第四十五話 「Got burned, got broken down by desire.」
薄暗いニャオンシネマ
ポップコーンと、ゴミが床で混じり合う。
特別な物語が、今にも始まりそうな予感。
「ねえ、先輩。新しい館長代行、めっちゃかっこよくないですか?」
「分かる分かる。イケメンよねぇ〜」
私は、ほうきを中心にスキップしながら回る。
2周してから、反対に回る。
ふと気づくと、新しいバイトの女の子が、スクリーンの前に立っている。どこから出したのか、ハートのサングラスをしてる。
ははーん、なるほど。
女の子は足を踏み鳴らしはじめた。
ですよね。
私は、手拍子を合わせる。
大丈夫ですよ、最近の子だもんね。お姉さん、
ちゃんと最近のも見てますからついていけますよ?
長澤まさみですよな?
「I followed my heart into the fire. Got burned, got broken down by desire.」
英語の方だった……
ごめんなさい、私は吹き替え派なんです……
私がいまいち乗り切れないでいると、女の子は察したのか、歌うのをやめた。
「あ、ごめんなさい。分かるかと思ったんですけど、ジャンル違いでした?」
「ううん、ううん、全然全然、大丈夫大丈夫。」
その時、突然、私の後ろで大きな拍手が聞こえた。
「nice、sing!」
イケメン館長が、小粋な褒め言葉を言っておる。
うまい、座布団一枚!
私が、心の中でおばさんな褒め言葉を述べている隙に、女の子は甘えた声を出した。
「え〜本当ですかぁ〜♡」
やりすぎじゃない?
「世界一の美声だったよ。」
褒めすぎじゃない?
「あたしぃ〜声優目指してるんですよぉ〜♡」
おう、そうか。
「君ならなれるよ、My honey」
……残念イケメンか
「え〜嬉しいぃ〜♡」
♡が多くない?
「あの、掃除しちゃいません?」
「先輩がやっといてよ!」
「先輩さん、君なら1人で大丈夫さ。」キラッ!
残念イケメンのウインク光線を、私は片手で払いのけた。
「仕事しろよ。」
「先輩、社員なんだからやっといてよ!」
「先輩さん、君は社員だ。」
「お前もな。」
「うっさい!もう、こんなのほっといてスタバ行こう。」
「OKさ、My honey。先輩、後はよろしく。」
2人はさっさとモールの中に消えていった。
私は、黙々と掃除を続けた。
「王くん、君は偉いヤツだったんだな……」
パパパ、パッパッパ〜
王くんは、いないところでレベルアップした。
「次に会ったら好きになってやるよ。」
私は上から目線で言った。
「ま、会うことないけどな」
私は、1人でクスクス笑った。
「今日は猫缶買ってやるか……」




