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4-1

「えーそれでは被告人・雪月の淫行疑惑について審理を開始します」

 裁判官リオンの宣言によって、俺を断罪する裁判(茶番)が始まる。

「被告人は四月某日、二十一歳にも関わらず金髪ツインテール姿で男子高校生を誘惑する激イタ女(以下、貧乳と呼ぶ)と、自宅にて淫行を働いた疑惑があります」

 検察官(風花)によって罪状が読み上げられる。

「誰が激イタ女よっ! あと、貧乳いうな!」

「そこ、静粛に! 証人に発言を許可していませんよ」

 証人(恵さん)の抗議をリオンが諫める。

「なんなのよ、これ! あたしもそんな暇じゃないんだけど!?」

 再就職の準備で忙しい中、こんな茶番に付き合ってくれる事実に涙を禁じ得ない。

 あれから恵さんが一ノ宮家に来ることが増えました。

 親父の酒に付き合ったり、今みたいにリオンや風花の呼び出しによって。

「ねぇ、恵? リオンに逆らうの? 『天使の会』に突き出してもいいんだからね?」

「そ、それだけはっ!」

 可哀想なことに力関係はハッキリしています。風花→リオン→恵さんの順だ。

 リオンは風花から受けたストレスを恵さんで解消している。

 先輩から強めのシゴキを受けた人間が、後輩に同じようなことをする図式だ。

 これぞ負の連鎖である。

「ごほん。気を取り直して、被告人は貧乳との淫行を認めますか?」

「恵さんとは何もなかった! 本当だ!」

「否認すると。では、弁護人から何かありますか?」

「裁判長、弁護人がいません!」

 なんてバランスが悪い裁判なんでしょうか。天に依頼したかったのだが、天使のことが絡むため断念しました。

 友達が少ないのも困りものですね。

「雪月の有罪は決まっているし、居ても居なくても変わらないよ」

「腐った司法!?」

 完全なる出来レースっぽいです。

「安心して雪月! 死刑ではないから!」

「風花が量刑を決めているなら、死刑の方がマシかも!」

 地下での監禁生活(無期懲役)とか。

「お兄、大丈夫だって。斉藤さんを事前に拷も――聴取してるから! 大体、何があったのか把握しているつもりだよ♪」

 やばい。コイツ、拷問って言いかけたよ。

「……(がくがくぶるぶる)」

 恵さんは暗い目をして体を震わせている。

 一体、何をされたんですか!?

「えっとー、手繋ぎとー、後ろからハグされたんだよねー? ねぇ、お兄ぃー?」

 笑顔が怖い。そして、ちゃんと全部を把握されているっぽい。

 恵さん洗いざらい喋ったな。けど責める気にはならない。だって、過呼吸みたいな状態になってるんだもん。我が家の怪物がすみません。

「ま、間違いありません……」

「きゃはははははっははははっははっははははははっははっははは!!」

 いきなり笑い出した。こわすぎ。

「裁判長、検察官がおかしいですよ……? 止めなくていいんですか……?」

「む、無理だよ! 恵なんとかして!」

「あんな化け物、どうしろって言うのよっっ!」

 災禍の前では人も天使も無力だ。

「きゃはは――――ふう、お兄は面白いねぇ、ほんとにぃ」

「えと、その、すみませんでした」

 全然面白くなさそうです。誰か助けてください。

「手を繋ぐのも、ハグするのも、フーは経験済みだから――よかったね、お兄?」

「は、はひ」

 俺と風花で経験していない行為だったら、人生が終わっていたみたいだ。

「もちろんペナルティーはあるよ?」

「……でしょうね」

 お咎めなしとはいかないよな、そりゃあ。

 キスくらいは覚悟しないと……いけるか? きついよな、やっぱり。

「斉藤さん、手配は済んだ?」

「もちろんでございます! 風花様!」

「どういう関係だよ!」

 リオンに続いて、恵さんも風花の軍門に下っていた。

「箱根の旅館を二名で予約しました!」

「え、旅館?」

「ほら、高校生だけじゃ予約できないでしょ? 斉藤さん成人してるから、その辺の予約回りを全部やってもらったの」

 ん、待てよ。色々と整理がしたい。

「どういうことだ? 風花と恵さんで旅行でも行くのか?」

「雪月、バカなの!? ライオンとシマウマが一緒に旅行できる訳がないよね!? 常識で物を言ってよ!」

 恵さんが取り乱していた。支離滅裂な事を言っている。

 ライオンとシマウマはそもそも旅行しないだろ、とかツッコんでる場合じゃないな。

「え、斉藤さん? フーのお兄になんて? バカ? 聞き間違い?」

「バカはあたしでした! うんにょ、うんにょ、ぴぱぴぱぴぱ、グンマ!」

「あはははは! 恵おもしろーい!」

 なんだこの地獄絵図。

 恵さんは奇怪なダンスを踊り、リオンは大笑いしている。お前は自分が被害者じゃなくなった途端にすごいな。

「ちょ、みんな落ち着いてくれ。それで誰と誰が箱根に行くんだよ?」

「もちろん、お兄とフーの二人だって!」

「あーやっぱり?」

 そんな気はしていたけど現実から目を背けていました。

 流れで言ったらそうなるよな、うん……え、これってあれかね? もしかすると、キスだけじゃ済まない?

「フー、可愛い下着つけてくよ! 楽しみにしててねっ!」

「天に会いたいいいいいいいいい!!」

 家の事情で名家に嫁がされるヒロインの気分だった。

 お願い、天! 俺を迎えに来て! 「ちょっと待った」って結婚式に乱入して!

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