第十三話 罪人、契約書を「文書偽造」で元どおりにする?
ほとんど眠れなかった。
目を閉じるたび、昨夜見た契約書が浮かんでくる。
カイルの契約。
薬草店の契約。
それ以外にも、封を開いては戻すうちに見つけた、いくつもの改変された契約書。
どうしてあんなことをしているのか、そこまではわからない。でも、カイルも薬草店のお爺さんたちも、少なくとも自分たちが結んだ契約について嘘をついてはいなかった。
隣のベッドを見ると、ユラはもう起きていた。
「おはよう」
「おはよう」
「早いね」
「ユウト、ずっと動いてた」
「……ごめん」
寝返りばかり打っていたらしい。
窓の外はもう明るい。
今日、薬草店にはホープスが来る。商業組合の執行官も来る。
そして、昨日僕が触った二通の契約書も。
「行こうか」
「逃げる?」
「まだ」
「まだ?」
「その前に、ちょっとだけやることがあるから」
ユラは少し考えた。
「怒られること?」
「……たぶん」
「そっか」
最近、こういうことだけ妙に察しがよくなっている。
朝食を済ませ、荷物は全部持って宿を出た。
女将さんには今日で出ると伝えてある。
「もう行くのかい?」
「はい」
「慌ただしいねえ」
「ちょっと事情が」
「昨日から事情だらけだね、あんた」
何も言い返せなかった。
何が起きても、そのまま町を出られるようにしておく。
昨夜から、そう決めていた。
薬草店へ近づくにつれて、人が増えてきた。
店の前にはすでに小さな人だかりができている。中央には昨日と同じ上等な服を着たホープスと、バルガ商会の職員が二人。
その向かいには、胸元に金属の札をつけ、革鞄を持った男が立っている。
たぶん、商業組合の執行官だ。
店先には老夫婦とミナもいた。
「間に合った……」
小さく息を吐いたところで、後ろから呼ばれた。
「ユウト!」
振り返ると、カイルが走ってくる。
「カイルさん?」
「宿のおばさんから聞いた。ここの店、今日取られるんだって?」
「はい」
「俺も今日なんだよ」
「え?」
カイルが顔をしかめた。
「契約期限が今日までなんだ。前金の残りを返せなきゃ、専属契約を半年延長するって」
「まだ残ってるんですか?」
「残るんだよ。納品するたびに四割も取られてたら」
元の契約なら、素材を相場の八割でバルガへ納める代わりに、前金と装備一式を貸してもらえる。普通に使って傷んだ装備の整備費も商会側が持つ。
それなら、新人にも商会にも得がある。
でも、カイルの今の契約には、買い取り代金からさらに四割を「点検・維持費」として取る条項が加えられていた。
しかも、その四割は前金の返済にはならない。
手元にお金が残らなければ、前金を返し切るのも難しくなる。
「契約書は?」
「向こうが持ってる。今日が最終通告だから、原本も持ってきてるはずだ」
それなら。
二通ともここにある。
やがて、執行官が一歩前へ出た。
「それでは、始めます。本日までに、バルガ商会より請求されている債務全額を用意することはできなかった。相違ありませんか?」
お爺さんが拳を握った。
「……ない」
お婆さんが、その腕へ手を添える。
「では、債権者側より契約書の原本を」
「こちらです」
ホープスが職員へ合図した。
革の鞄から、一通の契約書が取り出される。
その瞬間。
わかった。
昨日、僕が触ったものだ。
【文書偽造】を意識する。
まだ少し遠い。
僕はユラと一緒に、人垣の中を二、三歩だけ前へ進んだ。
【対象文書を認識しました】
【遠隔改竄可能】
届く。
ホープスが契約書を執行官へ渡す。
「本件について、一点ご報告しておきます」
余裕のある声だった。
「昨夜、当支店へ何者かが侵入する騒ぎがございました」
心臓が跳ねた。
周囲も少しざわつく。
「もっとも、今朝確認したところ、保管文書に紛失はなく、契約書をまとめた封緘にも異常はありませんでした。そのうえで、本日使用する原本については、私自身が内容まで確認しております」
