115 ラーメン配りの少女 1
時刻は13時前。お昼ご飯の時間だ。
まずはシーナとセリに私のラーメンを振る舞う。
そのために……
『聞こえる?』
『『 うわっ!? 』』
便利だね。思念伝達。
『いきなり話しかけて来ないでよ!』
『仕方ないじゃん!』
『で、なによ』
『2人ともいま暇?』
『今は仕込みの最中だよ』
『ひまね』
どうやらセリはお店の仕込みで忙しそうだけど、シーナは暇そうにしていた。
あ、ちょうどいいや。
『2人ともご飯食べた?』
『『 まだなの 』』
『ベストタイミング〜!』
『『 ? 』』
『イリアさんに、お店でみんなで食事できるか聞いてくれない? 私が用意するから。もちろんイリアさんとセアの分も』
『『 もしかして!? 』』
するとすぐにセリから返事が来る。
『いいって!』
『今すぐ集合!』
『『 おーーっ! 』』
─────2秒後。
「はやく食べさせてよ!!」
「楽しみで仕方なかったわよ!」
「リンおねえちゃん! シーナおねえちゃん!」
「あら、リンちゃんの料理なんて楽しみね」
セルニアさんは……いない。
本当にどこにいるの?
「まぁまぁ待ちなされって。まずは座ってちょうだいよ」
みんな大興奮だ。
「セアは熱いの大丈夫なの?」
「うんっ!」
あぁ、かわいいよ。
私はみんなの前に、出来立て熱々のラーメンを出す。
「「「「 おお〜〜〜っ! 」」」」
「これが私の一番好きな食べ物だよ」
私の言葉など、聞く耳を持っていない様子だ。
みんな早く食べたそうにうずうずしてる。
「召し上がれっ!」
「「「「 いただきます! 」」」」
─────10分後。
「おかわりないの?」
「ない」
「絶対ある」
「ない」
「諦めないから」 と、セリ。
「屋敷の料理人さん達には申し訳ないけど、全員クビにしてリンを雇うことにするわ」 と、隠れ過激派のシーナ。
「これがリンちゃんの考えていた料理ってことね…こんなの売ってしまったらますますリンちゃんに恩が返せなくなるわよ」と、イリアさん。
「おなかいっぱぁい」 と、セア。
みんな、初めてラーメンを食べたにしては食べ方がうまかった。
セアだけはフォークで食べていたけど、他はみんな、きちんと箸を使って食べていた。
「じゃあ私は、他のみんなに食べさせてくるから!」
「おかわりあるんじゃない!! ずるい!」
「あんたはいま食べたでしょ」
「ずるいずるいずるいーーっ!」
「こら。セリ、そんなにわがままを言うもんじゃありません」
「うっ。ごめんなさい」
イリアさんに怒られている。
セリが怒られているのは見るのは、初めて会った時に、約束を破って森に行っていたのがバレた時以来だ。
今思えば、もうあれから数年が経ったように感じる。
実際は数ヶ月だけど。
私にとってはそれほど濃密な時間だった。
って、なんで感慨深くなってんの!
