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時をかけるアラフォー 〜あの子には性別がない〜  作者: 双子相
第1幕(ep1〜19)「やり直し開始・2年生」
18/50

第18話 先生に頼んで、クラスが決まった


 卒業式から5日が経った。


 3月20日。


 クラス発表の日が来た。


 フミとの経済勉強は2月から続けている。週1で小論文も見ている。クラス発表を待ちながら、俺はひたすら手を動かしていた。


 先生への交渉は2月の最終週に終わっていた。「考えてみる」という言葉をもらって以来、返事を待っていた。結果は今日出る。


---


 廊下の掲示板に、名前が並んだ。


 3年A組。

 3年B組。

 3年C組。


 B組の列を上から確認した。


 「柳龍」。


 あった。


 その5つ上に、「京」の文字があった。

 少し下に、「早川沙奈」の名前もあった。


 (あった。)

 (落ち着けアラフォー。)

 (掲示板の前でガッツポーズはするな。)


 (——心の中の38歳がガッツポーズした。やめろ。)


 廊下の向こうで、ユースケが声を上げた。


 「リュウ!D組だった!理系!D組!!」


 「それは最初からわかってただろ。」


 「でもD組だ!昼に来るから!」


 バータが少し離れたところにいた。


 「俺はC組だった。まあ。」


 「また昼休みに来い。」


 「わかった。まあ。」


 フミがどこかにいるはずだった。

 探すと、掲示板から少し離れたところに立っていた。


 目が合った。


 フミがちょっとだけ頷いた。


 俺も、ちょっとだけ頷いた。


 (フミは全部わかってる。)

 (言葉はいらない。)


---


 その夜、フミから電話が来た。


 「クラス発表、見た。」


 「見た。フミはAだな。」


 「そうだ。……お前はBだ。」


 「そうだ。」


 少しの間があった。


 「キョンもBだ。」


 「そうだな。」


 「……先生に頼んだのか。」


 (——フミ。)

 (言わなかったが、見抜いているのか。)


 「頼んだ。」


 「そうか。」


 「何かまずいか。」


 「まずくはない。」


 また間があった。


 「余計なことはするな、とは言った。」


 「言った。」


 「今回は——余計じゃないな。」


 (フミが認めた。)

 (余計じゃないと言った。)


 「ありがとう。」


 「礼はいい。3年、ちゃんとやれ。」


 「やる。」


 「あと——生徒会の仕事も増える。俺はAだから直接手伝えない場面が出てくる。そのつもりでいろ。」


 「わかった。サナがBだから、サナに動いてもらう。」


 「……早いな。」


 「考えておいた。」


 フミが「そうか」と言った。

 今日の「そうか」は、信じていない「そうか」ではなかった。


 電話が切れた。


---


 翌日の帰り、電車の中だった。


 中丸駅で西都線に乗り換えた。

 キョンが隣に来た。


 「クラス発表、見た?」


 キョンが言った。


 「見た。」


 「B組だったね。」


 「俺も。」


 少し間があった。


 キョンが前を向いたまま、少しだけ首を動かした。


 「……また同じクラスになったね。」


 「そうだな。」


 「また1年、よろしく。」


 「こちらこそ。」


 (落ち着けアラフォー。)

 (「よろしく」の声が、少し柔らかかった。)

 (気のせいじゃないと思う。気のせいかもしれない。)

 (どっちでもいい。)


 右のイヤホンが、無言で差し出された。


 受け取った。


 NOIR EDGEが流れ始めた。


 冬が終わりかけていた。

 窓の外の光が、2月より少しだけ明るかった。


 (ここから先は、3年だ。)

 (俺はまだ言ってない。)

 (でも——3年になったら、キョンとの時間がまた変わる。)

 (その日が来る。)

 (まだだ。まだ言わない。)

 (でも、来る。)


---


 春休みが始まった。


 夜、「やり直しリスト」をもう一度見た。


 7番:キョンに、ちゃんと言う準備をする


 (準備は——できているのか。)

 (完全にできているとは言えない。)

 (でも——できないまま待ち続けることもない。)


 (言う。)

 (3年のどこかで、ちゃんと言う。)

 (それが決意だ。今夜、そう決めた。)


 (ただ——)

 (「余計なことはするな」とフミに言われた。あれは正しかった。)

 (でも今回の先生への交渉は「余計じゃない」とフミが言った。)

 (フミは正確だ。あいつが余計じゃないと言うなら、余計じゃない。)

 (だとすれば、8番も同じだ。余計じゃない。)

 (だから消さない。消せない。)


 ガラケーにメールを打った。


 宛先:京


 本文:「クラス発表、見た。また来月。」


 送信した。


 3分後に返信が来た。


 「見た。よろしく。」


 (よろしく。)

 (たった4文字だが——キョンにしては饒舌な返信だ。)


 (俺はまだ言ってない。)

 (でも——「よろしく」と言ってくれた。)

 (それだけで、今夜は十分だった。)


第18話です。卒業式から5日後、クラス発表。先生への交渉は2月末に済ませておいた——その結果がここで出ました。「今回は余計じゃないな」のフミの一言、「また同じクラスになったね」のキョンの声。ここまで来た。次回は春休みのカフェ。言いそうになって、止める話です。

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