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お姫様と星冠

大聖堂の最奥。

星を象った巨大な紋章の前で三人が立ち止まる。

すると、青銀の法衣を纏った老人がゆっくりと前へ進み出た。

長い白髭の老人は杖をもっている。

ノルディア国大聖堂の最高司祭だろう。

司祭は静かに杖を掲げた。



「星々の導きのもと、ここに星冠の儀を執り行う」



低く響く声。

同時に、天井の魔石たちが一斉に輝きを増した。

わぁとざわめく会場に思わず息を呑む。

夜空みたいだった。

本当に星が瞬いているみたいに、無数の光が大聖堂を包み込む。

司祭はゆっくりとアステル様へ向き直った。



「アステル・ノルディア・エイル」



静寂が落ちる。



「汝は星の導きに従い、この国を背負う覚悟があるか」



アステル様は真っ直ぐ司祭を見つめ返した。



「あります」



迷いのない声だった。



「汝は民を守り、ノルディアの未来を担うと誓うか」

「誓います」



その瞬間、大聖堂の中央が眩く輝いた。



『っ……!』



思わず目を見開く。

空中に、光が集まっていく。

白銀と青の光はまるで星屑が渦を巻く。

やがてその光は、一つの形を成した。


細く繊細な銀細工。

星を模した青白い宝石。

氷の結晶のように透き通った、美しい冠だった。

会場から小さなどよめきが漏れる。



「あれが、星冠」



セレナお姉様が小さく呟いた。



『きれい……』



自然と声が零れる。

星冠がアステル様の頭上に輝き、司祭が杖を地面についた。



「ここに星冠は応えたり!星々の加護をその身に宿し、ノルディアの未来を担う者として、アステル・ノルディア・エイル殿下を次代ノルディア国王継承者――正式なる王太子と認める。」



低く厳かな声が大聖堂中へ響き渡る。



「星の導きは示された。今この時をもって、アステル・ノルディア・エイル殿下へ“星冠”を授与する!列席するすべての者たちよ、星に選ばれしノルディア王国の王太子へ、祝福を!」



その瞬間、大きな歓声と拍手が響き渡る。

堂々とした態度で手を振るアステル様へ私も負けじと拍手を送る。



「ノルディア国の立太子式は派手でいいよな」



私の隣でそう呟くのはエリオットお兄様。



「こらエリオット。派手だからいいとか地味だからダメとかではないよ」

「そうはいってもアルカンティアは列席者は呼ばないじゃないですか」

「というか、ノルディア以外はあまり呼ばないわね」



セレナお姉様によると、ノルディアは昔からこのスタイルが定着しているようで伝統を重んじ帝国で唯一列席者を呼んで立太子式をするらしい。



「それと、ノルディア国の守護者であるエイル様が賑やかな催し物が好きだからというのも理由らしいよ」



セレナお姉様に続いてルシウスお兄様も話す。

ノルディア国の守護神エイル様はイリュウィアの五守の中で一番賑やかなことが好きらしい。

ルミナーレ帝国での立太子式はすべての国に共通して”守護者と大守護者に次の王を見極めてもらい祝福してもらう”という考えがある。

そのため、ノルディア国以外では立太子式は”守護者と大守護者のための式”という考えが強く基本的に身内や関係者以外の列席者はない。



「そういう歴史はいずれリリィもお勉強するわ」

『お勉強、』



本来、魔法訓練より先に国の勉強をするのだが、私の場合特殊だったため繰り上げて魔法訓練に力を入れているが、教育熱心なお母様のことだから近々勉強も始まるだろう。



「ほらリリィ、せっかくのパーティーなんだからおいしいもの食べましょう」



差し出された手をぎゅっと握るとセレナお姉様は嬉しそうに笑った。



「リリオール様」



聞き覚えのある声に振り返ると綺麗な銀髪の彼が立っていた。



『アレクシアス様!』



数か月ぶりの再会にパタパタと近寄る。



『ごきげんよう!』

「ご機嫌麗しゅう、リリオール様」



私の手を優しくとり、甲にキスをするアレクシアス様。

その姿はまさしく王子様で思わずうっとりしてしまう。



「これはこれは、グレイヴァルト家のご子息ではありませんか」



いつの間にか隣に来ていたルシウスお兄様はアレクシアス様の手から私の手を放し、手の甲をハンカチでごしごしと拭う。



「ルシウス王太子殿下、お久しぶりです」



ルシウスお兄様もアレクシアス様と面識があるようで話を続ける。



「グレイヴァルト家も招待を受けたんだね」

「はい。父と一緒に参列する予定でしたが急遽予定が入ってしまい私一人で」

「なんだ、久しぶりに公爵に挨拶をしたかったんだけどな」



エリオットお兄様も輪に入り楽しそうに話す。

私はお邪魔かな、と思い静かに輪から離れセレナお姉様のもとへ行く。



「お話はもういいの?」

『うん!殿方のお話の邪魔をしてはいけないとアルから習ったの!ルシウスお兄様もエリオットお兄様も楽しそうだし!』

「エリオットはともかく、ルシウスお兄様は...いえ、なんでもないわ。じゃあ私たちは女同士楽しみましょうか!」

『うん!』



手をつなぎ直し、私たちは料理が並ぶテーブルへと向かう。

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