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第三十四話 「イスカンダルへ」
赤ちょうちんの屋台。
陸橋を走るトラックの音と、おでんが煮える音が混じり合う。
特別なんて、どこにもないように感じる。
「お嬢さん。」
「え?」
いつも無口な屋台のおじさんに話しかけられて、私はびっくりした。
「最近、よく来てくれてありがとね。」
「いえ、ここは楽しいので。」
「そんな、お嬢さんに言いづらいんだけどね、おじさん、この屋台辞めちゃうんだ。」
「え……」
「ごめんね。」
「どうして?」
「おじさんね、イスカンダルに行くんだよ。」
「……なんだ、冗談ですか。」
私は大笑いした。
おじさんが全然笑ってなかったけど、何でだろう。
次の日、屋台はやってなかった。
たまにいない日もあるから気にしてなかったけど、その次の日も、その次も、屋台はやっていなかった。




