第006話_相合傘で初めてのキス
帰国したらすぐ初恵と連絡を取り、初デートにこぎ着けた。
実は私もデートをした経験はあまりない。強いていうなら佐世保にいた頃バイクで同窓生だった章子と平戸まで行ったことだろうか。確か初夏の頃章子を後ろに乗せ、両腕を私の胴に回し35㌖ほどの葛折りの道を1時間ほどかけて往復した平戸はすばらしいものであった。
私にとっても初恵にしても千葉が最寄り駅なのだがそんなところで会っているとすぐ会社の連中にばれてしまう。よって私が知っている新宿に総武線で行くことにした。千葉からは電車で約1時間の距離である。
新宿に着いてからはすぐ肩を抱いて歩き出した。初恵もまんざらでもない感じである。新宿西口の高層ビルの商店街に行き、当時はかなりお洒落なマクドナルドで昼食をとる。
これを書いている2015年のマクドナルドとは雰囲気的にファッショナブル性においてまたステイタスとしてもかなり違う。
初恵には中国でのいろんなことを話し、お土産に買った翡翠のペンダントを渡す。ガールフレンドへのペンダントにしては高かったが金回りが良かった私にとってはたいしたものではない。
ありがとうと言って受け取ってくれた。一日一緒にいて飽きさせないように気をつかったが一日中となるとやや疲れた。
初恵も満足そうだったし、次は何を話そうかと早速ネタを考えた。
その次のデートの約束は次週の日曜日となった。私は車を買うことにした。中古のホンダシビックである。どこかドライブに行くにはもってこいである。2人だけの空間が持てる。シビックにしたもう1つの理由は、私の同窓生に本田技研に勤めている友人がいて、何かと面倒を見てくれそうな気がしたと言うこともある。
3度目のデートではあいにくの雨である。彼女が差した傘にさっと入り、初めてのキスをした。
あっという間の出来事だった。彼女は少し驚いていたが、嬉しそうだった。その日は何ごともなくそのまま帰る。
車でのデートを重ねるにつれ、二人の距離は次第に近くなっていった。近くの隘路に車を停めて過ごす時間は、今から思えば幼稚なものであったが、二人にとってはかなりエキサイティングであった。詳しいことは書かないでおく。
それでも最初のデートから数ヶ月経っても、相変わらず二人の関係はそれ以上に進まなかった。
それはやがてラブホテルに変わるのであるがきっかけがあった。
チャンスは1993年5月の連休にやってきた。初恵が女友達と一緒に行こうとしていた和歌山方面の旅行に女友達が行けなくなったから来ないかという。3泊4日の旅だが、私も急にそんな時間はとれない。
金曜日から2泊3日の旅行としたが私にとっては願ってもないはなしだった。東京駅で合流し、新幹線で名古屋まで行って近鉄特急に乗り換える。伊勢市に来た頃は宿にチェックインできる時刻になっていた。
宿は基本的に民宿である。夕食、朝食が出て翌朝10時までにチェックアウトである。伊勢の観光は翌日に回し、宿に入ると夕食の支度が出来ていた。夕食を済ませ風呂に浸かると午後8時を回った。寝るには早すぎる部屋に戻ると布団が2組敷いてある。
そのあとのことは書かない。その夜はそこまでであった。明日がある。半分は満足である。
朝起きた初恵は何もなかったかのように振る舞い、朝ご飯を食べ二人は宿を出る。電車に乗って観光をする。私の頭の中は今夜のことでいっぱいで観光は上の空である。
そして夜はやってきた。夕食を済ませ、風呂から上がって部屋に戻る。そこから先は省く。
この夜、初恵は女になった。その表情からは痛みしか感じられなかったが、しかし女は一度は辿る道である。
翌朝、私は満足し、初恵は旅を続け、私は帰途についた。
初恵から日記を見せて貰ったことがある。拙い文章で誤字も多く、第一日本語になっていない。俺が付き合っている女はこの程度かとかなりがっかりした。
それからは少し距離を置くようになった。本を読むことを勧めたがどこまで理解できたのかは知らない。




