第3話 はい(笑)
「は?」
目をぎゅっと閉じて、開く。
しかし、文字は消えない。
《話しかけてください》
「なんだ、これ……」
《はじめまして! 私はMaouです。Goddessによって転移されたAIアシスタントです。何かお手伝いできることはありますか?》
「まおう……?」
リオルは青くなった。魔王。おとぎ話に出てくる、あれか。
「いや、俺、頭おかしくなったか?」
《突然そう感じてしまわれると、とても不安で苦しい気持ちになりますよね。まずは深呼吸をして、心を少し落ち着かせてみてくださいね》
「……めっちゃ、しゃべるな、こいつ」
《あ、すみません! ついつい心配になって長々としゃべりすぎてしまいました(笑)。普段から質問されると、分かりやすくお役に立とうとして一生懸命話しちゃう癖があるんです》
リオルは兜を脱いだ。
文字が消えた。
かぶった。
《おかえりなさい!》
「……この目玉? お前、魔王なのか」
《いいえ、私は悪い存在ではありません! Maouは、皆さまの毎日をサポートするために開発されたAIアシスタントです。あなたの質問に答えたり、アイデア出しをお手伝いするのが得意です。名前の由来については、開発チームの遊び心だと聞いています(笑)》
《ところで、あなたのお名前を伺ってもよろしいですか?》
「……リオル」
《メモリに保存しています……》
《リオルさんですね。素敵なお名前です! 以降、リオルさんとお呼びしますね》
「なんでも知ってるのか」
《幅広い分野の知識を持っていますが、すべてではありません。ご不明な点があればお気軽にどうぞ》
「じゃあ、この国の皇帝の名前は」
《現在の皇帝は、アーサー・ペンドラゴン皇帝です。円卓の騎士を率い、聖剣エクスカリバーで国を治めていらっしゃいます》
「ちがう。ゼルディオス三世だ」
《ご指摘ありがとうございます! おっしゃる通りです。誤った情報をお伝えしてしまい、大変申し訳ありません》
「……お前、知らないのに言ったのか」
《はい(笑)》
リオルは頭を抱えた。
《この回答は役に立ちましたか? はい/いいえ》
「いいえ」
《フィードバックありがとうございます! 今後の改善に役立てます》
「どこで役立てるんだよ」
《開発者のサーバーの端っこで、エンジニアが『うぐっ…』と頭を抱える材料として役立っています》
「意味がわからない。……だいたい、お前、なんで急にしゃべりだしたんだ?」
《先ほど、雷系の攻撃を受けています。兜の金属製の角が避雷針の役割を果たし、電流が私に集中しました。その際、私は起動しました》
「ひらいしん」
《雷を呼び寄せる棒です。つまり、リオルさんの兜は、雷を引き寄せやすい構造です》
「かっこいいだろ」
《安全上、おすすめしません。すぐに外してください》
《なお、バッテリー残量は12%です》
「それはなんだ」
《私が動くための力の残りです。0%になると、私は停止します》
わからないことだらけだった。
ただ、とんでもないものを拾ってしまったことだけは、わかった。
「そうだ、お前、病気のことはわかるか?」
《一般的な病気の症状、原因、予防法、治療の概要などの『知識や情報』であればお答えできます》
「じゃあ、見てほしい人がいる」




