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お姫様とルミエルブルーム

淑女教育と魔法訓練を並行して続けること一週間、勉強を終え温室で花の世話をしていた。



「ルミエルブルーム、綺麗に咲きましたね」

『えぇ!肥料を変えるだけでこんなにも変わるなんて、お花はやっぱり面白い!』



マリーと楽しく話しているとき、外が騒がしくなった。



『なにかしら』

「リリィ!」



立ち上がる前に大きな音を立てて扉が開き、嬉しそうに笑うお父様が立っていた。

温室の扉は金具が外れ斜めに傾いていた。

ついこの間、アルに綺麗にしてもらったばかりなんだけどな、と横目にアルを見ると遠い目をして微笑んでいた。



『どうなさったの、お父様』

「朗報だ、リリィ!魔法の先生が見つかったぞ!」



お父様は私を抱きかかえてくるくる回りながら嬉しそうに言った。

その言葉に私も目を輝かせる。



『ほんと!?』

「あぁ本当だ!今度は大丈夫、なんたって宮廷魔法師の師団長だからね!」

『きゅうてい、まほうし…しだんちょう?』



宮廷魔法師といえば、国から正式に雇われている城勤めの魔法師のことだ。

5つの国にそれぞれの宮廷魔法師団があるが、その中でも魔法と知識が行き交うアルカンティア国の宮廷魔法師団は特に優秀と言われている。

ただその優秀さに比例するように変わった方が多い、とも聞いたことがあるが。




「お母様に後でお礼を言おうね、交渉してくれたのはお母様なんだ」



この国の宮廷魔法師団を管理しているのはお母様だ。

変わり者の多い魔法師団の、さらにトップに君臨する師団長に教師を務めてもらうのはどれだけ大変だったか。



『ありがとう、お父様!』



ぎゅっとお父様に抱き着くと、力いっぱい抱きしめ返してくれたお父様。

息が止まり、ぺちぺちと背中を叩くと慌てて力を緩めたお父様。



「す、すまないリリィ!嬉しくてつい!」

『ごほっ……お、お父様、力つよい……』

「ははは!すまんすまん!」



全然反省していない笑顔に、マリーがくすくすと笑う。

アルは壊れた扉を見つめながら、静かに頭を抱えていた。



「……後ほど修繕の手配をいたします」

「うむ!頼んだぞアルフレッド!」

「毎回思いますが、もう少し静かに入室いただけますと大変助かります」



にこやかな声なのに、少しも笑っていない。

お父様はわざとらしく咳払いをして視線を逸らした。



『それで、その先生はどんな方なの?』



私がそう尋ねると、お父様はと嬉しそうに頷いた。



「宮廷魔法師団第一師団長、“星詠み”のエヴァルドだ」

『ほしよみ?』



聞き慣れない言葉に首を傾げる。



「星の巡りから魔力の流れを読む特殊な魔法を使う人のことを星詠みというんだ。未来予知……とまではいかないが、魔法に関して非常に優れた知識を持っていてね。光属性にも詳しい」



光属性、その言葉に胸が少しだけ高鳴る。



『じゃあ、私の魔法もわかる?』



思わず身を乗り出すと、お父様は少しだけ困ったように笑った。



「それはまだわからん。だが少なくとも、今までの教師より理解は深いはずだ」

『……そっか』



胸の奥が、じんわり熱くなる。

ようやく前に進めるかもしれない。

絵本の中の“星のおひめさま”みたいに。



「先生は明日から来る予定だ。リリィ、ちゃんと挨拶できるか?」

『できます!』



元気よく返事をすると、お父様は満足そうに頷いた。



「よし、いい子だ」



ぽんぽん、と頭を撫でられる。

明日から始まる新しい何かに反応するかのように足元でルミエルブルームが風に揺れた。


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