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第十五話 「バルス」

映写機横の狭い休憩室。

映写機音と、モールの館内放送が混じり合う。

特別なんて、どこにもないように感じる。


「でもね、私は美食屋。食べれば元気になるのよ。」

「この世のすべての食材に感謝を込めて、いただきます。」


先輩が、私のお弁当を覗き込む。


「お前のフルコースの『メイン』、俺が食っていいか。」

「ポイズンレイン食らわしますよ。」

「いきなり?せめて、毒手くらいから……」


先輩は、休憩室の冷蔵庫を開けた。


「あ、春巻きがある。これは、たぶん……」


先輩と私は、スンってなる。


王くんが入ってきた。


「みなまで言うな。」


先輩が、王くんを制止する。


「あ、春巻きですね。食べてください。」

「……誰が作ったの?」

「僕ですよ?」

「おっ!」


先輩が嬉しそうに、春巻きを食べようとする。


「ママのレシピです。」


途端に、先輩も私も、スンってなる。


「……ひどい、不意打ちだわ。洞窟の生き埋めよ。」

「空が落ちてきたみたい。」

「何がですか?ママのレシピは世界一ですよ?」


先輩は、春巻きを冷蔵庫に戻してから、

王くんの肩をポンポンと叩く。


「バルス」


先輩は、モールの雑踏の中に消えた。


王くんは、不思議そうな顔をしてた。


「僕は王ですけど?バルスって誰ですかね?」


私は、笑いを堪えるのに必死だった。

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