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お姫様と未来

「リリィはお部屋でゆっくりしていて。お姉様はお父様たちとおはなしをしてくるわ」



部屋まで送ってくれたお姉様がそう言っていなくなってから数十分。

少しひとりにしてほしい、と言うと返事をしたアルフレッドはマリーとレオを連れて部屋を出た。

私は力なくベッドに倒れこんでぼーっとしていた。


いつまでもぼーっとしているわけにはいかないと、ひとまず”星のおひめさま”の内容をおさらいしようと体を起こし、椅子によじ登ってテーブルの上に紙とペンを取り出した。



とある国の、星がいちばん美しく輝いた夜、ひとりのお姫様が生まれました。

お姫様は、家族にも国の人々にも大切にされ、

誰よりもやさしく、誰よりも人を想う子に育ちました。

とあるお祝いのパーティーの中で、お姫様は自分に“特別な力”が宿っていることを知ります。


その力は、人を照らし、守るための光。

お姫様は決めました。

「この力を、大好きなみんなのために使う」と。


けれどある日、国に黒い影が現れます。

人々の心に不安を落とし、すべてを覆い尽くそうとする闇でした。

誰もが恐れ、うつむく中で、それでもお姫様だけは、前を向き続けました。


「だいじょうぶ。わたしがいるから」


小さな手に宿る光は、やがて大きく広がり、

闇をやさしく包み込みそして、消しました。

国に再び光が戻ったとき、人々はお姫様の名を、何度も何度も呼びました。

その勇気とやさしさは、長く語り継がれることとなります。

やがてお姫様は、隣の国の王子様と出会い、たくさんの愛に囲まれて、幸せに暮らしました。

めでたし、めでたし。



というのが絵本の内容だ。

この絵本のお姫様が今の私、リリオールである。

絵本の中では私の二属性持ちのことを”特別な力”と表現しているらしい。


子供向けに書かれた本に難しい言葉や長い説明はいらないだろうとされたのだろうが、その絵本の世界が現実となっている今の私からしたらできるだけ詳細な情報が欲しいものだ、と肩を落とす。



『くろい、かげ』



物語の後半に登場する黒い影。

魔物なのか、賊なのか、一体それが何を表しているのか今は分からないが国にとっていいものではないのだろう。

そしてそのピンチを救うのが私、らしい。



『…えぇ、すくえるかなぁ』



机に項垂れる。

確かにリリオールは愛されている。

家族からも城で働く人たちからも、国民からも。

その愛を一心に受けて育ったリリオールはあまりにもまっすぐで眩しい。


ついさっき前世を思い出したが、今までのリリオールの記憶ももちろん残っている。

リリオールはまさしく前世の私が憧れたお姫様だった。


前世でだんだんと視界が暗くなっていく中、願ったのは「リリオールのようなお姫様になりたい」だった。

神様は私の味方をしてくれたらしく、確かに憧れていたお姫様に転生できた。



『ほんにんになりたいとは、いってないけどね…』



紙にペンをぐるぐる走らせながら呟く。

今更そんなことを言ったところで今が変わることはないのだが。



『…そんなこといったってかわんないでしょ、リリオール!』



パンッと頬を叩いて気合を入れる。

まずは私がすべきことを考えようと新しい紙を取り出した。



『くろいかげがこないようにしたいけど…』



現実的に考えてそれは無理だろう。

黒い影の正体を絵本では詳しく描かれていなかったから、止めるようがない。



『それなら、』



私がすべきことはいずれやってくる黒い影に対抗できるように力を磨くこと。

国を、家族を守るために_。

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