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【12作目】双子の妹と××しないと人類が滅ぶらしい。  作者: あぱ山あぱ太朗
人類が滅ぶらしいので、妹と付き合うことになりました
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2/21

1-1

「好きだ。毎日みそ汁を作ってほしい」

 溢れる想いが止まらない。夏野天はいつも俺を惑わせる。

 白い肌、大きな瞳、肩にかかる長さの黒髪、華奢な体つき、澄んだ声、全部が愛おしい。

「もぉ、雪月は冗談ばっかり言うんだからー」

「冗談なんかじゃない。お前が好きだ。結婚してくれ」

 真っすぐ目を見つめる。伝われ、俺の想い。

「ね、ねぇ? 雪月さ、ボクが男ってこと忘れてない?」

 顔を赤くしている。可愛い。

 夏野天。こんなキュートなのに日本男児だ。ち◯ちん付いてる。それも愛おしい。

 制服の学ランも似合っている。同じ制服を着ている筈なのに、どうして俺が着るのと、天が着るのでこんなにも印象が違うんだろうか。ベリーキュート。

「性別なんて関係ない。俺は夏野天その人が大好きなんだ」

「うぐぐ、ちょっとドキッとした自分が憎い」

 モジモジしている。あぁ、尊い。

 天とは一年、二年と同じクラス。天がいなければ、学校に通えていなかった。

 高校に入ってからの唯一の友達。高校デビューに失敗し、ぼっち飯をしていたところ、「良かったら一緒に食べない?」と天が声を掛けてくれた。大好き。

 二人でネズミーランドに行ったこともあるんだぜ。お揃いの被り物。写真みます?

