お姫様と絵本の世界
ルミナーレ帝国の中央に位置するアルカンティア国。
帝国最初の国とされており、魔法と知識が行き交う国。
私はその国の第二王女として生を受けたリリオール・アルカンティア・ルシエラ。今日、記念すべき5回目の誕生日を迎えた。
_というのが今世の私で、前世は地球という惑星の日本という国に生まれた病弱な女の子だった。
前世からみてここは“星のおひめさま”という絵本の世界だ。
私が幼いころから大好きで夢見ていたお姫様の世界。
病弱だった私は生まれた時から戦い続けた病に16年間の闘病生活の末に負けて、眠りについた。
そして、次の転生先に選ばれたのはまさかの憧れていた絵本の世界。
さらに、前世の記憶を思い出さずに5年も生活していた。
こういうのって生まれてすぐに気が付くものじゃないのかと首をかしげる。
「どうしたんだリリィ」
「きれいだなって!そうおもでしょ、ルシウスおにいさま!」
隣に座るのは一番上の兄、ルシウス。
さっき彼に抱きかかえられた瞬間、前世の記憶が流れ込んできた。
絵本の見開きいっぱいに描かれたパーティー会場の絵は何度も何度も見た大好きなページ。
そんなページにそっくり...というか実物をみて前世の記憶を思い出すなんて私ったらどんだけこの絵本の世界にのめりこんでいたんだと少し恥ずかしくなる。
「あぁ、すべてリリィのためのものだからね。終わったら好きなものをもらうといい…いや使い古したものなんてリリィに失礼だね。お兄様にほしいもの何でも言ってごらん、すべて用意するよ」
「あはは…おにいさまったら、」
彼は本気でする。
ルシウスお兄様のほかにお姉様ともう一人のお兄様がいるが、彼の私への愛情は群を抜いている。
2年前、私が街の時計台を気に入ったことを知り3歳の誕生日に庭に時計台を建てた。
アルフレッドが泡を吹いて倒れそうになっていたのをよく覚えている。
「なぁに、リリィのためなら造作もないさ」
「ちょっと、お兄様。リリィを不必要に甘やかさないでくださいまし。もう
5歳、立派なレディですのよ」
サラサラの髪をなびかせてこちらに歩いてきたのは第一王女で私の姉であるセレナお姉様。
絶世の美女で勉強もできるため、才色兼備の姫と言われ縁談話が後を絶たない。
「まだ、5歳だ。リリィには愛をいっぱい受けてまっすぐ育ってほしいからね」
その愛が重すぎるといっているのだが、ルシウスお兄様にはそんなこと伝わらない。
セレナお姉様もやれやれといった様子で首を左右に振った。
「改めておめでとう、リリィ。パーティーは楽しい?」
『うん!すっごくたのしいわ、セレナおねえさま!』
ルシウスお兄様を咎めながらもセレナお姉様も私のことをこれ以上ないぐらいに愛してくれている。
優しく微笑んだお姉様は私の頬を撫でた。
「かわいくおめかししてもらったのね、こんなかわいい子すぐにお嫁に行っちゃうわね」
くすくすと笑うお姉様につられて笑おうとしたら背後から冷たい風が吹いてきた。
「お嫁に行く?リリィが?まさか!この世にリリィに釣り合う男なんているわけがないだろう?」
顔は笑顔なのに瞳の奥は微笑み一つない表情に恐怖を感じ、何度も首を縦に振った。
「よく言いますわ、お兄様の婚約は5歳の時に決まったのに。ねぇエリオット」
「俺に振らないでください…」
先ほどからお姉様の少し後ろに立って私たちの話を聞いていたもうひとりのお兄様。
「お前も、そろそろ兄様の膝から降りろ」
『ルシウスおにいさまがはなしてくださらないの』
「…甘えん坊」
『きこえてるよエリオットおにいさま!!』
私と一番年の近いエリオットお兄様。
お父様に似たのか魔法ではなく剣術を得意とし11歳にして王都騎士団に入隊し剣術を磨いている。次期騎士団長候補なんて言われているらしくその実力は確かなもの。
お兄様やお姉様にはちゃんとした態度で接するのに私には意地悪ばかり。
おかげで私たちの間では小さな争いが絶えない。




