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魔王に囚われて異世界から英雄(ヒーロー)を召喚した王女様。間違えてゲームのキャラを召喚してしまった。  作者: 宮森 英二
悲哀っ!! 正社員激闘編っ!!

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第101話 日常への回帰。ちょっと草でもむしってく?


 「はぁはぁはぁ……」

 「あ、ああ……」


 「な、なんとか……。なんとか帰ってこれましたねニートさん」

 「あはは、宮田さん怒ってたねぇ」


 「お家、壊しちゃいましたしね……。ま、まぁ政府の補填があると思いますが」


 「しっかり連絡しないとね」

 「悪い、お化けに襲われたって」


 「あっ」

 「はい……」


 夕方。

 智代ちゃん、彼女とは色々話すべき事があった筈なんだけど。

 宮田さんが来て、毒気抜かれちゃったな。


 ふふふ。

 宮田。


 宮田夏美ちゃん。昔はあんなに小さかったのに随分大きくなったもんだ。

 昔からよく死にそうになってたなぁ。ほんと相変わらず。

 そんな彼女がもう一児の母とは……。


 おお。時代ってのは移り変わっていくもの。

 時の流れってのは世知辛いですなぁ。とほほ。


 「あ、あのニートさん」

 「うん? なんだい智代ちゃん」

 

 「えっと……」

 「まだ」


 うん?


 「まだ、草残ってますよね?」

 

 あら。


 「一緒にむしってくれるかい?」

 「あ、ああっ!! は、はいっ!!」


 「一緒にむしりましょうっ!!」


 たぶん俺に何か言いたい事が会ってきてくれたのだろう。

 彼女と一緒に草むしりするとしよう。


 本当はもう日が暮れてきてるし、家に帰すべきなんだろうけど。

 でも。


 こういう時、日常のなんでもない日々に触れるのが。

 結構、大事だったりするんだよなぁ。


 「やろうか」

 「はいっ!!」


 共に草をむしる。もう、ちょっとしか残ってないけど。

 だから。


 ちょっとずつむしる。むしって、むしりながら。


 「あの、ニートさん」

 「あら、なんだい?」


 なにかしらの会話が始まる。

 部外者という存在が居なくなって初めて「言い難い」事も言えるようになる。

 宮田さんが居た頃よりちょっと空気が重い。

 ふふふ、そう考えると彼女は清涼剤だったなぁ。


 お家、直る良いな。これからどうするんだろ。

 どこかホテルに泊まるのかな? ノア地区のホテル……。

 いや無理か。あそこはきっと今大清掃中だ。


 昔みたいに。


 「あのニートさん、ニートさんはウォーカーの」


 うん?


 「あ、いえ……」

 「な、なんでもない、です……」


 ウォーカーか。そうだなぁ、俺はウォーカーのテストパイロットだった。

 でも今は。


 「あの仕事はもう辞めたんだよぉ」

 「ええっ!?」


 「そういう事」にした。


 敵がまだ居ると分かった以上、仕事を続けていく訳にはいかない。

 奴等は俺の名前も知っている。


 今まで通り、あまり他者に名を名乗らず。

 「ニート」として過ごしていく事が一番良い選択だろうと思える。

 

 これ以上知り合いも増やせない。

 他者との関係が増えれば正体がバレる可能性も上がる。

 アンノウンの存在がバレる事は。


 誰にとっても、好ましい結果にはならないと思う。

 

 今まで通り。


 ニートとして過ごすさ。

 仕事は辞めた。

 

 未練が無いと言えば嘘になるけど。でもこれが一番リスク少ないんだよなぁ。

 とほほ――。


 第二の人生、やってきたかぁ? なんてはしゃいでたのに。

 残念残念なのだ。


 「しごと……。え、テストパイロット辞めてたんですかっ!?」


 「まぁ、ちょっと操作感のテストをしたというか……」

 「そのぉ」


 「そうだね。もう辞めてた」

 「辞めてたよぉ。あんまり合わなかったかな」


 春美博士との関係は……。ちょっと未練あるけど。

 でも彼女は賢い。付き合う事でバレる可能性も上がる。


 だからこれ以上会わない方が良いだろう。

 彼女が作ったウォーカーは次世代の戦力になれるだけのポテンシャルを持つ。


 ならばあれを量産して超兵クラスの戦力を増やせれば。

 もっと「後片付け」も上手く行く。

 そうすればもっと救える人も出てくるだろう。


 政府もきっと本腰を上げてウォーカーの量産に動く筈だ。

 それなら。


 もう俺の出る幕は無いよなぁ。


 「ああ、辞めてたんだ……。そ、そっかぁ。そっかぁ」

 「あははっ!! あ――なんだっ!!」


 「あ――――――――っ!!」


 うん? あら智代ちゃん。どうしたんだろ。


 「あ。ああ、えっと……」

 「そ、そそそ。そうですかぁ。や、辞めてたんですね」


 「あはは、まぁあまり合わなかったかな」


 「そ、そうですよねっ!!」

 「温和なニートさんが、そんな、そんな……」



 私の仕事を奪うなんて事をする訳が。



 

