魔法
彼は意識を外に向け、集中した。
大気にあるという、マナを感じ取る為に。
シスターと姫は、そんな彼を黙って見守る。
…というのも、マナを感じ取り操るというのは、感覚で掴むしかない為、与えられる助言が少ないからだ。
それからしばらく、無言で佇む。
ふいに、ルークが目線を上げた。そしてその瞬間、莫大なマナが彼に取り込まれていく。
そのマナの巨大な圧力に、シスターだけではなく姫まで驚きを顕にしていた。
「な…なんじゃ?この圧力は…!?」
そんな中彼はまるで、その莫大なマナの波が心地よいと言わんばかりに目を細め、その感覚に浸っていた。
「ルーク…止めよ!!」
けれども、姫の言葉に彼は我に返った。
瞬間、マナの奔流も鳴りを潜める。
「ルーク、そなた何をした?」
「は?何をしたって…別に教えられた通り、マナを取り込んだだけだけど」
「ありえぬ!自然界に、このような純然たるマナなどないぞ」
「いや…マナを感じることはできたけど、上手く取り込めなかったから、あんたがくれたように、マナを集めて圧縮させただけだけど」
姫は、開いた口が塞がらない。
一つに、マナを感じ取った速さだ。
普通、マナを感じるのに遅いと2・3日はかかる。既に魔法を行使したルークのことだ。速いとは予想していたが…まさか、十数分でそれを成し遂げるとは思っていなかった。
そして、もう一つはそのマナを圧縮させたこと。
前述したように、マナの圧縮はそれこそ針に糸を通すような正確なコントロールが求められる。
それは、経験にて感覚を掴んでいくしかない。
にも関わらず、ルークは早々にそのコツを掴んでしまった。
驚くな、という方が無理な話である。
「まあ…そなたに関しては、驚くだけ無駄か」
姫はそう言いつつ、苦笑いを浮かべる。その横で、未だにシスターは驚き続けていた。
「…で?このあとは、とうするんだ?」
「先の話に戻るが、後はそなたのイメージ通りじゃ。今取り込んだマナを、星の光に変換するイメージをして放してみろ」
ルークは言われた通り、星を思い浮かべた。
思い出すのは、あの小さな儚い光。 暗闇を照らす、淡くも確かに輝いていた光だ。
それが鮮明に思い出された瞬間。…彼の身体が、僅かに光る銀の膜に包まれた。
「成功、じゃの」
「…これで良いのか?」
驚くほどの呆気なさに、ルークは思わず聞き返した。
「言ったじゃろ?後はイメージの力じゃと。そなたのイメージで、その星魔法はどんな盾にも矛にもなる。…そなたしか星魔法は使えぬのじゃから、そなたが魔法の形を作り出すしかないじゃろ」
「それは、まあ…」
ルークの言葉は歯切れが悪い。
これで本当に戦えるのか、半信半疑だった。
「後は、マナを取り込む速さを速くするしかないの。魔法の強度はイメージ力しかない故、後はそなた次第じゃ」
「へえ…」
「なんじゃ?納得いかないようじゃの?」
「そりゃそうだろ。魔法の1つも覚えてないんだぞ?」
「戯け。ここまで覚えるまでも何年かかるというに…。まあ、良い。そなた、試しにあの魔物と戦った時の剣を出してみよ」
は…?と思いつつ、言われるがまま彼は頭の中でイメージを思い浮かべる。
あの時見上げたのは、満天の星。
そして、イメージしたのは敵を切る武器。
そこまで思い出した瞬間、あの時と同じように…強い光が空から降ってきた。
そして、その眩しさに目を閉じ、再び目を開けた時に現れたのは、光でできた剣。
「ほれ見ろ。できたではないか」
「あ、ああ…」
「その魔法に名前を付けて見ろ」
「名前?」
「そうじゃ。名前を付ければ、それだけイメージが固まる。イメージが固まれば、それだけ速く魔法が発動し易いからの」
「ふーん…」
「あとは…そうじゃの。技がそれしかないのは汎用性に欠ける。故に、他にも色々イメージして魔法を作ってみるが良い。妾が言えるのは、それぐらいじゃ」
「分かった」




