第三十一話 「コンクリートロードはやめた方がいいぜ。」
薄暗い帰り道。
公園前の街灯がチカチカと点滅していた。
特別なんて、どこにもないように感じる。
「でもね、私は雪の女王。歌を歌えば幸せになれるのよ。」
私は、歌い出す直前で思い出す。
「交番、怖い……」
私は、トボトボと歩き出す。
「ぶにゃあ」
「……え?ムーン?」
私は、声のした方を急いで振り返る。
子どもたちが、ムーンを撫でている。
子どもたちには、琥珀って呼ばれてた。
おい、子どもたち、代わってくれ。
私は、心の中で叫ぶ。
子どもたちに念を送るが、気づかない。
私は、ジリジリと距離を詰める。
「すいません。」
突然、声をかけられて、私はビクッとする。
振り返ると、あの若い警官が立っていた。
「ああ、またあんたか。最近、子どもへの不審な声かけ事案が発生しててね。パトロールしてんですよ。子どもに近寄る不審な女がいたから声をかけたんだけど、あんたなら関係ないね。」
「……はい。」
「で、何してたの?」
「え、あの、猫を……」
「猫?ああ、耳すまごっこでもしてたの?」
警官が笑う。
私は、本気でブルーな気持ちになった。
「え、本当にしてたの?」
「い、いえ。」
「へぇ、してたんだ。」
若い警官はニヤニヤ笑う。
「いい大人なんだからさ、そういうのやめた方がいいと思うよ。」
「…………はい。」
若い警官は、ニヤニヤしたまま帰っていった。
子どもたちも、ムーンもいなくなっていた。
私は、私は、私は、悔しくて泣いた。
「やなやつ、やなやつ、やなやつ。」
私は、自宅の玄関を開けた。
ガチャリ
見慣れた部屋。
聞き慣れた音。
生乾きの匂い。
特別なんて、どこにもないように感じる。
ガチャン
私の後ろで、鉄製のドアが閉じた。
「やなやつ!」
私は、キッチンに向かい、冷蔵庫を開けて、麦茶…は、無かったから麦酒を飲む
「お前さ、コンクリートロードはやめた方がいいぜ。」
冷蔵庫を勢いよく閉める。
「何よ!」
強がってみたけど、
私は雫ほど強くなかった。
冷蔵庫の前のフローリングに座り込んで、
声を出して泣いた。
「知ってるよぉ……」
「王子様なんて来ないなんて……」
「とっくに気づいてるよぉ……」




