第十三話 「クリリンのことかーっ!」
映写機横の狭い休憩室。
映写機音と、モールの館内放送が混じり合う。
特別なんて、どこにもないように感じる。
「でもね、私は美食屋。食べれば元気になるのよ。」
「この世のすべての食材に感謝を込めて、いただきます。」
先輩が、私のお弁当を覗き込む。
「お前のフルコースの『メイン』、俺が食っていいか。」
「……良いですよ……」
「え、いいの?大丈夫?」
そう言いながら、先輩は、私の塩麹チキンを手づかみでむしゃむしゃする。
「ムーンを逃がしちゃったんです。」
「ムーンを?」
先輩は、2個目の塩麹チキンをむしゃむしゃする。
「でも、逃がしちゃったことで、凹んでるんじゃないんです。」
「え、違うの?」
先輩は、3個目の塩麹チキンをむしゃむしゃする。
「私だって前は、ずーっと素直で、優しい子だったのに。この頃、前みたいにワクワクしないんだ。うまくいきっこないって、心の中で、すぐ誰かが言うんだよね。」
先輩は、塩麹チキンを飲み込んで言う。
「かわいくないよね。ってか?」
「あれ?」
「お前は大丈夫だ。まだ、どっぷり浸かっとる。」
「てへ、やっぱり?」
「夢見て生きろ!」
「夢と現実、双方生きる道はないのか。」
「分からぬ。だが、共に生きることは出来る。」
先輩は、私の肩をポンポンと叩いてくれた。
「ところで先輩、3個も食べましたね……」
「てへ。」
「木っ端微塵にしてやる。あの地球人のように。」
「あの地球人のように?クリリンのことかーっ!」
先輩と私は大笑いした。
「ところで、チキンは許してないですよ。」
「え……」




