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「えーそれでは被告人・雪月の淫行疑惑について審理を開始します」
裁判官の宣言によって、俺を断罪する裁判(茶番)が始まる。
「被告人は四月某日、二十一歳にも関わらず金髪ツインテール姿で男子高校生を誘惑する激イタ女(以下、貧乳と呼ぶ)と、自宅にて淫行を働いた疑惑があります」
検察官(風花)によって罪状が読み上げられる。
「誰が激イタ女よっ! あと、貧乳いうな!」
「そこ、静粛に! 証人に発言を許可していませんよ」
証人(恵さん)の抗議をリオンが諫める。
「なんなのよ、これ! あたしもそんな暇じゃないんだけど!?」
再就職の準備で忙しい中、こんな茶番に付き合ってくれる事実に涙を禁じ得ない。
あれから恵さんが一ノ宮家に来ることが増えました。
親父の酒に付き合ったり、今みたいにリオンや風花の呼び出しによって。
「ねぇ、恵? リオンに逆らうの? 『天使の会』に突き出してもいいんだからね?」
「そ、それだけはっ!」
可哀想なことに力関係はハッキリしています。風花→リオン→恵さんの順だ。
リオンは風花から受けたストレスを恵さんで解消している。
先輩から強めのシゴキを受けた人間が、後輩に同じようなことをする図式だ。
これぞ負の連鎖である。
「ごほん。気を取り直して、被告人は貧乳との淫行を認めますか?」
「恵さんとは何もなかった! 本当だ!」
「否認すると。では、弁護人から何かありますか?」
「裁判長、弁護人がいません!」
なんてバランスが悪い裁判なんでしょうか。天に依頼したかったのだが、天使のことが絡むため断念しました。
友達が少ないのも困りものですね。
「雪月の有罪は決まっているし、居ても居なくても変わらないよ」
「腐った司法!?」
完全なる出来レースっぽいです。
「安心して雪月! 死刑ではないから!」
「風花が量刑を決めているなら、死刑の方がマシかも!」
地下での監禁生活(無期懲役)とか。
「お兄、大丈夫だって。斉藤さんを事前に拷も――聴取してるから! 大体、何があったのか把握しているつもりだよ♪」
やばい。コイツ、拷問って言いかけたよ。
「……(がくがくぶるぶる)」
恵さんは暗い目をして体を震わせている。
一体、何をされたんですか!?
「えっとー、手繋ぎとー、後ろからハグされたんだよねー? ねぇ、お兄ぃー?」
笑顔が怖い。そして、ちゃんと全部を把握されているっぽい。
恵さん洗いざらい喋ったな。けど責める気にはならない。だって、過呼吸みたいな状態になってるんだもん。我が家の怪物がすみません。
「ま、間違いありません……」
「きゃはははははっははははっははっははははははっははっははは!!」
いきなり笑い出した。こわすぎ。
「裁判長、検察官がおかしいですよ……? 止めなくていいんですか……?」
「む、無理だよ! 恵なんとかして!」
「あんな化け物、どうしろって言うのよっっ!」
災禍の前では人も天使も無力だ。
「きゃはは――――ふう、お兄は面白いねぇ、ほんとにぃ」
「えと、その、すみませんでした」
全然面白くなさそうです。誰か助けてください。
「手を繋ぐのも、ハグするのも、フーは経験済みだから――よかったね、お兄?」
「は、はひ」
俺と風花で経験していない行為だったら、人生が終わっていたみたいだ。
「もちろんペナルティーはあるよ?」
「……でしょうね」
お咎めなしとはいかないよな、そりゃあ。
キスくらいは覚悟しないと……いけるか? きついよな、やっぱり。
「斉藤さん、手配は済んだ?」
「もちろんでございます! 風花様!」
「どういう関係だよ!」
リオンに続いて、恵さんも風花の軍門に下っていた。
「箱根の旅館を二名で予約しました!」
「え、旅館?」
「ほら、高校生だけじゃ予約できないでしょ? 斉藤さん成人してるから、その辺の予約回りを全部やってもらったの」
ん、待てよ。色々と整理がしたい。
「どういうことだ? 風花と恵さんで旅行でも行くのか?」
「雪月、バカなの!? ライオンとシマウマが一緒に旅行できる訳がないよね!? 常識で物を言ってよ!」
恵さんが取り乱していた。支離滅裂な事を言っている。
ライオンとシマウマはそもそも旅行しないだろ、とかツッコんでる場合じゃないな。
「え、斉藤さん? フーのお兄になんて? バカ? 聞き間違い?」
「バカはあたしでした! うんにょ、うんにょ、ぴぱぴぱぴぱ、グンマ!」
「あはははは! 恵おもしろーい!」
なんだこの地獄絵図。
恵さんは奇怪なダンスを踊り、リオンは大笑いしている。お前は自分が被害者じゃなくなった途端にすごいな。
「ちょ、みんな落ち着いてくれ。それで誰と誰が箱根に行くんだよ?」
「もちろん、お兄とフーの二人だって!」
「あーやっぱり?」
そんな気はしていたけど現実から目を背けていました。
流れで言ったらそうなるよな、うん……え、これってあれかね? もしかすると、キスだけじゃ済まない?
「フー、可愛い下着つけてくよ! 楽しみにしててねっ!」
「天に会いたいいいいいいいいい!!」
家の事情で名家に嫁がされるヒロインの気分だった。
お願い、天! 俺を迎えに来て! 「ちょっと待った」って結婚式に乱入して!




