お姫様とお兄様の友人
お父様とお母様の背中に身をひそめながらエリオットお兄様と楽しそうに話す客人_アレクシアス・グレイヴァルト様を見つめる。
ノルディア国の公爵家の跡取りである彼はグレイヴァルト家の象徴である綺麗な銀髪をしていた。
絵本には出てこなかったキャラクターの登場にどうしていいか分からず、輪に入れずにいる。
「リリィ、出てらっしゃい」
『…はい』
お母様に促され、お父様とお母様の間に立つとアレクシアス様と目が合う。
「アレク、僕の妹、リリオールだ」
『…お初にお目にかかります。リリオール・アルカンティア・ルシエラです』
「はじめまして、リリオール第二王女。アレクシアス・グレイヴァルトと申します、お会いできて光栄です」
深々と挨拶をしたアレクシアス様は人当たりの良い笑顔を浮かべた。
引きつる口角を無理やりあげて笑顔を返す。
お兄様に案内されて歩いていくアレクシアス様の後姿を見ながら小さくため息を吐く。
(絵本のリリオールだったらもっと完璧にこなした…ダメダメね)
その時、ぽんっと肩を叩かれ振り返ると笑顔のお母様。
「リリィもエリオットと一緒にアレクシアス様を案内してあげなさい」
『え…あ、はい』
お兄様のご友人なのだから私が出る幕ではないのじゃないか、とも思ったが有無を言わさない笑顔を向けられたら私は頷くことしかできなかった。
少しばかり小さくなった二人の背中を追いかけるように早歩きをした。
「ここが温室だ。母様とリリィが世話をしている」
「へぇ、こんな立派な温室は初めて見たよ。リリオール様はお花が好きなんですか?」
お兄様たちの後をついてきたはいいものの、何を話していいのか分からず笑顔で二人の言葉に頷きながらついてきた。
これも淑女教育の一環なのだろうかとため息がこぼれそうになるのを必死に抑え込む。
「リリィ?」
お兄様のご友人でお父様の古くからの友人の息子。
アレクシアス様の肩書を並べれば並べるほど、私がここにいることが場違いな気がしてたまらない。
「リリィ!」
『は、はい!』
お兄様の声にハッと我に返るといつの間にか温室に来ていた。
お兄様は呆れたように私を見つめ、首を左右に振った。
「客の案内中に上の空になるな」
『ご、ごめんなさい…』
「まぁまぁ、僕の案内に付き合ってくれているのはリリオール様なんだからそんなに怒らないでエリオット」
アレクシアス様の言葉にお兄様は深いため息を吐いたあと私を見つめた。
「アレクが花が好きなのか、ってさ」
『え、あ、はい!お母様のお手伝いで育てているだけですけど…』
ずっと上の空だった私を退屈させまいとアレクシアス様が質問を投げかけてくださったのに、それにも気が付かず意図せずとも無視してしまったらしく反省する。
「それでもすごいです、ここの植物たちは生き生きしていますからとても愛情を込められているんですね」
『そんな…ありがとうございます』
ガーデニングは淑女のたしなみです、といわれ始めた花の世話。
初めてする土いじりに悪戦苦闘したが、意外と性に合ってたらしく今では楽しくしている。
「もっと小さい頃は土だらけになってそこらじゅうの花を摘んではアルフレッドを怒らせてたからな、その時に比べれば成長したんじゃねーの」
『お兄様、余計なことを言わないでください』
べぇ、と舌を出すお兄様に怒りがわいたがお客様の前で争いをするわけにはいかない。
アレクシアス様はクスリと笑って仲がいいんですね、といった。
『まさか、ただ血がつながった家族ってだけです』
「そうだぞアレク。兄様と姉様が学園に行くとき、大号泣したこいつと仲がいいなんて、そんなわけないだろ」
『お兄様は余計なことを言いたくなる魔法にでもかかっていらっしゃるのかしら?』
私とお兄様のにらみ合いにアレクシアス様はさっきより大きな声で笑った。




