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時をかけるアラフォー 〜あの子には性別がない〜  作者: 双子相
第1幕(ep1〜19)「やり直し開始・2年生」
7/50

第7話 ミニモニ4人組に、なぜか入った


 翌日の昼休み。


 (南さんが余計なことをしていないか確認したい。)


 キョンのクラスの方向に向かった。

 廊下に出ると、南さん・早川さん・木村さん・キョンの4人が固まっているのが見えた。


 (ミニモニ。)


 (2005年にはまだギリギリ現役の呼び名だ。)


 4人全員の身長が低い。

 並んでいると特に際立つ。


 (背は低いが存在感はある。)


 近づいていった。


 「柳くん!来た来た!」


 南さんが手を振った。

 案の定、来た来たという顔をした。


 (余計なことをしている。)


 早川さんがこっちを見た。


 「いや待って。」


 「何が。」


 「なんで柳くんがこっちに来てるの。」


 「ちょっと話があって。」


 「誰に。」


 (全員に、とは言えない。)


 「南さんに。」


 「なんで。」


 (早川さんのツッコミが鋭い。こいつは目が速い。)


 「別に。」


 「別にって何。」


 キョンが横で何も言わずにいる。

 木村さんが何か本を読んでいる。


---


 「南さん、昨日の件だけど。」


 「件?どんな件?」


 (わざとか。こいつはわざとやっている。)


 「昨日の話。覚えてるか。」


 「えー、なんだっけー。」


 「南さん。」


 「冗談だよ!わかってる!言わないって!」


 早川さんが「いや待って何の話?」と言った。

 木村さんが本から目を上げた。

 キョンが少し首をかしげた。


 (まずい。全員の注目が集まった。)


 「何でもない話だ。」


 「何でもないって顔じゃない。」


 早川さんが言った。目が鋭い。


 「なんか必死な顔。」


 (必死じゃない。)

 (必死じゃないが、必死に必死じゃない顔をしている自覚がある。)


---


 (収拾がつかなくなる前に、話を変えよう。)


 「……ところで。」


 「うん。」


 「俺、みんなの名前をちゃんと覚えておきたくて。」


 「え?」


 「早川さん、木村さん——と呼んでいいか。もう会ったことがあるのに名前で呼べないのは変だし。」


 早川さんが固まった。


 南さんが「えっ!」と言った。

 木村さんが本から目を上げた。

 キョンが微妙な顔をした。


 「……いや待って。なんか丁寧すぎない?」


 「そうか?普通じゃないか。」


 「普通じゃないよ。男子がちゃんと苗字さん付けで言ってくるの、なんか変な感じがする。」


 「悪い意味か。」


 「……悪い意味じゃないけど。」


 南さんが「じゃあ私も柳くんって呼び続けるね!」と張り切った。


 「いや、もう呼んでるじゃないか。」


 「そうだけど!確認!」


 (何を確認したんだ。)


 木村さんが本を閉じた。

 「いいよ別に」という顔で言った。


 「……木村さんも、よろしく。」


 「うん。」


 (よし。)

 (自然に輪に入れた。)


---


 キョンが俺を見た。


 「……なんで急に。」


 「4人で行動してるじゃないか。ちゃんと把握しておきたかった。」


 「……ふうん。」


 (ふうん、で終わるのか。)

 (キョンの「ふうん」には何種類かある。)

 (今のは「まあそれはそれで」という「ふうん」だった気がする。)


 南さんが「ねえねえ!」と割り込んできた。


 「柳くんって、なんかちょっと変わってるね!」


 「そうか。」


 「変わってるのにちゃんとしてるっていうか。」


 (38歳の習慣だとは言えない。)


---


 「ミニモニって呼ばれてるの、知ってる?」


 言ってしまった。


 (落ち着けアラフォー。言わなくていいことを言った。)


 南さんが「もうやめてよ!!」と言った。

 早川さんが「いや待って誰から聞いたの」と言った。

 木村さんが「低いのは事実だから」と言った。

 キョンが無言でスルーした。


 (4人の反応が綺麗に分かれた。)

 (キャラクターが立ちすぎている。)


 「冗談だ。」


 「冗談じゃない顔だったけど。」


 早川さんに言われた。


 (正直に言うと、冗談でもなかった。)

 (でもここは冗談で通す。)


 「南さん、身長何センチ?」


 「聞かないで!!」


 (南さんは本当にわかりやすい。)


---


 そのあと、なんとなく4人の輪に入ったまま昼休みを過ごした。


 早川さんが最近見たドラマの話をして、木村さんが「それ原作小説のほうがいい」と言って、南さんが「小説読んでないけど絶対ドラマのほうがいい!」と言った。

 キョンは半分聞いて半分どこか別のことを考えているような顔をしていた。


 (キョンはいつもそうだ。)

 (輪の中にいるのに、少しだけ外にいる。)

 (でもそれが嫌そうな顔ではない。)


 「柳くんは見た?」


 南さんが聞いてきた。


 「何を。」


 「だから、さっきのドラマ。」


 「ちょっと。」


 「少しだけ見た、ってこと?」


 「まあ。」


 「どう思った?」


 「……原作読んだことないから判断できない。」


 木村さんが「えらい」と言った。


 (えらいのか。)


 (わからないとき、素直にわからないと言う。)

 (38年生きて、それだけは身についた。)


---


 帰り道。


 ユースケとバータと3人で駅まで歩いた。


 「リュウ、最近あっちのグループとも仲良くなってるじゃん。」


 ユースケが言った。


 「そうか。」


 「なんか変わったな。前はもう少し空回りしてた。」


 「今はそうでもない。」


 「でしょ?なんか落ち着いた感じがする。」


 バータが「まあ」と言った。


 「変わったほうがいい場合もある。」


 「……そうだな。」


 「まあ。」


 駅に着いた。


 電車を待ちながら、今日のことを整理した。


 (ミニモニの輪に入った。)

 (早川さんと木村さんに苗字で呼んでいいと言った。)

 (キョンは「ふうん」と言った。)


 (俺はまだ言ってない。)


 (でも、距離は確実に縮まっている。)


 (焦るな。順番にやれ。)


 電車が来た。


 (そういえば。)


 (最近、キョンの天パがよく目に入る。)

 (ストレートにしたらどうなるんだろうか、と考えることがある。)


 (いや、知ってるんだけどな。)

 (38歳の眼力で、全部知ってるんだけどな。)


「低いのは事実だから」は今作中で一番好きな一言です。キャラが4人分きれいに分かれた回。

次回——キョンの誕生日。アラフォーの眼力が本番を迎えます。

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