109 学院のとある昼休み
「「「「 アッハッハッハッ!! 」」」」
「ちょ、ちょっと、笑いすぎだよぉ…」
今はお昼休みだ。
元々5人のうち3人が仲良しという、異色のクラス編成だったかもしれないが、かなり時間も経ち、メルとリィクも含めてみんな仲良しになることができた。
それはそうと、この大爆笑の原因はメルにある。
なんともない会話から、子供の頃の親との約束という話になった。
「街から出ちゃいけない」「人の少ないところに行ってはいけない」と、可愛いもんばっかりだったが、メルだけどうやら違った。
「溝にハマらないように気をつけてました」
「「「「 ブフッ 」」」」
これに始まり、メルと私たちの違いを楽しんでいたら、ご覧の通りの有り様になっていた。
メルの出身地はストレーンという街だ。
街とは言っても、相当な田舎らしい。
言わば、ただのでかい村だ。
メルはちょっと天然なところがある。
田舎者の天然はちょっとおもしろいよね。
この魔術学院は、入学する事すらなかなか困難な上に、メルはその中でもトップクラスの成績を修めて、ここにいることになる。
そんなメルが、周りに何もない街で、どういうモチベーションで勉強していたのかと聞かれると「王都や街は御伽噺の世界だと思っていて…」と言い出したのだ。
御伽噺が面白くて、つい興味がそそられて勉強していたのだと。
今年イチの天然だ(?)
どうやら、メルは王都のキラキラ感や街の賑やかな雰囲気は、本当に昔の話だと思っていたようだ。
さすがに笑われるよそれは。
だから学院に試験を受けにに来たとき、自分の学んでいた御伽噺が現実として目の前に現れたから、大混乱してしまったらしい。
そんな話もあり、S-1クラスは大賑わいというわけだ。
しばらくすると、ネアン先生がうちの教室を訪ねてきた。
「リンちゃん? ちょっといい?」
「あっ、ネアン先生!」と、私。
「ネアン先生だ!」と、セリ。
「ネアン先生〜!」と、リィク。
「ネアン先生助けてください…」と、メル。
そんな中1人だけは違う感想を漏らしている。
「あぁっ…かわいいっ…」
もちろん、シーナだよ。
シーナはテアやセアみたいな可愛い子に目がないのは言うまでもなかったが、まさか年上もいけたとは。
たしかにネアン先生は結構可愛い。
これで30歳手前というのだから、人生勝ち組だ。
「ここのクラスが1番少ないはずなのに、1番騒がしいってどういうことなのよほんと…」
「仲がいい証拠ですよ」
「そんなことわかっているわよ。けどどうしてもね、他の学年のS-1はなんというか、結構ピリピリしてることが多いから」
「どうしてですか?」
「クラス替えがあるからよ」
「あぁ……」
「あなたたち5人は、おそらく不動だけどね」
「たしかに」
メルとリィクも、私たちに負けないように、これ以上遅れを取らないようにと、必死に魔法の練習をしている。
その甲斐あってか、2人の魔法もなかなかのものに成長してきている。
「ところでネアン先生、どうしたんですか?」
「えっと、同じ1年の子に頼まれてきたんだけど、リンちゃんに話があるそうなの」
「うん? どうして直接こないんですか?」
「知らない人からすればS-1クラスなんて誰も近寄りたくはないわよ」
「うっ」
普段は学年全体で授業を受けるけど、今日は朝からクラス別で授業をしていた。
タイミングがなかったと言えば、なかったことになるけど、どうして今日なの。
「この子よ」
すると、ネアン先生の後ろからひょこっと生徒が現れた。
「フレア…?」
「リンさんっ!!」
そこにいたのは、フレアだった。
この国の、王女だ。
シーナはフレアのことを覚えていたらしく「あら、あなたは確かあのときの」とつぶやいている。
一方、セリは「どこかで見たことあるような…」と頭を悩ませている。
以前にフレアが冒険者ギルドで絡まれていた時に助けたから、2人とも一応面識がある。
その横でリィクは「フレアってたしか…」とつぶやいている。
そんな中、メルが正解に辿り着けたようだ。
「フレア…って…? 王女様…?」
メルの一言で4人がハッとなる。
「王女様…?」
「……」
シーナの問いに、メルは口をつぐんでいる。
「シーナ。フレアはあなたと同じ気持ちだから」
