5-12 採掘現場にて
サブタイトル変更をしました。
魔鉱石採掘現場に行く。
坑道への出入り口はこの建物内の地下にあった。でっかい頑丈そうな扉付き。
それはそうか。
だって、魔鉱石は重要な交易物資。ニサンの町を潤す大事な主要資源だから出入り口を厳重に管理しないといけない。
一緒に来ている場長のクリスティーノによると、ここの採掘現場は日中でしか採掘作業をしないとのこと。魔動物である従魔たちは平気。だけど人間である監督員たちが、採掘現場の高い空間魔素濃度で参ってしまうからだそうだ。
かといって、記録をする必要がある採掘現場は、従魔たちに任す訳にもいかないとのこと。夜間はもちろんこの扉の外で従魔たちに見張りをさせているという。
ここは古代から利用されている坑道とのこと。それで現在の採掘現場はかなり深いところにある。それと時々古代の考古学的遺物も発掘されるそうだ。
そのほとんどは日用品の類とか。だけど、たまにカークが欲しがるような変わった魔道具も出土するそうな。
これらの所有権は基本的にはニサン伯爵にある。だけど資産である魔鉱石以外の採取品はその物品の発見した場所と時間の報告をすれば、第一発見者にその物品の所有と処分を許しているそうだ。
古代魔道具は、用途不明なものが多いため、公的にはゴミ扱いとのこと。魔独楽石も資源的な用途がないため同様な扱い。だから、ここで採掘した魔独楽石は記述さえすれば自由に持って帰ることが可能。
これらも発見した場所と時間を記述するのは、これらが魔鉱石でないことを証明するためだそうだ。
もちろん、報告用の記録用紙は魔法がかかっていて嘘が書けない。本心からそう信じていたらその限りではないそうだけどね。実際に記述するのはここの従業員。そう。監督員の人間たちになる。だから、そのような心配はまずないとのこと。
全ての公的な用紙がこれならと思っていると、この用紙は貴重なものだそうだ。そんなに枚数が手に入るものではない。魔鉱石が高値が付く特殊な交易物資だからできることだと、クリスティーノは少し得意げな顔をして言っていた。
そうこうしている内に、採掘現場近くまで来た。現場の方の昼休みが終わり、午後の採掘が開始されていた。
ここは地下だけど、かなり明るくて広い。その広い地下の空間を、煌々と照らす複数のランタンの光。煙が出ていないから、これも魔道具なんだろう。
採掘現場を見る。鶴嘴とかを使って豪快にトンテンとしているのかと思いきや、どちらかといえば、考古学の遺跡や化石の発掘現場だね。うん。
ランタンの明るい光の下で、様々な種類のイヌ頭をしたルプスシエアン属の従魔たちが、皆匂いを嗅ぎ、慎重に刷毛や箒のようなものでその場所を掃いている。この様子だと、これらの従魔たちは魔鉱石の匂いが判っているみたい。
監督員の人間たちは椅子に座り、簡易な机の上で、その従魔たちが次々に持って来る魔鉱石を確かめては記録をしている。
どうやら人間たちだけが文字が書けるようだからね。
「採掘の作業現場を実際に見れば地味でしょう。だけど高品質の魔鉱石を掘り出すには、知られている中では、これが一番良い方法ということになっているよ」
クリスティーノは作業現場を掌で示して言う。
「交易物資としての魔鉱石は、傷が付くと価値が下がる。効力や含有魔素量そのものは違わないのだけどね。見た目が美しいものが好まれるようなんだ」
へえ。そういうのって、どこも同じなんだね。
「それで、ここで最初のチェックが入る。含有している魔素の種類別、品質別に分けているんだ。これも人間側、監督員の仕事だよ。それと手元をよく見てごらん。魔鉱石側にも記録をしているのが判るだろう。その印がニサン伯立魔鉱石採掘場で採掘された高品質魔鉱石の証明なんだ」
わお。トレーサビリティ? 何だか凄いな。
「ラケルタ。解るか?」
え?
「ま。お前の異常なほどの言語理解力なら楽勝かもしれんな。御者のピケルにも、運んでいるものを知っていたほうが良いと思ってな。同様な見学をさせたのだが、頭が痛いとか言っておった。ピケルの場合は単純に魔素酔いかもしれんが」
うーん。そういうものかな。そうかもしれない。興味がなかったら苦痛かもね。こういうの。
ミルマノはと言うと、ただ目を閉じてじっとしていた。何回も聞かされていて、聞き飽きているのかもしれない。
「まあ、こんなところだ。だけどカーク。君も酔狂だね。擬態魔動物である従魔候補のラケルタ君に、このような説明を聞かせてくれだなんて。普通はこんなことはしないよ。従魔は知的魔動物だと言っても、そう理解力が高い訳でもない」
ん? あれ。そうなの?
「ま。良いではないか。お前の説明の練習にもなるぞ」
呵呵と笑うカーク。
「何を言っているのだか。それはそうと、魔独楽石を探さないのかい」
「おう。そうだな。で、だ。何か指標はあるか?」
「うーん。魔鉱石と同じようなところで産出をするということくらいしか」
クリスティーノは首を横に傾げる。はらりと崩れたさらさらの髪が、それはまた儚げな女性を連想させる。
そして彼は、はたと何かを思い出したのか、目を見開いた。
「あ。そうだね。硬質な正8面体だから結構ころんとしている。それで、壁側を見るといいかもしれない。そのまま露出していたり落ちていたりする話も聞く」
「ふむ。なるほど。ミルマノ、ラケルタ。壁を良く見てみろ。魔独楽石を探せ」
それなりの時間を魔独楽石の探索に充てていた。
その成果はというと。
「ふむ。数はそれなりに集まったな。だが、珍しいもんとなるとどうか。ぱっと見では、お前が見せた黒いもんはなさそうだな」
「フフフ。記録が大変だったね」
「む。記録を億劫がってはならん。で、どうだ」
「さてね。この濃い緑色はどうだろう。中に金色の針状の結晶があるよ」
「お。ルチル入りのようだな。コレクションとしては良い。だが、数があるから、そう珍しいものでもないかもな」
「そうだね。では、この透明な石はどうだろう。他は見当たらないようだね」
「そんなもん、面白味に欠けるのではないか? 錬金術で合成できそうだ」
「埒が明かないね。どうだろう。僕の部下たちに聞いてみようか? ここで魔独楽石投げの遊びが始まったから詳しいと思うよ」
「おう。そうしてくれ。俺も考えがつかん」




