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111 夢のラーメン作り Vol.1

 

 ついにこの時がやってきたよ。


 私は今、サリナさんの屋敷にあるキッチンに立っている。

 もちろんのこと、言うまでもない。


 ラーメン作りだ。


 サリナさんにキッチンを貸して欲しいと頼んだところ「そんなこと聞いてくる必要ないわ!! 早く食べさせて頂戴!!」と、即答だった。


 というわけで今日はまず、麺から作る。

 

 一般に、ラーメンに使用される麺は、卵の有無などの違いは置いておいて、根本的に必要不可欠な材料が存在する。


 水は当たり前だから一旦置いておく。


 まずは小麦粉だ。

 小麦粉といっても、様々な種類がある。薄力粉や中力粉、強力粉といったもの。


 ラーメンは一般的に、強力粉が望ましい。

 

 もちろん理由はある。

 ラーメンのコシを生んでいるものが、小麦粉に含まれている、グルテニンとグリアジンという物質である。

 小麦粉の種類の違いは、これらの含有率によって決まるのだ。

 そして、これらが多く含まれている強力粉であるほど、小麦粉としては硬くなる。つまりはコシが出るということだ。


 逆にケーキなどに使う薄力粉は、含有率が低い。

 つまり、柔らかい小麦粉ということになる。


 それの中間が中力粉だ。例としては、うどんなどが挙げられるのだが、実はこれもラーメンの材料として使われることもある。


 この世界で、そんなことを知っている人なんていないかもしれないが、実は無意識のうちにみんな使い分けている。


 その証拠が、パンとケーキだ。

 パンには強力粉、ケーキには薄力粉を使う。

 つまり「パンを作る小麦粉をください」といえば、自然とそれが強力粉になっていることが多い。


 もちろん、薄力粉でパンを作ることだってできるけど、中身がスカスカになって美味しくなかったり、水と混ぜるとベタベタになってしまったりする。

 さすがにこの世界のパン職人の人たちも、それぐらいの違いはわかるはずだ。


 私の場合はクシミルさんに聞いたから間違いないよ。

 というわけで、小麦粉の問題は解決だ。


 次に大事な材料が、かんすいと呼ばれるもの。

 かんすいの主成分は炭酸ナトリウムで、重曹の親戚みたいなものだ。


 かんすいの働きは、コシを増大させ、麺の滑らかさをより強くすることにある。


 もしラーメンに使う麺にかんすいが入っていないと、少し大袈裟に言えば何か柔らかいような、コシが弱いような、喉越しも悪いような、なんとも言えない仕上がりの麺になってしまう。


 まぁつまりだね、普段からラーメンに馴染みのない人からすれば聞いたこともないような名前の材料だけど、ラーメンには絶対に必要なものということだ。


 かんすいを工業的に作るには、中々にハードルが高い。

 さすがの私もそこまでは知らない。

 重曹を加熱すれば、ほとんど近しいものはできるんだけど、そもそも重曹という概念がこの世界にあるのかもわからない。


 クシミルさんに聞いたところ、パンを作る際には、ある地方が原産地になっている、特殊な水を使うそうだ。

 要するに、その水の中に重曹の成分が溶け込んでいるんだと思う。


 かんすいの発祥も、実はそんな感じだ。


 しかしまぁ、確信を持って「これがかんすいだ!」と言えるようなものは、この世界にまだない。


 というわけで、作った。


 転生だから、できたこと。

 

 頭の中で『転生転生転生〜!』と、少年が階段を駆け登っている。


 いやぁ、本当にこういう時に便利だね。私の脳筋魔法は。

 炭酸ナトリウムをイメージしただけで、簡単に作れたよ。


 まぁ、水素と酸素をイメージして出せてるんだから、炭酸ナトリウムぐらい出てくれなきゃ困る。

 炭酸ナトリウムだけ仲間外れだと、可哀想だからね。


 何はともあれ、麺を作るにあたっての材料の準備はバッチリだ。

 

 さて、次に加水率というものを考える。

 加水率とは、麺に含まれている水分量のことだ。

 簡単にいうと『加水率30%』なら『小麦粉100gに対して水が30g含まれている』ということを表している。


 一般に、とんこつラーメンなどで使われる細麺は、低加水と呼ばれており、加水率が約27%程度である。

 対照的に、味噌ラーメンなどに使われることが多い太麺でモチモチしたような麺は、多加水と呼ばれ、約39%以上であることが多い。


 低加水は、麺そのものに水分が少ない。

 そのためメリットとしては、茹で時間が極めて早い上に、小麦粉そのものの味をしっかりと感じることができる上に、スープにもよく絡む。

 デメリットとしては、すぐにスープを吸ってしまい、比較的早くブヨブヨになり伸びてしまうことだろうか。


 多加水は、麺そのものの水分が多い。

 メリットとしては、元々水分を多く含むため、伸びにくい。

 デメリットとしては、茹で時間が長くなることや、スープがあまり絡んでこないことだろうか。


 とはいえ、両者それぞれのメリットやデメリットをカバーし合っている。


 とんこつラーメンはなぜ細麺の低加水なのか、ここまで知っていれば、答えは見えてくるかもしれない。


 加水率は、極めれば極めるほどに面白い世界だ。

 1%違うだけで、食感や喉越しはもちろん、風味まで変わってくることもある。


 って私、誰に喋ってるんだろ。


 ま、まぁいい。

 ひとまず今回は少し多加水寄りで作る。

 

 完璧に個人的な好みだけどね。

 今回作るあっさり目の牛骨スープとなれば、麺は平べったくカットして、手で揉んでクセをつける。

 するとピロピロした麺になる。


 それがまたおいしいんだよね。


「待ってろよ! 愛しのラーメンよ!!! ふっふっふっ……! ふははははははっっ!!!!!!」

「騒ぎすぎじゃ」


 ─────こうして私のラーメン作りが始まった。



今回から5話ほど、ラーメン作りをしていきますっ!!

ストーリーが進まないので、焦ったく感じる方もいるかもしれませんが、どうか温かい目で異世界ラーメン作りを見守って頂きますようお願いしますっっ!

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― 新着の感想 ―
[一言] >今回から5話ほど、ラーメン作りをしていきますっ!! …むしろ、今までがプロローグ?
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