表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/21

プロローグ

「好きです。付き合ってください」

「……正気か?」

 放課後の屋上。茜空の下、俺は一人の女子生徒と向き合っている。

 淡い水色のセーラー服姿。都立大宮前高校の指定制服だ。

 オールドスタイル×パステルカラー。不易流行。デザイナーのセンスが光る制服には、女性嫌いの俺でもシンプルに「可愛いらしい」という感想を抱く。

 夕焼けと青空色の対比が絵になっている。

 それに加えて、身に纏う人物の容姿が芸術性をより高めていた。

 色素の薄いロングヘアー、整った目鼻立ち、長くスラっとした手足。主観はさておき、客観的には『美少女』の言葉がふさわしい人物だ。

「ひどーっ! 女の子が勇気出して告白してるんだよ!?」

 全くその通りだ。相手に酷い言葉を投げ掛けている自覚はある。

 正直、ここに来るつもりはなかった。答えは決まっていたから。それでも、清水の舞台から飛び降りるような気持ちで手紙をくれたんだ。

 決して無下にはできない。だから、屋上に出てきた。

「どっから声出しているんだ……。媚びた声が気持ち悪いぞ……」

 でも、許してほしい。この展開は想定していなかった。出来るわけがない。

「ううぅ、『お兄』がさっきから冷たいよぉー」

「そうなんだよ。問題はそこだ」

 目の前にいる女子生徒のことはよく知っている。知っているとも。

 才色兼備、文武両道、品行方正。

 大層な四字熟語がいくつも当てはまる学校一の有名人。彼女の一挙手一投足は学校中の話題となる。友達が少ない俺の耳にも噂は届いていた。

 その名を一ノ宮風花。

 男子諸君がお近づきになりたいと切望する美少女――そして、俺の双子の妹である。

 大事なことなのでもう一度言う。

 一ノ宮風花は俺、一ノ宮雪月の双子の妹である。

 血の繋がってない妹分だとか、義理の妹だとか、実は従妹だとか、そんな逃げ道はない。

 正真正銘の実妹である。二卵性双生児で、俺が先に生まれ、風花が後に生まれた。

「問題って?」

「近親相姦って知ってるか?」

 賛否については様々な議論があるので言及を避けるが、事実として多くの文化において禁忌とされてきた行為だ。

「どうでもいいよ、そんなの」

「おー、まじか」

 絶対にどうでもよくないだろ。倫理観どうなっているんだ。

「あらためて言うね」

「やめろ、聞きたくない!」

 悪い夢であってくれ。そんなフラグはなかったはずなんだ。

 俺たちはどこにでもいる普通の兄妹で、禁断の愛に目覚めるような関係ではない。

 一体、どこで歯車が狂ったんだ。


「お兄が好き。付き合って」


 何が彼女をここまで駆り立てるのか。

 それは分からない。分からないけど、返答は決まっている。

 俺もあらためて言わせてもらおうじゃないか。

「正気か?」

 それ以上の言葉が見つからなかった。後は何も考えられない。考えたくもない。

 赤く染まった空を見上げて、平凡ないつもの日々に想いを馳せた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