封。
昨夜、僕が【文書偽造】で戻したものだ。
ホープスは老夫婦を見る。
「したがって、本件の契約内容に疑義はございません」
当然だ。
今朝の時点では、まだ僕は何もしていない。
ホープス自身が確認したのは、書き換えられた状態の契約書だ。
執行官が原本を開く。
今。
僕は【文書偽造】を意識した。
昨日確認した、契約が成立した時の状態。
そこへ戻す。
【遠隔改竄を実行しました】
ほんの一瞬だけ、紙の上の文字が揺れたように見えた。
【文書偽造の熟練度が上昇しました】
執行官が契約書を読み進める。
数秒して、その眉がわずかに動いた。
「……ホープス殿」
「はい」
「この方々は、返済期日を十二日超過した後、規定の遅延利息を含めて不足分を支払った。それで間違いありませんな?」
「ええ。ですが、返済期日を一日でも超過した時点で、残債全額の返済義務が――」
「いいえ」
執行官が遮った。
ホープスの表情が止まる。
「この契約には、そのような記載はありません」
「……何?」
「返済期日超過後、三十日間を返済猶予期間とする。その間は、規定の遅延利息のみを加算する、とあります」
お爺さんがゆっくり顔を上げた。
「だから……」
お婆さんの声が震える。
「だから、そう言っただろう……」
「お待ちください」
ホープスが執行官の横へ回り込み、契約書を覗き込んだ。
顔から笑みが消える。
「……違う」
「ホープス殿?」
「これは違う。この猶予条項は削らせたはずだ」
その場が静かになった。
ホープス自身も、口に出してから気づいたらしい。
執行官がゆっくりと顔を上げる。
「……削らせた?」
「いや、それは……」
「今、何と仰いました?」
「違う。そういう意味ではない」
そう言いながらも、ホープスは契約書から目を離せない。
「あり得ない。今朝も確認したんだ。返済猶予は削除して、期日を過ぎた時点で残債を一括請求できるように――」
そこで、また口を閉じた。
でも。
もう遅かった。
執行官は契約書へ目を戻す。
「さらに、担保についても、本融資によって仕入れられた商品在庫に限定されています。店舗および営業権を譲渡する条項もありません」
ミナが顔を上げた。
「じゃあ……」
執行官は老夫婦を見る。
「この契約に基づいて、本日店舗を譲渡させることはできません」
「お店……なくならない?」
ミナがお婆さんを見る。
お婆さんは孫を抱きしめた。
お爺さんも何も言わず、何度も頷いている。
「待てよ」
カイルが声を上げた。
「今の、契約したあとで書き換えたってことだよな?」
ホープスが苛立ったように振り返る。
「君には関係ない」
「あるだろ! 俺も今日が最後通告なんだ!」
カイルはそのまま執行官へ向き直った。
「俺の契約も見てもらえませんか?」
「どのような契約です?」
「新人狩人支援です。前金と装備一式を借りる代わりに、決められた量の素材をバルガへ納める。買い取りは相場の八割。普通に使って傷む分の整備は商会持ちで、俺が壊した時だけ実費を払う。そういう契約でした」
執行官がホープスを見る。
「原本は?」
「本件とは関係ありません」
「本日、その方へ契約延長の最終通告を行う予定なのでしょう?」
ホープスは答えない。
職員の一人が、一瞬だけ革鞄へ目を向けた。
執行官はそれを見逃さなかった。
「提出してください」
「しかし――」
「同じ支店が管理する契約について、締結後の変更を疑わせる発言があったばかりです。確認します」
職員が二通目を取り出した。
カイルの契約書。
【対象文書を認識しました】
【遠隔改竄可能】
「そちらについても、今朝私自身で内容を確認しております」
ホープスが言う。
僕は何も言わず、二通目も契約成立時の状態へ戻した。
【遠隔改竄を実行しました】
【文書偽造の熟練度が上昇しました】
執行官が読む。