「雪月って普通にイケメンだから、そんなこと言われたら同性でも照れちゃうよ」

「いや、それはないだろ。年齢=彼女いない歴だし」

「それは雪月が女の子を避けてきたからでしょ?」

 さすがはマイハニー。俺の女性嫌いをきちんと把握している。

「避けてきたというか、避けられてきたというか」

「雪月が話しかけるなオーラを出してるからでしょー? ボクも一番最初に声掛けた時、すっごく緊張したんだからね?」

「あの時はすまん。あまりに可愛いから女子だと思って。今は大好き。結婚しよ?」

「どさくさに紛れてプロポーズしない!」

「やっぱり、まだ学生だからダメか?」

「違うよ! もっと大きな壁があると思う!」

「お前と一緒にいられるなら、そんな壁は飛び越えてやるぜ」

「無駄に主人公っぽい!?」

 天との会話は心地いいし、何よりも楽しい。

 二年生になってからも同じクラスで本当に良かった。

 春休み中は何度も神社に通ったなぁ。天と同じクラスになれますように。願いを込めた柏手を幾度繰り返したことか。

 おかげで叶いました。神様、ありがとうございます。次は結婚の報告をしますね。

「雪月ってさ。話すと面白いのに、それが皆に伝わらないのがボク悲しいよ」

「不特定多数に好かれても仕方ない。天がいてくれればそれでいい。他はいらない」

「また、そういう事ばっかり言ってー」

 頬を膨らませている。怒った顔も可愛いなぁ。

「けどまぁ? 雪月を独り占めできるっていうのは、少し優越感あるんだけどね?」

 照れ笑いをしながらウインクする。ズキューン。

 天はとんでもないものを盗んでいきました。俺の心です。

「一生かけて、君を幸せにする」

「そういう言葉は好きな女の子のためにとっておきなさい!」

「好きな女の子、ね」

 俺には無理じゃないかな。見つかる気がしない。

 一人どうしても許せない女性がいて。だからって女性全体を恨むのはお門違いだけど。

 分かっている。それでも、簡単には割り切れない。

「雪月……」

 その辺の事情を話しているので、天は複雑そうな顔をしていた。

 いかんいかん。こういう空気は御免である。もっとイチャイチャしたい。

「そんなことよりも、俺と天の子供の名前を考えようぜ」

「生物学的に無理だよ!?」

「大丈夫。俺が絶対に妊娠させてやる」

「どうやって!? すごく怖いんだけど!?」

「愛する人のためなら、どんな不可能だって可能にして見せるぜ」

「だから、その無駄に主人公っぽいの何なの!?」

 今日も平和だなぁ。

 一ノ宮雪月。一六歳。春。周囲から見たら閉じた世界なんだろうけど、俺はこの小さくても居心地のいい世界が嫌いじゃない。むしろ好きだった。

 将来は市役所で働きたい。平凡で、地味で、安定した生活をしていたい。

 非凡で、派手で、劇的な人生は別のやつが担ってくれる。

「奏、おはよう。ちょっといいかな?」

 そう、例えばこいつとかね。

「あ、風花! 朝からどうしたの。わざわざクラスまで」

 お隣さんが騒がしい。

 今年から同じクラスになった井上奏さん。

 三つ編みおさげがトレンドマークで真面目な印象がある。それでも野暮ったく見えないのは、彼女の整った容姿に依るものだろう。

 席が隣になってから一度も会話をしていない。そろそろ一週間が経つなぁ。

「うん、ちょっとね。奏に借りてた本を返そうと思って」

「え、いつでもいいのに! 風花って変に律儀なとこあるよねー」

 そんな井上さんが会話している相手、学校の有名人で知らない生徒はいない。俺だって知っている。いや、俺の場合は知らずにはいられない。

 一ノ宮風花。双子の妹である。

 これといって特殊な事情もないので、同じ屋根の下で暮らしている。

 わりかし普通の兄妹だと思う。事務的な会話が基本で、お互いがどこで何をしているのかも把握してないし、必要以上に関わることもない。

 年の近い兄妹ってこんなものじゃない?

 仲が悪いとかではなく『無』って感じだ。唯一、我が家の変わっているところは、兄妹で全く違う人生を歩んでいる点だろうか。

 パッとしない兄とは対照的に、妹はその名を学校中に轟かせている。

「ねーねー雪月。ほんとに、風花ちゃんとは兄妹なんだよね?」

 天が耳元で囁いてくる。なにこのASMR。販売したら売れるだろ、これ。いや、でもやっぱなしだ。天の可愛い声は俺だけが独占する。

「家に呼んだ時、いただろ?」

「うん、それまで半信半疑だったけど」

 ウチにはもう一つ特殊な設定があった。双子であることが周囲に知られていない。

「一ノ宮なんて多くない苗字だけどな。誰も俺たちを関連付けない」

「それは二人が何の反応もしないからだよ。今もこんな近くにいるっていうのに、一言も会話しないよね。好意でも敵意でも多少はありそうなものじゃない?」

「家でもこんな感じだからなぁ。学校でも変わらんよ」

 仮に反応らしきものがあっても、関係ないんじゃないかな。

 向こうは学校一の美少女と名高い。

 成績も学年で一◯番以内で、部活の陸上ではインターハイも目指せる位置にいるとか。何もかもが違い過ぎる。ダブルスコアで完敗だ。

「…………」

「風花、どうしたの? いきなり黙って」

「あ、いや、何でもない!」

 珍しいこともあるものだ。どういう訳か、風花がこちらを凝視していた。

 ナチュラル無視をするのが、基本スタンスじゃなかったのか。

「どしたどした? なんか悩みがあったら聞くよー?」

「って、ちょ! あはは……っ、く、くすぐったいって! やめ、くる、苦しいって!」

 井上さんが風花のことをくすぐり出した。泣き笑いする風花の声が妙に色っぽい。

 そんな妹の嬌声を聞いて、俺が思ったことはただ一つ。

 ――――うえぇ、気持ち悪い。

 異性の兄弟姉妹がいる人なら分かってくれるはずだ。そういう『性的』なものを感じたくないし、感じそうになると拒絶反応が生じるよな。

 兄弟姉妹がいないなら、異性親の裸を想像してみてくれ……なぁ、分かるだろ?

「風花は色々と溜め込みすぎっ! 親友の私には話してほしいなぁ!」

「あはっ、ごめ、ごめんって! 本当に何でもないから!」

 実に百合百合しい光景だ。周囲の男子生徒達がよだれを垂らしている。

 ただ、あれっすね。身内的には超キツイっすね。

「なんかあったら言うんだよー?」

「はぁはぁ……うん、分かったからっ! 奏って強情だよね、意外と」

 この二人は本当に仲が良いな。

 何度か、我が家に招いたこともあるみたいだし。

 伝聞系なのは、俺が外出しているタイミングを見計らって自宅に呼んだ――という事実を父親経由で聞かされたからである。相談してくれれば良かったのに。

「とにかく、本返すね? 面白かった。似たようなので面白いのある?」

「ほんと!? この系統が好きなら……うん、明日までに見繕っておくね!」

 いつまで妹の会話に聞き耳を立てているんだ。

 目の前に愛しい人がいるというのに。天、愛してるぜ。

「天、愛してるぜ」

「唐突過ぎない!?」

 いかん、口に出してしまった。けど、いいや。事実だし。

 それからHRが始まる直前まで、俺たち兄妹は互いに無関心を貫き、互いの友人と談笑をしていたのだった。

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