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第十六話 「バイバイキーン」
雨続きでじめじめする部屋。
湿った布団と、埃の匂いが混じり合う。
特別なんて、どこにもないように感じる。
「でもね、私は大事なリモコン持ってるのよ。ブオオオオと掃除する。トトトトーンと料理する。ビューンと飛んでく鉄人28号。」
ブオオオ……
私は部屋の掃除機掛けをする。
今日はシフトがお休みだ。
今日中に1週間分のお料理の仕込みをしちゃわなきゃ。
トントントン……
小松菜を刻む。
「これ、メイのぶんね。」
私は、タッパーレシピ50のチャンネルを見ながら、ちゃっちゃと冷凍タッパーを作っていく。
スマホが着信する。
「もしもし、あ、お父ちゃん?」
「元気してるか?」
「うん、元気元気。」
「また、倒れてねぇかと思ってな。」
「大丈夫大丈夫、小松菜ありがとうね。」
「立て!立つんだジョー!」
「いや、ジョーじゃねえし、倒れてねえし。」
「飛ばない豚はただの豚だ。」
「豚じゃねえし、え、太ってるって言いたいの?」
「あ、ごめん。そうじゃねぇ……」
「大事なリモコン持ってるから大丈夫だよ。」
「ビルのまちにガオーしてるんだな。」
「ガオーはしてないけどね。」
「お前の大事なリモコンさ、誰にも渡すなよ。」
「……うん。」
「元気にしてんなら、ええんだ。じゃあまたな、バイバイキーン。」
ガチャ、ツーツーツー……
「馬鹿な父ちゃん……」




