第七話 「私の戦闘力は5です。」
映写機横の狭い休憩室。
映写機音と、モールの館内放送が混じり合う。
特別なんて、どこにもないように感じる。
「でもね、私は美食屋。食べれば元気になるのよ。」
「この世のすべての食材に感謝を込めて、いただきます。」
先輩が、私のお弁当を覗き込む。
「お前のフルコースの『メイン』、俺が食っていいか。」
「レッグネイルガン食らわしますよ。」
「いきなり?せめて、釘パンチくらいから……」
先輩は、休憩室の冷蔵庫を開けた。
「あ、餃子がある。食べていいのかな。」
「ダメでしょ。モールで買ってきなさいよ。」
「私は、お腹が空きすぎて動けないであります。」
「えぇ、どのくらいよ?」
「私の戦闘力は5です。」
「農夫のおっさんか!てか、ならまだ動けるだろ。」
「無理!餃子食べるの!」
「やめとけよ、それ王くんの餃子だぞ。」
「お、本場かぁ、おいしそうだなぁ〜」
先輩は、冷蔵庫から勝手に餃子を出して、匂いを嗅ぐ。
王くんが入ってくる。
「わ、私は止めたよ。」
「あ、王くん。餃子ちょうだい。」
先輩は図々しくお願いする。
王くんは、爽やかに笑う。
「良いですよ。ママの作った餃子、最高です。」
途端に、先輩も私も、スンってなる。
「え、食べてください。ママの餃子が世界一です。」
「けっこう顔は良いんだけどね。」
「ないわぁ〜、君だけはないわぁ〜。」
「何がですか?ママの餃子、本当においしいですよ?」
先輩は餃子を冷蔵庫に戻した。
「モールでラーメン食べてくる。」
先輩はドアを開けて、モールの雑踏の中に消えていった。
「ママの餃子、本当においしいんですけどね?」
王くんは不思議そうな顔をしていた。




