5-13 魔独楽石投げの石
サブタイトル変更をしました。
誤記の修正をしました。
クリスティーノは、魔独楽石投げに詳しい監督員をここに呼ぶようにと、傍にいた監督長に命じていた。
そしたら、古株の監督員3名がここに来るとのこと。
その3名の監督員は、すぐに来てくれた。
そりゃあ、すぐに来るよね。だって監督員たちの仕事は面倒くさくて神経がすり減りそうな書記作業。それが大手をふるって中断できるんだもの。
やって来た3名の監督員は、皆興味津々でわくわくとした顔をしている。
「ご苦労。監督長からも聞いていると思うけど、珍しい魔独楽石を探している。町の子供たちの間で流行っている魔独楽石投げ用のだよ。この中にあるかな」
クリスティーノが3名の監督員に問う。
それに答えて、一人の監督員の男性が答える。
「この青色に白い縞が入った石は、いかがでしょうか。縞入り石はレアですよ。私の息子もこの遊びに夢中でしてね。ですが、大人も楽しめる面白い遊びですので。私もかなり前から昼休みの勝負に参加をしていますよ」
へえ。魔独楽石投げって、大人も楽しめる遊びなんだ。
それと確かに、縞入りは少ない種類のようだね。ざっと見た感じでも、数個しか見当たらない。あと受付の応接室で、ベン君のお母さんが見せてくれた魔独楽石の中にも縞入りは入っていなかったと思う。
それを聞いて話に入るもう一人の監督員。男性だ。
「いや、縞入りはどうかと思うぞ。確かに回転は速い。だがこれは、縞に沿って非常に割れやすいのだ。それではすぐに負けるぞ。俺は、硬くて安定した回転をする単色系統がお勧めだな。そうだな。お。いいのがあるじゃないか。この透明なやつはいいぞ。それこそレアもんだし、硬いから強さも保証する」
彼は魔独楽石投げに相当熱が入っているようだね。透明な石はシンプルだけど、珍しいものらしい。クリスティーノも先程この石を見て、他は見当たらないようだと言っている。
最後の一人。うん。もちろん男性。だけどちょっとチャラい感じ。
「いやー。強さを言うんなら断然この黄色の針入りだぜ。針入りは滅法硬い上に、回転も速いんだから」
彼が薦める黄色の針入りは、ざっと見ても10個以上はある。強いかもしれないけど珍しいものではなさそうだ。
3名の監督員たちは、これをきっかけに、喧々諤々と珍しい魔独楽石や強い魔独楽石の持論披露会のような話し合いを始めてしまった。
「うーん。これも、どうやら難しそうだね」
渋い顔をするクリスティーノ。
「ま。そういうもんだろ。だが今日中に何とかしたいぞ。とりあえず数が少ない種類のものを選ぶか」
「そうだね。おーい、君たち。話し合いは後にして。石を並べるから手伝って」
「ミルマノ、ラケルタ。選別するぞ」
人間5名と魔動物2体で魔独楽石の選別作業をする。これだけの大勢だ。多量にあった魔独楽石でも、流石にすんなりと選別が速く終了した。
その多くは、ごく普通の魔独楽石だった。透明な黄色をしていて僅かに白く濁る平べったい光を放つ正8面体の石。これが基本形のようだ。
基調の色で多い順でいうと、黄、赤、青、緑、茶、白、透明だった。残念ながら、今回採取した中には、黒を含む紫系は見当たらなかった。
その代わりといってはなんだけど、変わり種系がそれなりに多い。最初に見た、針入りが一番多く、他に斑入りとか泡入りとかがある。縞入りの系譜で、糸縞、波縞、網目というようなものまであった。
魔独楽石は、正8面体が基本なのだけど、それが結合して棘のようになっているものもある。この棘付き石を勝負に使用しない変則ルールもあるとのこと。
「うむ。本格的な標本には物足りんが、変わり種の種類が豊富にあるな」
「カーク。いっそのこと、その石をまとめて渡したらどう?」
「む。複数渡すとしても、何らかの根拠が欲しい。たとえそれが、知らんガキの誕生日プレゼントだとしてもだ」
「君はいつもそうやって、理由付けに拘るね」
「まあな」
「何か考えがついているの?」
「何。単純なことだ。魔独楽石投げ用の石として、珍しくて勝負に強ければ良い。だが、どれがそれに該当する石なのかが判らん」
「あの。それでしたら、勝負で勝った石をお渡しするのはいかがでしょうか」
「む」
「いや、その。この3人で話していましたところ、帰りの馬車待ちの時間で、持ち寄りの魔独楽石で勝負をしようということになりまして。よろしければ、それで勝ち残った魔独楽石を差し上げますよ」
「でかい魔術師さんよ。何しか坊主の誕生日プレゼントなんだろ? だったら、強いのが一番だっていうことよ」
「そうそう。目の前で魔独楽石投げの勝負を見れば話題にもなるさね」
「ふむ。それは良いな。で。その見返りに何を欲する?」
「え。ここで採取している、ただ同然の魔独楽石なので。何も」
「そうはいかんだろ」
「そうですか。それでは、余りの普通の魔独楽石を下さい。魔独楽石投げの石は消耗品ですので、いくらでも欲しいものです。普通の魔独楽石も投げ方の練習用に使用できます」
「おう。そうか。それなら良いな。では、お前たちの勝負で、勝った魔独楽石をもらうぞ。その見返りとして、余った魔独楽石をやろう」
あ。物々交換だ。うん。南サガラの相手さんの話を思い出すね。
そんなこんなで少しだけ追加採取をしたよ。だけど、残念ながら黒い魔独楽石を見つけることができなかったんだ。黒色は相当レアのようだよね。
そのあとクリスティーノの執務室に戻る。
カークは、もう魔独楽石のことを気にしていないようで、クリスティーノと昔話に花を咲かせていた。
そしてゆっくりとお茶を飲みながら、夕方近くまでの時間を過ごした。
このお茶を淹れたのは、ここの従魔ではなく、何故かミルマノだった。
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同じ日に童話の短編を投稿しました。これも読んでいただけると嬉しいです。




