第四十一話 「上を向いて歩こう」
薄暗い帰り道。
消えかかっている街灯。
特別なんてどこにもない。
「……私は、ひとりぼっち。」
涙が滲む。
下唇を噛み締めて空を見上げる。
「このやろう……きれいな空じゃんか。」
私は、上を向いたまま歩き出した。
涙が溢れ落ちる。
ちっ!
溢れないんじゃないのかよ!
「……ひとりぼっち、恐れず〜に、生きようと……」
涙が溢れてくる。
「ぶにゃあ」
え?ムーン?
私はまわりを見渡した。ムーンはいない。
でも、あの声を聞き間違えるはずがない。
私は目を凝らしてまわりを見渡した。
道路の向こう側に、保健所の車が止まっていた。
檻に入れられたムーンが見える。
私は、迷うことなく走り出していた。
車が走っている国道に飛び出してクラクションを鳴らされる。
でも、臆することなく反対側車線まで走り抜ける。
「すいませんー!私のムーンなんです!」
保健所のおじさんたちが、不審者を見る目で私を見てる。
でも、そんなことは関係ない。
「私のムーン……私の、猫なんです。」
私は、息も絶え絶えになりながら、説明する。
「でも、首輪もないですけど?」
「すいません、いつもは室内飼いなんで、首輪はしてないんです。」
「こいつは、この辺でずっと目撃されていた奴ですけど?」
「似てるけど違う子です。この子はうちの子です。」
「そんなこと言って、またこの辺に逃がされると困るんですよ。」
「ちゃんと、家に連れて帰りますから。」
「キャリーもないのに?」
「そ、それは……あ、そうだ!」
私は、バッグに入れっぱなしにしていた、猫用のリードを取り出した。
「これ着けて帰りますから。」
おじさんたちは、渋々ながら、ムーンの檻を開けてくれる。
途端に、ムーンが中から飛び出した。
また逃げるのか!?
みんなが身構えたが、ムーンは私の脚に擦り寄ってくる。
ちっ!現金なやつめ!
「大人しくリード着けさせなさいよ!」
ムーンは全く抵抗せずに、リードを着けさせて、おじさんたちを見ている。
『この人が私の飼い主ですけど何か?』
とでも言っているみたいだった。
ちっ!現金なやつめ!
私がリードを引っ張ると、ムーンはスタスタと付いてくる。
ちっ!現金なやつめ!
「おじさんたちが見えなくなったら暴れるのか?」
私は、小声で聞いたが、ムーンは何も反応しなかった。