「もし余ったらまた食べさせてあげるし、また作ることになるだろうから、そんなに落ち込まないで」
「ほんとっ!?」
「もちろん。でも、ラーメンというのは同じ味を食べ続けるのも悪くないんだけど、いろんな味を楽しむものなのよ。だから次もこの味になるとは限らない」
「えっ…。こんなに美味しいものが次々と出来上がるってこと…?」
「ふっふっふっ。そういうことだよ、セリくん」
「一生ついていきます! マイマスター!」
「今日は許してやろう!」
ラーメンを褒められ機嫌が良くなってきた私は、そのままいろんな人へとラーメンを配りにいく。
まずはノインさんのところに行こうかな。
あの人、いつもお昼遅かったし。
転移を使うのもなんだし、ひさしぶりにデューセルの街を歩くことにする。
なんだかんだ、この街が一番落ち着くかもしれない。
しばらく歩くとノインさんの屋敷に着いた。
門番さんに、ノインさんに会いにきたことを伝えると、私のことを覚えてくれていたのか、すぐに話がついた。
メイドさんに案内させるとのことだったが、何やらお昼を少し過ぎた時間だったためか、メイドさんも休憩中みたいだったので、休んでもらうように言っておいた。
道も覚えているし一人で直接執務室まで行く。
「ノインさーん! リンです」
『リンか。入れ』
執務室の扉を開ける。
「お久しぶりです」
「なぜか、娘が帰ってきたような気分だな」
「大袈裟ですって」
まぁ確かに、ノインさんとは結構色々あった。
「ところでカイルさんは?」
「覚えてないのか?」
「えっと……」
あっ。
カイルさんは王国騎士団の団長になったんだった。
王都で会うこともなかったし、ノインさんの屋敷にずっといたイメージがあったから忘れていた。
「そうでした。また今度挨拶に行かないとだめですね」
「王国騎士団に挨拶に行ける学生など聞いたことないが、リンなら歓迎だろうな」
「あ、あはは……なんか変な役職なすりつけられちゃって………」
「あぁ、サリナに聞いた。他人事であれだが、なんとも面倒そうだな」
「サリナさんもちょっと強引ですけど、国王様は……」
「あ、あぁ…あの方は昔からあんな感じだ」
「もしかして、ノインさんも知り合いなんですか?」
「まぁそんなところだ」
もしかしてノインさんって、この国の中では意外と権力者だったりするのかな…?
今更だけど。
「ところで今日はどうしたんだ?」
「あ、そうだ。私、料理を作ったんですけど、もしよければ食べてもらえませんか?」
「リンが作ったのか?」
「はいっ! けど、すぐに食べないとダメなやつで、もし今厳しかったらまた後日持ってきますよ。ノインさんの前では気遣いなく転移使えますし」
「せっかくだ。いただくとしよう」
「料理人さん達には私から謝っときますね」
「いや、その必要はない。昼は基本、用意しないでいいと言ってあるんだ」
「えっ? そうなんですか」
「以前、イリアさんのところのカレーを食べただろ? 冒険者時代にもあまり外で飯を食う機会がなかったんだ。街にあんな美味しい料理があるなんて衝撃でな。知らなくては領主など名乗れん。それ以来、昼は外で食べるようにしてるんだ」
「だ、大丈夫なんですかそれ…毒とか…」
「なんとかなるだろ」
ノインさんも意外と脳筋の節が…?
「クレアも呼んだら食べますか?」
「どうだろうな。聞いてみよう」
ノインさんが、執事さんにクレアを呼ぶように言う。
しばらくするとクレアが来た。
クレアとも久しぶりに会う。改めて見ると、すごく可愛らしい子だ。
「クレア! 久しぶりね」
「リンさん、お久しぶりです。お呼びとの事ですが、どうされたのですか?」
「ご飯食べた?」
「今日は少し起きるのが遅かったので…その……まだ食べておりません」
「ってことは、今からご飯食べれる?」
「は、はいっ」
「よしっ! そうと決まれば!」
2人と一緒に食事のできる場所へと移る。
用意もできたので、2人の前にラーメンを出す。
「「 おぉ〜っ 」」
「これが、ラーメンというやつなんです」
「「 らーめん 」」
セアはフォークが良かったらしいけど、クレアはどうだろう。一応聞いてみよう。
「2人とも、お箸使えますか?」
「「 もちろん 」」
「私は一口目はスープだけを飲むようにしてるんですけど、中に入っている麺を食べるもよし、具から食べるもよし、自分の好きなように楽しんでくださいね」
「「 い、いただきます 」」
─────ズズズッ
2人がスープを飲み、感動している。
確かに、そりゃそうなる。
私も最初、本当のラーメンを食べた時その反応になったよ。
2人が食べ終わり、言うまでもなく散々ベタ褒めされた。
お昼ご飯の時間ももう終わりだし、次に配る人は夕ご飯にしてもらおうかね。
ノインさんに現状報告をしたりクレアと遊んだりしながら、夕方前まで時間を潰すことにする。




