第四十三話 「悪・即・斬」
ニャオンシネマの事務所。
掲示板に貼り出された告示。
ドラマのワンシーンにしか思えない……
「どういうこと?」
私は、驚いて何度も告示を見直した。
『 告示
次の者、ハラスメント規定違反につき、本社総務部勤務を命ずる。
滝口恭子
株式会社ニャオン人事部』
私にクビを宣告した館長代理が、クビを飛ばされた。
私は、事態の急転直下に、ただただ唖然としていた。
昨日の今日で、いったいなぜ?
というより誰が?
私は、何も報告していない。
「あんなヤツ飛ばされて当然ですよね。」
私は、後ろから急に声をかけられて、ビクッとなる。
バイトの女の子が後ろに立っていた。
「あなたなの?」
「え、そりゃあそうでしょ?先輩、ここには3人しかいないんですよ?」
「そうだけど、なんで?」
「だって、どう考えてもあれはパワハラでしょ?」
「そうかな……」
「そうですよ。」
「私も悪いし……」
「悪いかどうかは関係ないです。」
「そうかなぁ……」
「人格否定は何があっても許されません。」
「否定されてた?」
「え?あれを許すんですか?駄目ですよ、許しちゃ。女失格みたいなことを言われて、ただの注意な訳ないでしょ?」
「そうだっけ?」
「優し過ぎますって、先輩みたいな良い人が、ああいう悪人をのさばらせるんです。」
「あ、悪人!?」
「悪人ですよ、悪人。悪・即・斬ですよ。私が通報してやりました。」
「そっか……ん?」
「え?」
「……私は逆刃刀だから。」
「不殺ってか?」
「あなたは牙突するのね。」
「突きが外れても、横薙ぎに切り替えられるようにな。」
私は思わず吹き出して笑った。
彼女も笑っていた。




