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117 ラーメン配りの少女 3


 今は、学院のお昼休みだ。

 サリナさんの部屋、つまり学院長室まで向かっている。


 今日の朝、起きてからサリナさんの部屋へと向かい、お昼を学院長室まで持っていくといっておいた。


「サリナさん入りますよ」

『いいわよ』


 ─────お、おぉ?


 目の前には、完全に食事を始める2秒前の体勢のサリナさんが座っている。


 気合入りすぎじゃない?


「は、はっ、はやくっ!! リンちゃん!! もう我慢できない!!」

「わ、わ、わ、わかりましたぁっ!」


 急いでサリナさんの目の前にラーメンを出す。


「たっ、食べ方はっ!?」

「わ、私はまず! スープを飲みます!」


 徐に左手に持っていたスプーンでスープをすくい上げる。


 ─────ズズズっ


「…!? はぁ………っ……なにこれっ……」


 ─────ズズズっ

 ─────ズズッ!!

 ─────ゴクッッゴクッッ!


「ってストーップ!!! そんなに飲んだらスープなくなりますから!!」

「そ、そ、そうなの!?」


 いや飲めばなくなるぐらい考えればわかるでしょうよ。

 今のサリナさん、間違いなくアホになってるよ。


「次に麺を食べてみてください」

「わかったわ!」


 ─────ズルズルッッッ


「………は、はぁっ……」


 ─────ズルッッッ!

 ─────ズルズルッッッッッ!!


「……っ……はぁ……!」


 ─────ズルズルッッ


「……ぁ…っ……─────」

「ってストーップ!! なんか卑猥な声出すのやめてください!!」

「お…おいしい……っ…」


 ダメだ。目がもうダメなやつだ。


 絡まれる前に逃げよう。


「おかわりありません! また作って持ってきますから! 感想はまた落ち着いてからで! それではごゆっくり!」

「……ぁ……まっ…て…」


 何か聞こえたが、聞こえてないフリして、自分のクラスへと転移してきた。




 午後の授業を終え、騎士学院を目指すことにする。

 改めて歩いてみると、かなりでかい敷地だ。

 魔術学院を出てから20分ほど歩いたところで、ようやく正門が見えてきた。


 身分はできることなら明かしたくない。まぁ隠したいのは身分というより肩書きだけどね。

 国王に頼んでもう一枚普通の市民カード作ってもらおうかな。

 もしかしたらいけるかも…?


 とにかく、魔術学院の生徒が騎士学院に来ることは割とあるらしいから、門前払いの可能性はないにしろ、王国騎士団長に個人的に会いにきましたなんて言っても、まず会わせてくれないと思う。

 まぁその時は国王にでも伝言してもらって会えるようにしてもらおうかな。


 そんな事を考えていると正門前に着いた。

 

 門番さんに声をかけてみる。


「あの、王国騎士団の人たちに用があるんですけど、入ることってできますか?」

「む? お嬢ちゃんは伝令に来たのかい?」

「いえ、本当にただの個人的な理由なんですけど…」

「すまんが俺には判断できかねるな。魔術学院の生徒なら敷地に入ることは問題ない。一旦王国騎士団の建物まで行ってみるといい」

「ありがとうございますっ!」


 ひとまず中に入ることに成功した。


 初めて騎士学院の中を歩く。

 大体の場所は魔術学院と同じだ。

 手前に騎士学院があって、その近くに食堂や購買などがある。もう少し進むと寮が見え、さらに奥に高等騎士学院と王国騎士団の本部の建物が並んでいる。


 騎士学院も基本的な授業の流れはうちと一緒だ。

 今は下校の時間と被っているためか、かなりの人で溢れている。


「見ろよあの子、魔術学院の生徒だ」

「かわいいな…」

「あんな子がいるなんて魔術学院が羨ましいよ」

「この後食事でも誘ってこいよ」

「お、お前が行けよ!」


 騎士学院で女子は珍しいのか、そんな会話まで聞こえてくる。

 私の中身は28歳だよ。やめときなさい。


 にぎやかな騎士学院を歩いているも、次第に人気がなくなってくる。

 

 静けさが増す一方で、訓練しているのか剣と剣の重なる音がより際立って聞こえてくる。

 なぜか興味を惹きつけられ、音のする方へ、大きなグラウンドのような場所へと道を変える。


『ヤァーーッ!!』


 ─────ガギィッ!


 ─────カンッッッ!!


 すごい迫力だ。


 グラウンドに近づくと、外なのに熱気が伝わってくる。

 

 ()()……?


『聖炎剣斬ッッッ!』


 ─────ゴゴゴゴォォッ!!!!

 

 剣から、あり得ないほどの威力の炎が打ち出される。

 すごい熱気だ。


 王国騎士団、強くない?


 さすがは王国騎士団。国を守ると言っているだけある。

 魔力が少ないながらも、これまで必死に訓練してきたんだ。魔力が増えた今、この程度の威力になっていても不思議ではない。


 それにしても、剣とのコンビ技もあるんだね。まだこの世界についても知らないことが多すぎて、情報がパンクしそうだ。


 しばらく練習風景を見ていると、テアが語りかけてきた。


『知り合いかの』

『どうした?』


 背後から声をかけられた。


「リン様ではありませんか」


 振り返ると、見知った顔がいた。


「グレンさん!」

「どうしてこちらに?」

「カイルさんに用事があったんですけど、つい練習風景に見惚れてしまって」

「リン様はお若いのに、魅力や素質をお持ちと言うべきでありましょうか、とても14歳には見えませんな」

「そうですかね? あんな大迫力の練習見れば、誰でも興味湧いてくると思うんですけど…」

「お褒めの言葉、我々一同嬉しい限りでございます」

「大袈裟ですよ……」


 グレンさんにも、ノーエさんのストーカー事件以来もお世話になっているし、ラーメン食べてもらおうかな。


「グレンさんはこれからどちらに行くのですか?」

「わたくしもカイル様に報告がありまして」

「私もついて行ってもいいですか?」

「もちろん構いません。これ以上ない護衛について頂けて、わたくしとしても嬉しい限りです」


 グレンさんと一緒にいたことで、王国騎士団の建物へと楽々と入ることができた。

 その後は何事もなくカイルさんとも久しぶりに再会し、グレンさんも交えて世間話をしながらラーメンを食べてもらった。




 その後、王城へと戻りマイシアさん達にラーメンを振る舞い、そのままクシミルさんのお店へと向かった。


 クシミルさんにも食べてもらい、一流の料理人からも絶大なお褒めを頂いたので上機嫌になった。

 夜ご飯を食べていなかったので、クシミルさんがお礼として、あり合わせとは思えないほど美味しい料理を振舞ってくれた。チーズケーキもご馳走してもらい、大満足だ。


 ノーエさんはお休みだったので、そのままノーエさんの家まで向かい、ノーエさんにもラーメンを食べてもらう。


 お礼にノーエさんの作ったチョコレートケーキをご馳走になった。


 スイーツは、別腹だから、大丈夫だよね。

 この世界、体重計ないから、大丈夫だよね。

 太ったら、運動すれば、大丈夫だよね。

 

 眠りにつくまでひたすら自己暗示をかけてたので、私が食べたチョコレートケーキは実質0キロカロリーになった。

少しほっこり回が続きましたが、次回からまたストーリーが少しずつ進んでいきます〜!

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