「素材の買取価格は、商業組合公示相場の八割」
「そこは合ってます」
「貸与装備については、通常使用による摩耗および定期整備を商会側負担とする。契約者の故意、または重大な過失による破損についてのみ、実費を請求する」
カイルの顔が変わった。
「それです」
もう一度、今度は強く言う。
「俺が契約したの、それだ」
ホープスはカイルを見ていなかった。
契約書だけを見ている。
「……あり得ない」
「ホープス殿?」
「今朝、二通とも私が確認したんだ」
食い入るように文面を見る。
「四割はどうした」
「四割?」
執行官が聞く。
ホープスは契約書を指差した。
「納品のたびに、点検・維持費として買取額の四割を控除する条項だ。今朝は確かに入っていた!」
言ってから。
また、止まった。
執行官はまだ何も言わない。
ホープスは混乱したまま続ける。
「それがなければ、こいつの手元に金が残るだろう。前金を返し切られたら、契約期限で専属が――」
口を閉じた。
カイルが、ゆっくりホープスを見る。
「……何だよ、それ」
「違う」
「前金を返させないために、四割取ってたのか?」
「違う!」
ホープスの顔から血の気が引いていく。
執行官が静かに聞いた。
「今の発言についても、後ほど詳しく伺うことになります」
「言葉の綾だ!」
「俺をずっと専属にしておくつもりだったのかよ!」
「黙れ!」
それをきっかけに、周囲から声が上がり始めた。
「俺も維持費を取られてるぞ」
「うちも返済条件がおかしいって言ってたんだ」
「俺の契約も確認してくれ!」
昨日見た契約書を思い出す。
やっぱり。
この二つだけじゃない。
「静粛に!」
執行官が声を張った。
ざわめきが少しずつ収まる。
「本日の店舗譲渡執行は停止します。また、現在確認した二通の契約原本は、商業組合で証拠として保全します」
「待ってください! それは当商会の財産です!」
「あなた自身が、契約内容の変更を指示したと取れる発言をされています。それも含め、調査します」
執行官は譲らなかった。
「マルグ支店で保管されている同種契約についても、提出を求めます」
終わった。
全部が解決したわけじゃない。
むしろ、ここから調べるんだと思う。
でも今日、この店が取られることはない。カイルの契約も、ほかの人たちの契約も調べてもらえる。
それで十分だった。
僕はユラの袖を軽く引いた。
「行こう」
「もう?」
「うん。ここにいても仕方ないから」
「お店は?」
「たぶん、大丈夫」
ユラは、お婆さんに抱きついているミナを見た。
「よかったね」
「うん」
僕たちは人だかりの後ろへ下がった。
僕が何をしたのか、説明するつもりはない。
というより、説明できない。
このまま誰にも気づかれず、静かに町を出る。
そのつもりだった。
「待て」
背中に声が飛んだ。
「そこの黒髪」
足が止まる。
振り返ると、ホープスが僕を見ていた。
最初は誰なのかわからなかったらしい。でも僕の顔と髪を見比べるうち、その表情が変わっていく。
「お前……昨日、この店にいたな」
嫌な予感がした。
「昨夜、支店へ侵入したのも黒髪の若い男だった」
ホープスの目が見開かれる。
「そいつだ!」
僕を指差した。
「昨夜、当支店へ侵入したのはそいつだ!」
一斉に視線が集まった。
ミナもカイルも僕を見る。
「ユウト?」
「…………」
ホープスは、追い詰められていたのが嘘みたいに勢いづいた。
「昨日からこの店に出入りしていた。そして昨夜、黒髪の若い男が支店へ侵入した。今になって原本の内容まで変わっている!」
執行官が持つ契約書を指差す。
「こいつが何かしたに決まっている!」
なるほど。
全部、僕のせいにするつもりなんだ。
執行官は冷静だった。
「契約書へ触れた証拠は?」
「昨夜、支店へ侵入した!」
「それだけですか?」
ホープスが詰まる。
