120 何歳? 訓練は? …情緒は?
思考回路が復活した私は、一斗缶お姉さんに連れられ、豪華な応接室に招待された。
私、練習を見に来たんだけど……。
そしてさっきからすごく人間の気配を感じる。
本当は使いたくないけど、探知魔法を使ってみる。
「ほげぇ……っ」
部屋の外には20人ほどの魔力反応がある。
みんな仕事しようよ。
しばらくすると外が騒がしくなる。
「コッッッッッッラ! お前ら! はよ仕事戻らんかい!!」
「「「「 そんなぁ〜 」」」」
「『そんなぁ〜』やない! ウチが後でたっぷり感想聞かしたるからはよ仕事してこい!」
めちゃくちゃ気が強そうな女性の声が聞こえる。
これがフィリアさんとやらなの…?
─────ガタン
扉が開く。
フィリアさんと目が合う。
あれっ、若くない?
20歳すら超えてなさそうに見えるんだけど…………
「あっ、初めまして。リンといいます」
「……」
……?
おそらくフィリアさんであろう目の前の少女が、ぷるぷると体を震わしている。
「あの…?」
「ついに……ぐずっ……づいに゛っ……」
「えっ!?」
「うわぁぁあんっ!!!」
「ちょ、ちょっと!?」
フィリアさんが抱きついてきた。
「うち……もう……ぐすっ……きらわれだのがもって……ぐすっ…」
「そ、そんなことないですっ! 私こそごめんなさい…その、忙しくて…」
「リンちゃあ゛ん……」
私、この人と初対面だったよね……?
以前にどこかで会って…………ないよ。
しばらくフィリアさんをなだめていると、泣き止んでくれた。
ちなみに10分は私の腕の中にいたよ。
「あの、フィリアさんってここの団長さんですよね?」
「そうや、ウチがここの団長や。さっきはごめんな。ほんまにリンちゃんに嫌われてもうたんやと思ってて…」
「いやあの、絶対にそんなことはないんですけど、どうしてそんなに私のことを…?」
「えっ?」
「え?」
なに? どうしてそんな、この世の誰も解けない数式を見ているような目で私を見てるの?
「リンちゃんはここ100年で1番可愛いやん。可愛い子に嫌われたら悲しいのは、当たり前じゃない?」
「えっ? ど、どこが…?」
20年も生きてなさそうなのに、100年とはえらい大袈裟に出たもんだ。
「どこがって、1から全部言うてたら日が暮れてまうわ」
「いやいや、お世辞はやめ─────」
「はぁぁ〜っ!? なんで自分で自分の良さがわかってないん!? じゃあ1から言うたろ、任せとき。まずこのスベスベな肌。何食べたらこんなスベスベになるんか教えてほしいわ! それからこのほっぺた。たまらんわ。なんでこんなプニプニなん? 全部脂肪で太ってるとかじゃない、ハリもあるしツヤもあるのに、なんでこんなプニプニなん? ほんでこの髪質。これで服編んで欲しいわ! それに加えてこの顔全体のバランスの良さ、あと魔法に関して言─────」
「ストーップ!」
「わかってくれた?」
「わ、わ、わかりましたから…もうやめてください……」
「わかってくれたならいいってことや!」
怖い…。この人、怖い………。
いや、この人…? この建物…? この世界…?
なんかもう全てが怖いよ……。
「あの、フィリアさんこそ怒ってないんですか………?」
「どうして? ウチが怒る必要あるん?」
「その、私全然ここに来なかったじゃないですか…」
「はぁ……」
フィリアさんが深くため息をついた。
「あのなぁ? リンちゃんみたいな超絶可愛い子とすぐに会えて友達になれてお話しできるなんて、そんなうまい話あるわけないやろ?」
「えっ?」
「なんかおかしいこと言うた? リンちゃんは好きな人追いかけたことないん?」
「え、いや…それとこれとは…」
「あかん! リンちゃんには待ち焦がれるという時間が足りてへん!」
「そ、そうなんですか…ね…? というか、いつでも会いにきてくれれば─────」
「アホ!!!! そんな愚かで厚かましい真似はしたらあかん!」
「ひぇっ!?」
「ウチらの元に歩み寄ってきて下さるまで! ぜっっったいに! そんなことしたらあかん!」
「な、なるほど…」
「ウチらにとって、リンちゃんは憧れの的であり、絶対的な神のような人や。そもそもそんなお方が、ウチらみたいな下等生物と触れ合ってくださるなんて、今の状況が夢のまた夢の話でな? それから─────」
─────コンコンッ
『フィリア様、今日の巡回が終わ─────』
「やかましぃわゴルァ!! 一体どなた様とお話させて頂いてる最中やと思っとんねん! この、ドアホがァッ!! 己の脳みそはブリブリのゼリーかなんかでできとんのかボケェッッッ!!!!」
