108 使いっ走り
私の目の前には、一応この国の王様をしているオジサンがいる。
チーズ村のミーグさんから託された手紙を見せたところだ。
「それにしても、そんな堅苦しい手紙わざわざ書く必要ないだろ。代わりの魔道具を用意させるから持っていってくれ」
「私が?」
「転移でいけばすぐだろ」
「転移がバレるよ」
「いいだろ」
「よくない」
「こうしてる間にも村が襲われているかもし─────」
「わかりました! はいはい! いけばいいんでしょ! もう!!」
「ガッハッハ! 頼んだぞ」
ガッハッハじゃねぇよ。
「それより、魔除けの魔道具ってそんなにポンポン使っていいものなの? 前も、街が保管してたの。盗まれたとか言ってたし」
「いっぱいあるから問題ない」
えっ、そんなもんなの?
もっと貴重品かと思ってたよ。
「この国だけで500個近くは保有している」
「そんなに!?」
「あぁ」
ミーグさんがあれだけ不安そうにしてたのに、実際はそうでもなかったってことね。
「だが、やはり盗まれるようなこともあってか、少しずつ量は減ってきている」
「それでも500個あれば大丈夫でしょ。魔除けの範囲ってどれくらいなの?」
「だいたい直径2キロほどだな」
「村1つくらいは余裕ってことね」
「そうなるな。しかしこのことは内緒にしてくれよ」
「あ、そうなの?」
「当たり前だ。たくさんあるからと言ってむやみに使われてしまっては、いざというときに無いなんてことが起こるかもしれない。そんなこともわからないのか? ハッハッハッ!」
「うっ……」
わ、私だってそれぐらい考えればわかるし!!
「普通は盗まれれば、管理不足として多少の制裁をすることにしてある。ホイホイ渡していれば不自然だからな。しかし今回は村に犠牲者も出ている。そんな中、金を払えなんてとてもじゃないが俺には言えん」
「へぇ〜…」
「な、なんだ」
「意外とやりますね」
「意外とってなんだ!」
脳筋にしてはなかなか優しい発想だ。
「じゃあ私がパッて届けてくるので、それでこの問題は解決ですね」
「そのようにしておこう」
すると、部屋の扉が開き、私の中で優秀すぎて怖いと話題の執事さんが魔道具らしきものを持ってきた。
「これを持って行ってくれ」
そう言われて、執事さんから魔道具を受け取る。
うん。嫌な予感がする。もう行こう。
「わかった。じゃあ私もう行くから」
「あ、待て! 最後に一発魔法を─────」
私はチーズ村へと転移した。
村へ入ると、みんな徐々に普段の生活に戻っているようだ。
亡くなってしまった人もいるのは事実だから、私からすればみんな強い人たちだ。
「あれ、リンじゃないか」
「ミーグさん! ちょうどよかった」
村に入ってすぐ、ミーグさんに声をかけられた。
「な、何かあったのか…?」
「えっと、魔道具を預かってきたのでそれを───」
「なにっ!?」
「…そうなりますよね」
仕方ない。テアのことだけでも話すか。
もちろんテアの許可は取ってるよ。
「この子に乗ってくれば、王都まではすぐ着くので」
テアの頭を撫でてあげる。
「そ、そうなのか……まぁそういうことなら…」
「納得してくれたんですか!?」
「納得するもなにも、こういうことは深追いしてはいけないと爺さんが言っていた」
「いい教訓ですねそれ」
私も使おうかな。
しつこく聞かれたら「深追いしない方が身のためですよ」とか言ってみたり。
「なにはともあれありがとう」
「いえいえ、じゃあ私行きますね」
「まてまて! ひとつ、いい土産がある」
そう言ってミーグさんは冷蔵倉庫へと案内してくれる。
「これは……っ!」
「牛骨だ。これだけ保管してあったので持って帰るといい」
「あの、ありがとうございます!!」
私は金貨を1枚渡そうとする。
「そんなものは、しまってくれ」
「えっ、そういうわけには…」
「これはお礼だ。仮にお金を払ってくれたとしても、これじゃああまりにも多すぎる。今回だけはこのまま受け取ってくれないか」
「じゃあ、本当に次からは絶対にお金受け取ってくださいね」
「気持ちとしては受け取れないが、もうリンが来てくれないとなってしまうのも悲しいしな。受け取るとしよう」
ミーグさんと約束をし、今回は牛骨をタダで頂くことになった。
私の収納魔法なら、時間が止まっているからどれだけ保存していても腐ったり劣化することはない。
何気に、自分の魔法で1番ありがたい機能かもしれない。
「それにしても、普通はそんなすぐに国王様へと話がつかないものなんだが。昨日の今日で……」
「あ、あぁ! それは、まぁ緊急事態だと門兵に伝えたら、ね!」
「そうなのか……?」
深追いはなんとやらだよ。
「じゃあ本当に私行きますね。こんな立派な牛骨までいただいて。ありがとうございます」
「あぁ。こちらこそ助かった。またいつでもチーズを買いに来てくれ」
「また近いうちに来ますね!」
ミーグさんと別れた私は、村を後にする。
ストーリーには関係ないのですが、別れというのは本当に突然やってきますね……
急じゃない別れはないかもしれませんが、やっぱり簡単には受け入れ難いですよねぇ……。




