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第三十七話 「心の友よ」

映写機横の狭い休憩室。

映写機音と、モールの館内放送が混じり合う。

私だけの特別が、始まっている気がする。


「先輩、聞いてくださいよ。ついに、昨日ムーンを助けたんです。」

「うん……」

「ここからあの子が私に特別を運んでくるんですよ。」

「うん……」

「今日、このあと動物病院に迎えに行くんです。」

「うん……」

「猫用のキャリーとリード、お昼休みに買っちゃいました。」

「うん……」

「ついに私も王子様に会えるんですよ。」

「うん……」

「先輩?」

「うん……」

「どうしました?」

「ごめんな、心の友よ。」

「何がですか?」

「私、引っ越すんだ。」

「え……」

「旦那が転勤でね。」

「……どこに?」

「中国の深圳。」

「……遠いですね」

「ごめんな、心の友よ。」

「まあ、SNSとか、電話とか今はありますしね。」

「……中国にいくと、今のSNSは使えないんだ。」

「え……」

「電話番号も向こうの番号に変わっちゃうんだ。」

「じゃあ……」

「連絡出来なくなるんだ。」

「そんな……」

「ごめんな、心の友よ。」


先輩は、ロッカーの私物を全部バッグに詰めて、振り返らずに出て行った。

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