105 何かしらの虫
「ねぇテア。任せていい?」
「面倒じゃ」
テアに断られた。
私の作戦はもうない。
仕方ない……。
頑張って克服しよう。
人間相手じゃないので、とりあえず探知魔法を使ってみる。
確かに、地中に不自然な魔力反応がある。
数が多い……。
もやもやした魔力が100以上あるように見える。
「テア〜〜。全部とは言わないからさ、さすがに手伝ってよ」
「妾が手伝うまでもないと思っておったがの」
「100はくだらないよこれ」
「リン。まさかとは思うが、1体ずつ相手にしようと考えていたのではあるまいな?」
「えっ? そのつもりだったんだけど」
逆にどうするの?
「仕方がないの。リンに妾の感覚を共有してやろう」
「うん?」
すると、私の意識がテアのものへと変わっていく。
─────っっ!!!
すごい! なにこれっ!!
地中が見える!!
「ねぇこれどうやってるの!?」
「魔法というよりは触覚に近いのかもしれんの」
「私にはできないじゃん」
「ふふふ。まぁリンならいずれ魔法で出来るようになっておろう」
「うーん。なんかあんまりいらない……かも……」
使い道あんまりなさそうだし、テアがいれば問題ないよね。
そんなことより、地中の構造をよく見てみる。
どうやらアリの巣のようになっており、1つの穴から、全ての穴が繋がっているようだ。
その中に…………うっ。
虫がいっぱいいる………。
きもちわるっ…。
テアのおかげか、うっすら形が見える。
イモムシみたいな体型なのに、ムカデみたいに足がびっしり生えている。ほんとうにむり。
ま、まぁとにかく、穴の構造はプラスに捉えよう。
こういう構造をしてるということは、一つの穴から高火力で魔法を放てば全ての通路を通って駆除できるということだよね。
けど、ほかの穴から出てこられたらちょっと困る。
まずは穴を塞ぐところから始めようかな。
テアの感覚からわかる限り、穴は全部で6個ある。
100以上の虫に穴が6個って少ない気もするけど……こちらとしてはありがたい。
村の中に2つ、外に4つある。
とりあえず村の中から塞いでいくことにする。
穴の前に着くと、直径3m程度の穴が空いていた。
異世界では定番かもしれないけど、現実で生きてきた私には、このサイズがもはや虫というジャンルに収まるのかわからないよ。
穴を見た感じ土を掘ってるだけなので、土で埋めてやれば問題ないよね。
ただ、また掘り返される(?)と面倒なので、魔力を込めてかなりの強度を意識しておく。
同じように村の中にある最後の穴を埋め終わる。
「あとは村の外か。出てこなきゃいい─────」
やべっ! フラグだ。
「出てきてほしいなぁ〜! 戦いたいなぁ〜! 私虫が好きだから! 存分に出てきて欲しいなぁ〜!」
フラグを立てておく。
まず村から1番近い場所に、上空から目指すことにする。
「あれだね」
「そのようじゃ」
これまでの穴と同じだ。
なるべく早くしないと、穴を塞いだことがバレてしまったら、残りの穴から噴き出てくるなんてことがあるかもしれない。
とはいえ、時間のかかる話ではない。穴の前まで行けば、数秒で穴は塞げる。
村の外にあった1つ目の穴は何事もなく塞ぎ終えた。
2つ目、3つ目も順調に塞ぎ終える。
さて、残りはあとひとつ。
目の前にある穴だけだ。
よく考えてみれば、この穴だけ結構森の奥にあるな…。
試しに探知魔法を使うも、怪しげな魔力の反応はない。
「この形が幼虫とかで、成虫がもっとヤバかったりしなければいいんだけどね…」
「その可能性もあるじゃろうが、今はどちらにせよこいつらだけのようじゃの」
まぁ変なことを考えていてはキリがない。
さっさと終わらせよう。
やっぱり火属性がいいかな。
高温にすれば、例え火が回らなかったとしても倒せるよね。
あまり高火力すぎて土が溶けてマグマになられても困るので、適度な火力で炎魔法を発動する。
─────ボォォォォッ…
地中にに炎が這い巡る。
─────ギィィィィッッ!
何やら悲鳴のような鳴き声が聞こえてきた。
効いてるようだ。
しばらく時間が経った。
一応5分くらい燃やした。
「どんな感じかな?」
探知魔法を使ってみる。
が、反応はない。
どうやら全部やれたようだ。
掘り起こして証拠を集めてもいいけど、絶対に嫌だ。
地中で永遠に眠っててほしい。
土壌の栄養になってほしい。
などと考えていると、テアが呟く。
「地中の奥に、何か生物の反応があるの」
「えっ?」
「魔力が感じ取れん。どうやら魔物ではないようじゃが」
「姿はわかる?」
「姿はわからんが、生き物がいることは確かじゃ。それに、どうやら、そやつのおる場所は周りが塞がっておるようじゃな」
「冬眠中ってことなの?」
「わからぬな」
うーん。
私の探知魔法は、魔人化してなかったとしても人間の魔力は感じ取れる。
けど、ただの動物や生き物の魔力は感じることができない。
もし村の人たちが閉じ込められているとかなら、私の探知魔法に反応するはずだ。
それに反応しないということは、少なくとも人間ではない。
もちろん魔物でもない。
けど、テアの探知は触覚のようなものだ。
魔力の有無に関わらず探知できるようだし、テアが言うには間違いないのだろう。
そうなると……。
「とりあえず今は放っておいてもいいんじゃない? だってただの生き物ってことでしょ?」
「まぁ、そうなるの。無理に討伐する必要もなかろう」
魔物の巣の近くにいたとは言え、ただの動物という可能性だってある。
その動物が冬眠(?)してて、たまたまその周りに魔物の巣ができたとも考えられるわけだし。
無駄な殺生はできる限りしたくない。
魔物化する可能性だってあるかもしれないが、そんなこと言ってしまえばこの世界の全ての生き物がそれに当てはまる。
人間とて変わらない。
そんな理由で討伐する気にはどうしてもなれない。
「ひとまずは解決じゃの。ここの穴も埋めておくとするかの」
テアが最後の穴を埋めてくれる。
そこだけは手伝ってくれるのね。
「じゃあ村に戻ろっか」
「うむ」
テアが私の中に入ってくる。
そのまま、皆が避難している大きな家の前へと転移した。
でかい虫は無事に出てくることなく土へと還りましたとさ……




