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お姫様とただいま

見慣れた白亜の城。

広がる庭園。

門の前へ整列する騎士たち。

帰ってきた。

その実感にほっと息を吐いた瞬間。



「リリィィ!!」

『わぁっ!?』



馬車を降りた途端、ものすごい勢いで抱きしめられる。



『く、苦しっ、お父様っ!』



お父様は、半泣きの顔で私を抱き締めていた。



「無事でよかったぁぁ…!!」

『お、お父様、ちから……っ!』

「リリィが襲われたと聞いた時、私はっ……!!」

「父上、リリィが潰れます」



冷静なルシウスお兄様の声が飛ぶ。

けれどお父様は離さない。



「だってぇ!!!」

『お、お姉様…っ』


助けを求めて手を伸ばす。

すると隣で、くすり、と優しく笑う声がした。



「あなた」



いつもどおり綺麗なお母様は、困ったように微笑みながらお父様の肩へ触れる。



「リリィが苦しそうですよ」

「…はっ!」



ようやく解放された。



『けほっ』

「す、すまないリリィ!」



慌てるお父様とその後ろでエリオットお兄様が吹き出している。



「相変わらずで安心しました、父上」



騒がしい声が飛び交う。

久しぶりに家族全員が揃う懐かしい光景だった。

その中で、お母様だけは静かに私を見つめていた。



『お母様?』



そっと近づくと、お母様はゆっくりと私の頬へ触れる。

とても優しい手。



「無事で、よかった」



その声は、少し震えていた。

胸が、ぎゅうっと苦しくなる。

今まで張っていたものが、急に崩れそうだった。

怖かった。

窓が割れた音も。

侵入者の目も。

向けられた殺気も。

全部、ちゃんと怖かった。

でも、みんなの前で泣いちゃいけない気がして。

王女として、ちゃんとしていなきゃって思って。

ずっと、気を張っていた。



『ぅ……っ』



視界が滲む。

あれ、と思った時には、ぽろりと涙が零れていた。



『おかあ、さま…っ』

「えぇ」

『こわ、かった、!』


声が震える。

涙が止まらない。

お母様は何も言わず、ただ優しく私を抱きしめた。



「頑張りましたね」



ふわり、と香る懐かしい匂い。

背中を撫でる手が、あまりにも優しくて。

張り詰めていたものが、全部壊れていく。



『っ、ぅ…ひっく…』



子供みたいに泣きじゃくる私を、お母様は責めなかった。

その腕の中は温かくて、安心して。

気づけば、お母様の目にも薄く涙が滲んでいた。



「帰ってきてくれて、本当にありがとう」



その言葉に、また涙が溢れた。

後ろではお父様がうちの娘がかわいいと泣き始め、エリオットお兄様が呆れ、セレナお姉様がハンカチを差し出し、ルシウスお兄様が静かに微笑んでいた。

雪国の冷たい空気とは違う。

あたたかな家族の空気に包まれながら、私はようやく帰ってきたのだと実感した。

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