「あなたは先ほど、今朝の時点で保管束の封緘に異常はなかったと仰いました。さらに、本日使用する二通については、その後あなた自身が取り出し、内容まで確認した」
「…………」
「その時点では、先ほどあなたが口にされた条項が存在していたのですね?」
ホープスは答えない。
答えなくても、さっき自分で言っている。
「少なくとも、昨夜の侵入者が現在の契約内容へ変更した、という説明にはなりません」
ホープスの顔が歪んだ。
そう。
僕が昨夜したのは、封を開けて、中を見て、全部元通りに戻しただけ。
契約の内容を戻したのは。
ついさっきだ。
でも、それを知っているのは僕だけ。
「ユウト」
ミナが恐る恐る聞いた。
「……何かしたの?」
「…………」
困った。
カイルまで僕を見る。
「お前、昨日から契約のこと気にしてたよな」
「はい」
「何か知ってんのか?」
「…………」
知っている。
ものすごく。
でも、何を答えても墓穴を掘る気しかしない。
たぶん、かなり困った顔をしていたんだと思う。
ユラが下から僕を覗き込んだ。
「ユウ、困ってる?」
「……うん」
「すごく?」
「すごく」
カイルが怪訝そうな顔をする。
「お前、本当に何なんだよ……」
その時だった。
通りの向こうから、大きな声が響いた。
「――道を開けろ!」
続いて、揃った金属音。
人だかりが一斉に振り返る。
同じ型の鎧。
胸に刻まれた王国の紋章。
武装した兵士たちが、通りをこちらへ進んできていた。
「王国兵……?」
誰かが呟く。
身体が固くなった。
王国兵たちは店の前まで来ると、周囲を見回した。
先頭の兵士の視線が。
僕のところで止まる。
次にユラ。
そして、もう一度僕。
「……いたぞ」
小さな声だった。
でも。
はっきり聞こえた。
後ろの兵士たちが一斉にこちらを向く。
「黒髪の少年。十五歳前後」
先頭の兵士が確認するように言った。
次にユラを見る。
「緑髪の亜人の少女を同行」
心臓が嫌なくらい大きく鳴った。
ホープスが王国兵へ駆け寄る。
「ちょうどいい! その少年は昨夜、当商会へ不法侵入した疑いが――」
「商会の件は商業組合へ話せ」
兵士はほとんどホープスを見なかった。
「しかし、契約書も――」
「我々は商取引の揉め事を調べに来たのではない」
短く言って。
再び僕を見る。
「榊優だな」
周囲の空気が変わった。
カイルも。
ミナも。
今度は別の意味で僕を見る。
ユラが首を傾げた。
「ユウ?」
「うん」
「ユウトじゃない?」
「今それ言う?」
「ユウ?」
「あとで説明する」
できれば。
先頭の王国兵が一歩前へ出た。
「王都より、お前の身柄を確保するよう命令を受けている」
「…………」
兵士の目がユラへ移る。
「同行している少女も確保する。抵抗するな」
ユラの手が、僕の服を掴んだ。
僕だけなら。
少しくらい迷ったかもしれない。
剣も。
善も。
クラスのみんなも。
王都に残っている。
僕が逃げてから、どうなったのかも知らない。
でも。
隣を見る。
ユラの顔が強張っていた。
捕まれば。
ユラも王都へ戻される。
あの地下牢へ。
また連れていかれるかもしれない。
「ユラ」
「うん」
「走れる?」
すぐに頷いた。
「うん」
王国兵の目が鋭くなる。
「やめろ」
僕はユラの手を握った。
「ごめんなさい」
「榊優」
「やっぱり、無理です」
走った。
「確保しろ!」
人垣へ飛び込み、驚く人たちの間を抜ける。
ユラも手を離さずについてきた。
中央通りへ出ると、朝の町は荷車や露店、商人でいっぱいだった。僕たちにも走りにくいけれど、鎧を着た王国兵にとっても条件は同じだ。
「右へ回れ!」
「西側を塞げ!」
後ろから声が飛ぶ。
ただ追っているだけじゃない。
先回りしようとしている。
目についた路地へ飛び込む。
その先には木の扉があった。
「行き止まり!?」
引き返す暇はない。
鍵へ飛びつく。
【解錠可能】
触れる。
カチリ。
「開いた!」