『は、はいぃ! すいませんでしたぁッッ!!』
………
「ほんでな? やっぱりほんまに心の底から尊敬、いや尊いと感じてる人にはな─────」
あー…。
フィリアさんもやばいタイプの人間だったか。
私には対処できかねるよ。
それよりもさっきの人がかわいそうすぎるよ。後で私からも謝っとこう…。
とりあえずフィリアさんの話を要約すると『推しと会えないのはつらい。だけど簡単には推しに会えないし、こちらから接触するのは絶対にダメだ。だから我慢するしかない』ということらしい。
うん、良い心がけだと思うけどさ…。
私を推しの対象にするのは間違ってるよ絶対に…。
それにしても、フィリアさんはどっからどう見ても20歳を超えてるようには見えない。
女性に年齢を聞くのはマナー違反かもしれないけど、普通に理解できない。
私がこの年齢でこの立場なのは、異世界転生という過程を経てるからであって、純粋にこの世界で生きてきたフィリアさんが、王国で1番強い魔術師なのが理解できない。
「あの、フィリアさんって歳いくつなんですか?」
「さすがのリンちゃんにも、ウチの年齢は秘密や」
「多分、いや、絶対10代ですよね?」
「そんなお世辞も言うてくれるなんて、今日はなんて至れり尽くせりなんやろか」
「いや本気で10代ですよね? じゃなければ全人類の20代以降を敵に回しますよ??」
「アッハッハッ! それなら永遠の18歳ということで」
改めて思った。キャラ濃すぎるよ…。
と、とりあえず、年齢はともかく、フィリアさんがこういう人でむしろ助かった。
期間にして4ヶ月近くほったらかしにしてたんだ。
普通なら嫌われてたりするかもしれない期間だ。
普通なら、ね。
そろそろ落ち着いたところで、サリナさんに言われていた本題を話してみる。
「フィリアさん、宮廷魔術師団の練習とかってどうなっているんですか?」
「一応ウチが仕切ってるけど、正直あんまりすることないんよ」
それもそうか。この世界は魔導書がなければ魔法が使えない。
魔法は、人に教えられて上達するものじゃない。
もちろん、一般論の話だけどね。
私がセリとシーナで反例を証明したから、この一般論は間違っている。
「けど、フォーメーションを組んで戦ったりな、そういう練習はしてる」
「やっぱり毎日やってますか?」
「いや。魔法っちゅうのは、あんな筋肉馬鹿連中みたいに毎日扱き上げたらええっちゅうもんちゃうねん。適度にやるのが大事や。せやから、強制の練習はさせてへん」
へぇ〜。
なんとなくだけど、それはそれで良い考えなのかもしれない。
「せやけど、みんな魔法が純粋に好きで、強くなりたいと思ってるやつらばっかりや。ほっといても毎日練習しよるんや」
「その気持ちわかりますっ!」
「倒れられても困るしな、せやからウチからは何も言わんことにしてるんや。休みたいと思った時は休む。子供やないんやから、自分を管理する上では、そういうのも大事な訓練の一環や」
なんか、意外としっかり物事を考えてる人でよかったよ。
「そんなことよりリンちゃん」
「はい…?」
「いつになったらウチら友達になれんのやろか」
「えっ?」
そんな質問された人いる?
いるなら教えて? どうやって答えるの?
「えっと?」
「いや、アカン! つい口走ってしまった……。 まずは上司と部下の関係から、始めさせて頂いてもよろしいでしょうか!」
「いやあの、友達になってくれるなら、私もなってほしいんです………け……ど…?」
なっ、泣いてる……?
「あの…?」
「そ、そんな……ウチ……と……ぐすっ……ど…ともだちに゛ぃっ!」
「フィリアさん……?」
「ウチのぉ゛っ! ことはぁ…! フィリアってぇ! 呼んでくださぁ゛あぁ゛ん…! うぇ゛ぇえん!」
─────コンコン
やべっ、扉がノックさ────
「おんどりゃぁ何回言うたらわかんのじゃアホボケゴルァッッ!?」
─────ゴゴゴォォッ!!!
フィリアさんが扉に向かって割と高火力の炎魔法を放った。
無詠唱でここまでって、フィリアさん普通にこの世界じゃあり得ないほど強いんじゃ……
って! 関心してる場合じゃない。
よし、今日の目標決めた。
フィリアさんの情緒を一緒に探してあげよう。
ついに登場フィリアちゃん!(?)
初登場で言うのもなんですけど、個人的にめっちゃ好きなキャラですw
フィリアちゃん(?)には、是非とも異世界生活を盛り上げていただきたいところですね。