「あら、そうだったのね」
フレアは、王女様と言う肩書きを背負っているためか、どうやら友達付き合いに苦労している。
それは、貴族であるシーナも同じだ。
しかしこの国は、貴族や王族の子供を表舞台に出すという習慣はあまりなく、4人達の反応を見ればわかるが、初見で遭遇しても「お、王女様! ハハァッ!! ありがたき幸せぇ…!」とはならない。
名前だけは広まっているけど、顔バレはあまりしてないということだ。
13歳から一応大人とは言え、貴族や王族としての務めを果たすのは、20歳を過ぎてからとなっている。
そりゃそうだ。
とは言っても、王族だ。
リィクの一言が、ちょうどその様子を表していた。
「う、噂は本当だったのですね…」
ご覧の通り、やはりどこかしらで噂になることに間違いはない。
「あの、みなさんお騒がせしてすいません…。一応、学院ではフレイアと名乗っているので…その……」
なんとも絶妙にバレそうな偽名だこと。
「ということだから、みんな頼むわよ」
「ネアン先生はこのこと知っていたんですか?」
「当然よセリちゃん。こう見えても先生だから」
そんなことよりフレアに謝らなくては…
「フレア、ごめんね…」
「ど、どうしてリンさんが謝っているの!?」
「えっ。私がフレアの名前を呼んじゃったから、その、偽名使ってるの知らなくって」
「知られてたら偽名の意味ないから大丈夫だよ…」
「うーん…そう?」
まぁたしかにそうかもしれないけど………
なんか申し訳ないよ。
けど本人が本当に気にしてなさそうだから、これ以上引っ張るのはやめとこう。
「そんなことよりさ、今日わたしの家で、一緒にご飯、食べたくて、その…」
さては、この様子…。
友達を増やしにきたか…っ!
よしっ! 私に任せておけ!
「それなら、この4人も連れていくね」
その一言で、この場にいる私以外の14歳5人が、2つの顔に分かれた。
シーナとフレアは、とびっきりの笑顔だ。
メルとリィク、加えてセリは、オシャレなカフェでパンケーキを頼んだのに、間違えて麻婆豆腐が出てきた時くらいの衝撃が顔に出ている。
「「「 いきなり言われても無理です! 」」」
なんともまぁこんな長いフレーズをよく3人でハモれるよ。
そういえばセリも、今はシーナとこれほどまで仲良くなっているけど、最初会った時はガタガタ震えてたっけ。
「まぁまぁ。じゃあ今日は私の家でお話しでもしようよ。徐々に慣れてくればいいじゃない」
「そ、そんなわたしみたいな平民が…」
フレアの顔を見てご覧よ。
メルがそんなこと言うからめちゃくちゃ悲しんでるよ。
「メル。そんなこと言ってしまえば、シーナだって貴族なのよ」
「そ、それは……」
「そりゃ王族のほうが立場が上かもしれないけど、友達は友達」
私、いいこと言った。
中身ペラペラな気がするけど。
「そ、そうかもだけど…いきなりは…」
「だから私の家で一旦お話ししよって言ってるんじゃない!」
「うふふ。これは逃げられないわよ?」
「うっ。シーナまで……」
メルが必死に抵抗していたが、どうやらここまで言われると、さすがに折れてしまったらしい。
顔に諦めが出ている。
リィクとセリは変わらず固まっている。
「ということだからフレア。授業が終わったら私の家にきてくれない?」
「うんっ!」
フレアが満面の笑みだ。
そんなフレアにしか聞こえないように、小声で話しかける。
「ごめんね? ほんとは一緒に行けばいいんだけど、多分みんなお食事に連れて行くから、この人数を先に伝えといて欲しいの」
「ほんとっ? わかった!」
満面の笑みに、極上の笑みがプラスされた。
すごい笑顔で去って行くフレアさん。
「フレアがあんなに笑顔になっているところは初めて見るわね。さすがリンちゃん」
「あ、ネアン先生も来ますか?」
「え、遠慮しておくわ」
ネアン先生の顔が少し引き攣っている。
これが、あの脳筋国王を知らない人たちの、普通の反応なのかもしれない。
あっ。
あの国王がベロベロに酔っ払って、1人芝居地獄の再公演だけは避けたい。
できるだけ参加はご遠慮願いたいね。
おかげさまでPV5万突破しました〜!
評価も気づいたら300Pt突破しておりました。
本当にありがとうございます!!