ユラを先に通し、僕も滑り込む。
すぐに扉を閉め、鍵へ触れた。
【施錠可能】
カチリ。
【解錠の熟練度が上昇しました】
建物の中を走ると、反対側にも扉があった。
開かない。
「また!?」
背後では、さっきの扉を王国兵が叩き始めている。
「開けろ!」
もう一つの鍵へ触れる。
【解錠可能】
「早く……!」
カチリ。
【解錠の熟練度が一定値に達しました】
【解錠 Lv2 → Lv3】
「今!?」
表示に突っ込んでいる場合じゃない。
でも、鍵が外れるまでの時間は明らかに短くなっていた。
「ユラ、こっち!」
外へ飛び出す。
細い裏通りへ出たところで、横道から別の王国兵が現れた。
「いたぞ!」
もう回り込まれている。
「ユラ!」
ユラが地面へ手を向ける。
石畳の隙間から草が伸び、兵士の足首へ絡みついた。
「なっ!」
一人が体勢を崩し、もう一人が剣を抜いて草を切る。
「行こう!」
ユラと走り出したところで、隣から声がした。
「ユウ」
「なに!?」
「芽吹き、二になった」
「今!?」
「うん」
「おめでとう!」
「ありがとう」
どうして逃げながらレベルアップを祝っているんだろう。
でも、Lv2になった違いはすぐにわかった。
次にユラが手を向けると、道端の草がさっきより長く、太く伸びた。追ってきた王国兵たちの足へ絡みつき、一瞬だけ追跡が止まる。
「ユラ、すごい!」
「うん!」
「自分で言うんだ」
「うん!」
それくらい元気なら助かる。
正門は使えない。
僕たちは町の西側へ向かった。
昨日、宿の女将さんから、商人が荷物を出し入れするための小さな搬入口があると聞いている。
低い町壁と、小さな門が見えた。
「西側へ回れ!」
後ろからまた声が飛ぶ。
まずい。
こっちへ逃げることも読まれている。
搬入口の門番が、僕たちと後ろから来る王国兵を見比べる。
「門を閉めろ!」
王国兵の声に、門番が慌てて扉へ手をかけた。
「ユラ!」
ユラが手を伸ばす。
門の脇の土から草が伸び、門番の足へ巻きついた。
「うわっ!」
門番が体勢を崩す。
扉が途中で止まった。
「ごめんなさい!」
ユラが謝りながら、その隙間を抜ける。
僕も続いた。
町の外へ飛び出す。
その先には森がある。
「追え!」
まだ終わらない。
僕たちは街道を外れ、そのまま木々の中へ飛び込んだ。
息が苦しい。
脚も痛い。
それでも、止まれば捕まる。
「ユウ!」
「大丈夫!」
全然大丈夫じゃない。
でも、走るしかなかった。
森が深くなるにつれて、後ろの声が少しずつ遠くなっていく。
もう少し。
あと少し奥へ入れば。
逃げ切れるかもしれない。
そう思った時。
前方の木々の間に、人影が見えた。
足が止まる。
ユラも僕の隣で止まった。
一人。
二人。
三人。
その後ろにもいる。
町で追ってきた兵士たちとは違う。
揃った鎧。
腰の剣。
胸には、同じ王国の紋章。
でも、装備も立ち姿も明らかに違った。
騎士。
何人もの王国騎士が、森の中で僕たちを待っていた。
「…………」
背中が冷たくなる。
偶然じゃない。
町の中で聞こえた声を思い出す。
――西側を塞げ。
僕が逃げることまで。
最初から考えられていた?
「……嘘でしょ」
後ろからは、追ってきた王国兵の声が近づいてくる。
前には騎士。
逃げ道がない。
その中央から、一人の男が歩み出た。
他の騎士より少し若く見える。
でも、周囲の誰より落ち着いていた。
男は僕を見る。
次にユラを見る。
腰の剣には、まだ手をかけない。
「榊優」
僕の名前を呼んだ。
「もう、逃げるのはやめろ」
榊 優 Lv.2
天職:【罪人】
【解錠 Lv.3】
【窃盗 Lv.1】
【密猟 Lv.2】
【詐欺 Lv.1】
【文書偽造 Lv.2】
ユラ Lv.1
【芽吹き Lv.2】
今回の変化
優:【文書偽造】熟練度上昇
優:【解錠 Lv.2 → Lv.3】
ユラ:【芽吹き Lv.1 → Lv.2】