 「うん?」

 「どうしたの? 智代ちゃん」


 「ああ、いえなんでもありません」

 「そうかい? なら良いんだけど」


 なんだろう? ちょっと顔が険しかったな。

 まぁ大きな戦闘があった後だ。色々考えちゃうんだろうなぁ。


 「あの、ニートさん……」

 「あら、なんだい?」


 「ニートさんは、今起きてる事をご存じですか?」


 あら。まぁ、うん。


 「マリスが攻めてきたんだね」


 俺は覚えてる。そういう設定だ。なら良いだろう。


 「マリス……。あれが」

 「どこがやられた?」


 「ノア地区です……」

 「どれくらい生き残ったかな」


 「公式には、2人と」

 「そう言うって事は、他にも居るんだね」


 「はい、ですが。なぜか2人と……」


 何らかの工作があったか。

 やはり「かつて」の人材が指揮を執っている。

 若い人は……。追いやられてるだろうなぁ。


 「ともかく政府の動きが早くて……。あれこれ急に決めてる感じで」


 「ノウハウ」があるから。嫌なノウハウだけど。


 「大人が」

 「大人は、みんなのんびりしてるし、昔に会った事でも、そんなでもないのかなって」


 「実は、そう思ってた節がありました」

 「でも……」


 「アレは……」


 アレは。まぁね……。


 「ニートさんは」


 「アレを生き残ったんですね」

 「運が良かっただけだよ」


 「ニートさんも」


 「戦闘のご経験はあるんですか?」

 「うん?」


 「ああ」

 「まぁ」


 「ないよ、何も」


 「そう、ですか……」

 「こんな性格だからね。臆病なんだ」


 「それでも生き延びた……」


 「マリス。人類を9割殺した敵」

 「あれほど、とは……」


 「もう居なくなった?」


 「…………はい」

 「アンノウンが、倒しました」


 「でもノア地区を救ったのは君達だろう?」

 「え?」


 「ありがとう智代ちゃん。皆を助けてくれて」

 「あ…………」


 「う……」


 あら。


 泣いちゃった。


 草、もうむしり終えちゃったなぁ。


 「学生、復帰出来そう?」

 「分かりません。でも予備役として組み込まれました」


 「そっかぁ……」

 「でも」


 「なんだい?」

 「でも、私は学生に戻るつもりなんてありません」


 あら。


 「私が、私が守らないと……。今の世界が無くなってしまう」

 「私は、それが嫌です」


 「そっか……」


 この感じ。ああ、昔はこんな子沢山居たなぁ。

 とほほ、この雰囲気。嫌いなのよねぇ。


 「だから、私は戦いますっ!! この世界と」

 「この世界、と……」


 

 貴方を守るために。


 


 「……………………」

 「どうしたの?」

 

 「いえ……」


 「えっと」

 「その」


 「私は……」




 私と結婚してください。




 「その……」

 「また」


 「はい?」


 「また草むしり手伝ってくれるかい?」


 「あ」

 「は」


 「はいっ!!」

 「いつでも」


 「いつでも手伝いますっ!!」


 うん。


 日常に戻りたかったらいつでも来なさいな。

 俺はここに居る。

 

 全部終わるまで。

 ここを離れないぞっ!! おうおうっ!!



 ◇ ◇ ◇

 


 「それじゃあ智代ちゃん。草むしりありがとうね」

 「はい、ニートさんも。お元気で」


 すっかり日が暮れてしまって、彼女を帰す。

 駅まで送ってあげようかと思ったけど。


 ここで帰すのが、きっと良いんだと思う。

 なんとなくそう思った。


 俺は彼女に手を振りながら彼女を見送る。

 次来た時はしっかりご馳走出来る物を用意しないと。


 あ、そうだ。畑でも始めてみるかな。食費の節約を兼ねて。

 プチ農家って事にしてレイジさん宅に野菜とかあげられたら多少はニート感薄まるんじゃない?

 おおっ!! それが良いなっ!! よし自給自足の農家生活を始めようじゃないかっ!!


 たかしくんを安心させる為にも農家転身っ!!

 その合間に異世界を探索して行ってマリス撃滅をっ!!


 異世界。あれ何か忘れてるような。


 あっ。


 テレビ無いんだった……。


 ぐぉおおおおおおおおおっ!! 肝心要のぉおおおおおおっ!!

 そうだっ!! テレビがないんだったっ!! なんかまったりしすぎて忘れてたっ!!


 あわわわわ。どうしよう。

 

 テレビがないっ!!

 今現在も世界からテレビが抹消されようとしているっ!!


 うぉおおおおっ!! ヤバイっ!! 草むしりなんてしてる暇なかったっ!!

 今すぐテレビを回収に向かわねばぁあああああっ!!


 「やっと一人になったわね」


 うん?


 「やぁ、怪我の具合のどうかしら?」

 「ニ・イ・ト。さん」


 あら。


 「春美博士」

 「どうも」


 

 「御機嫌よう」


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