お姫様と淑女教育
慌ただしく終わった誕生日パーティーでの魔力鑑定のことはすぐに国中に広まった。
次の日のアルカンティア情報誌の表紙を飾るぐらい大事になった。
アルカンティア国の第二王女が二属性持ち、さらに”光と闇”の魔力という史上初の事例に驚きと不安が広がった。
これは悪い兆しの前兆なのではないか、なんて噂も立ってしまうほどこの事案はあまりにも不可思議なことらしい。
パーティー以降、王宮からすら出ていない私の耳にもその噂が入ってきたということは国民はそれほど不安を抱えているのだろう。
国民たちの噂もあながち間違いではないのだが、家族たちのおかげで不安とともに消えた。
お父様が、イリュウィア様がわが娘に大きな守護を与えてくださった、と正式な場で発表したことにより国王がそういうのなら、と逆に祝福の声すらあがるようになった。
おかげで国内国外からお見合い話が殺到し、お父様とルシウスお兄様が燃やし凍らせたことにより私の手元に届くことはなかった。
お兄様たちやお姉様にはすでに婚約者がいるが私にはそんな気配すらなく、少し不安になってお母様に相談したところ
「ちゃんと考えているから大丈夫よ」
と有無を言わせない笑みを浮かべて言われてしまったためそれ以上追及することはできなかった。
王族として生まれた以上恋愛結婚なんて望んでいないが、候補でもいるのなら教えてほしいと思うのは私に前世の記憶があるからだろうか。
お父様に猫かわいがりされ、お母様に厳しくも愛を注がれ、ルシウスお兄様からやまないプレゼントを受け取り、セレナお姉様とお茶をしながらガールズトークを繰り広げ、エリオットお兄様に意地悪されやりかえしを繰り返しながら王宮で生活し1年過ぎたころ。
「そこまで!素晴らしいですわ、第二王女殿下。第一王女殿下も呑み込みの早いお方でしたが、殿下も負けず劣らずですわ」
『ありがとうございます、先生』
リリオール・アルカンティア・ルシエラ、六歳になりました。
淑女教育と魔法訓練が本格的に始まり約一か月。
お姉様から独自に教わっていたこともあり、特に躓くこともなくきている。
「今日はこの辺にいたしましょう。また来週お会いしましょう」
『はい、ありがとうございました』
カーテシーをして先生を見送ると部屋には私とアルとマリー、そしてレオだけになった。
『…あー!つかれた!!!』
ばたっと床に倒れこみ仰向けになる。
ひんやりとした床が熱を持った身体を冷やしてくれる。
「リリィ様、はしたないですぞ!」
『いいじゃん、だれも見てないよ』
「我々が見ております」
『アルたちは大丈夫なの~』
キャンキャンと小言をいうアルの言葉を聞き流しながら天井を見つめる。
淑女教育はお母様が監督となって行われている。
仕事熱心で厳しく隙がないと有名なお母様は淑女教育にもとても熱心に積極的に関わろうとしてくれるおかげでとても厳しい内容になっている。
教育が始まって一か月がたつもの、いまだドレスに隠れた足はプルプルと震えている。
上半身を起こすとマリーがタオルをもってきてくれた。
「お疲れさまでした、リリィ様。入浴の準備が整っております」
『ありがとう、マリー』
これを平気な顔でしているお姉様やお母様を改めて尊敬しながらタオルで汗を拭く。
立ち上がろうとすると、すっと差し出される手に顔をあげるとレオが微笑んでいた。
「お手をどうぞ」
『ありがとう、レオ』
立ち上がってドレスの裾を払うとアルフレッドの小言はいつの間にか終わっていて、扉の近くで待機していた。
「ディナー楽しみにしている、とルシウス殿下より伝達を頼まれました」
『お兄様も律儀ね、私も楽しみにしていると伝えておいてくれる?』
「かしこまりました」
今日は久しぶりにお兄様とディナーを一緒にできる日。
去年、私の誕生日の数か月後に帝都魔法学校に入学したお兄様は入学と同時に寮に入り今まで以上に顔を合わせることが難しくなってしまった。
しかし、昨日から帰省中で今日は久しぶりのふたりきりディナーだ。
『うんとおめかししてちょうだいね、マリー!』
「おまかせください、最上級の施しをいたします」




