼルくん。

 とっても呼びやすい名前。


 なんだか覚えられそうだ。


 「アザゼルくん、だから言った筈だ」

 「状況が変われば被害者になるのは君だと」


 彼は武器である鎌を俺に奪われ、ナイフも失い。瞬間移動による戦術も通用しない。

 切り札だった「魔獣」も来ない。


 そうして打つ手を全て失い、今こうして己が前に屈している。

 彼はこちらの退路を奪うつもりで来たのだろうが。


 しかしそれは結果的に彼の退路を奪う形になってしまった。

 彼が自慢の瞬間移動で逃げようとも、この地には焚火しか逃げ場がない。

 そしてそれは俺が抑えている。


 だから彼は逃げられない。実力は離れている。

 彼は弱い。悪いが負ける気はしない。いや、そも彼が俺に勝つ事は出来ない。

 だって俺は何度でも復活出来るのだから。


 何度でも復活する癖に自分より強い。

 味方から話を聞き、俺の実力を図ったのだろうが。


 「退路は確保すべきだった。君に逃げ場はないよ」


 食いしばり、悔しそうな彼をする彼。

 勝負は決まった。一矢報いる行動をしても復活する俺には意味がない。


 彼は詰んでいる。随分お粗末な結果になったものだ。


 「君の話が聞きたい。魔獣とはなんだい?」

 「貴様に話すような事はない……」


 答えない。


 「どうやってここに入った」

 

 「ははは、馬鹿が。こいつ等要塞なんか作ってやがった。話だって丸聞こえだ」

 「だから潜入して、殺してやったのよ」


 答えてくれた。


 やっぱり良い子だ。


 「そうか。教えてくれてありがとう」

 「殺せ……。英雄さんよ」


 「だが覚えておけ。俺は」

 「マリスは」


 「ああ?」


 「君達に「魔獣」を与えた存在はそんなに良い物じゃない」

 「なに?」


 「あれは……。もっと邪悪で、危険な存在だ」

 「ああ?」


 「手を切る事を勧める。奴らに関わるな」


 彼への最大限の警告。「魔獣」という存在が彼ら由来で無いのだとしたら。

 恐らくそれはマリス由来。


 ならば。


 「闇はいずれ君達をも引きずり込もうとするだろう。奴等は君達が思うような」

 「んなこと」


 うん?


 「んなこたぁ、分かってるよ」


 なに?


 「奴は悪趣味な享楽主義者だ。んな事分かってる」

 「だが」


 「たとえそうでも、奴等は俺達に手を差し伸べた」

 「他に差し出された手なんかなかった」


 「奴等の性質なんだとっくに知ってるさ。だがな」

 「それでも、俺達には貴重な「同盟」相手だ」


 「ならばそれを利用する。奴等も俺達を利用する」

 「信用していなくても、利害があれば繋がりあう」


 「それが同盟ってもんだろ。英雄様」


 そうか?


 ああ、そうか。

 そうなのかもしれない。


 でも……。


 「奴等は危険だ。離れる事を勧める」


 俺はその言葉を吐き続ける。


 「それは貴様が決める事じゃない」


 それはそうだ。だけど。


 「それでも、言い続けるさ」


 「人間の言葉は聞かない。俺達は人間を滅ぼす」

 「それが君の答えなのかい?」


 「ああ、そうだ」

 「人間はくたばれ」


 「一匹残らず」


 「根絶やしにしてやるか」


 そうか。


 俺は一歩退き、鎌を下ろした。


 「なんだ? なんのつもりだ」


 彼が訝しむ。冷や汗まみれの顔をこちらに向け、乾いた口でこちらに吠える。


 「行きなさい。話を聞いてくれてありがとう」


 「な、に……?」

 

 「え、ちょっと」


 状況を見守っていた博士が口を開く。逃がすべきではない。

 博士の意見も分かる。しかし。


 「また話を聞けるかもしれない。君は素直で良い子だ」

 「質問に答えてくれた。俺と対話をしてくれた」


 「君を殺したくない。また会おう」

 「また、いらっしゃい」


 「は、なに……。この」


 合理的な判断ばかりが正しい訳じゃない。俺はそんなの好きじゃない。

 マリスとは違う。奴等と対話し、結果として。


 「どうしようもない」そう判断する事しか出来なかった存在。

 だが彼は違う。


 「余地」がある。ならば殺したくない。

 生物としての生存権を賭けた問題と「嗜好」では話が違う。


 彼をこの場で生かすべきと判断した。

 たとえまた向かってくるのだとしても。


 対話出来る相手を葬り去るべきではない。


 「なんだ、貴様。俺に情けをかけるつもりか……? 俺は貴様の仲間を皆殺しにしたんだが」

 「そうだね。もうしないでくれると嬉しいな」


 「…………………………」


 「は?」


 言うべき言葉を失い、短い言葉しか出せない。

 傲慢な言葉と映ったろうか。だが残念ながらこんな言葉しか言えない。


 「もうしないでくれ。滅ぼし合う未来など良い結果は生まない」

 「なにを。散々俺達の仲間を殺しておいて」


 「だからといってそれを返せば相手も返してくる」

 「どこかで誰かが止めないといけない」


 「そんな」


 そんな……?

 そんな事はもうやめるべきとでも?


 マリスを滅ぼそうとしている癖に。

 俺にそんな事言う資格があるのか……?


 「そんな殴り合いはどこかで止めないと……。いずれ」


 いずれ共倒れになる……。

 なら俺はマリスと話し合いをしなければならないのか?


 あんな連中と……?


 「きさま……。俺は」

 「俺は、必ず貴様を殺す……」


 彼が憎しみの感情を俺に向ける。

 ああ、それが憎しみであったなら、どんなに良いか……。

 

 「殺してやる……。そして人類を……」


 彼の心は闇に染まっている。

 だがその闇が自然な闇であれば、良いが。

 マリスが持つ。あの闇は……。


 「闇に気を付けて」

 「どうか呑まれないように」

 「あの力は決して良い物じゃあない」


 煮え切れず、そんな捨て台詞でしか吐けない。

 和解を叫ぼうにも、自分の目的も敵の殲滅。

 そんな自己欺瞞に気付き、言葉を吐けなくなる。


 それでも。


 「また会おう。次はもっと君達の事を聞かせてね」


 それでも、若者をこの手にかけるなんて嫌だ。

 彼に「20年後」があるのだとしたら。


 きっと、今とは違う顔を見せに来てくれる筈だから。


 「じゃあねアザゼルくん。あ、そうだ」

 「あ、ああ……?」


 俺はアイテムボックスを開き、そこから。

 

 「これあげる。美味しいよ」

 

 コンビニで買ったチョコレート菓子を手に持って彼に渡した。


 「は。ああ?」


 彼はその様子に戸惑ったようだが。なんか普通に取ってくれた。

 やっぱり良い子だっ!! うんうん。


 「美味しいよ。みんなで食べてね」


 30枚入りのアルファートというお菓子。とっても美味しい大好きだっ!!

 きっと彼の仲間も喜んでくれるに違いない。


 「じゃあまたね」


 「アザゼルくん」


 そうして彼を見送る。彼はなんとも言えない表情を見せながら。

 焚火に手を当て、そのまま静かに去っていった。


 それから。


 「さて、って訳でアザゼルくん行っちゃいましたね博士」


 その場に居るのは博士と俺だけになる。


 「…………………………」


 あら?


 「どうしました博士」

 「うん、ああ。いや」


 「別に……」

 「ただ」


 ただ?


 「ただ「理由」が分かったと思って」


 理由?

 理由ってなんだろうか。


 「理由ってなんですか博士」

 「こっちの話っ!! ともかく」


 「これ」

 「どうしましょうかね」


 「これ、ああ」


 敵が居なくなった後に残る物。


 「それ」


 そこにあるのは大勢の人々の死骸。敵が消えてもなお残るその有様。

 「それ」が広がる。もうあちらこちらに。


 「え――――っと」

 「これ」


 「なんとか出来ませんか?」


 なんとか。

 解決しようとした。

 

 って訳で博士。


 

 なんとかして――っ!!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